10話
試験sideカイルです*\(^o^)/*
暫く待っているとらシャルルさんが呼びに来た。
「お待たせ致しました。試験官の準備が整いましたので、訓練場にお越し下さい」
そう言って僕達を先導する。
「シャルル、試験官はどっちだ?」
「そんなのターニャに決まってるじゃない。
バルトは粋がってる子達用よ、手加減もあんまり出来ないし、この子達は大丈夫そうだから」
「ふん、別にどっちでも良かったんだがな」
ジンさん達は話しながら歩いている。
ジンさんの話しを聞きながら(へぇ〜バルトさんか、ちょっと興味あるなぁ)なんて思っていた。
「それに、この前来た三人組の子達を手加減を『失敗した』とか言って治癒院送りにしてたの、だから今、彼は謹慎中なのよ」
それを聞いて僕はターニャさんで良かった、と思うのだった。
…っていうかそんな人が試験官で良いのかなぁ?
何とも言えない思いを抱えながら黙ってシャルルさんについて行った。
「やぁやって来たね?初めましてわたしはターニャ、今日は2人の試験官をやる事になったんだ」
ターニャさんは、よろしくねと言いながら僕らを見ていた。
「初めまして、僕はアランと言います」
「カイルです!」
僕らは頭を下げながら自己紹介をする。
「うん、アランにカイルだね、アランはあのローランさんの息子らしいね?て事はやっぱり双剣かな?…うんうんやっぱり子は父親に憧れるもんだね、私も4歳になる男の子が居るんだけど、私より父親に憧れてるんだ。
夫は治癒師なんだけどいつも一緒にいるからなのかな…?少しは冒険者とかに」
「ターニャ、それ位にして試験を始めてくれないかしら?」
捲したてる様に長話をしそうになるターニャさんに、シャルルさんが待ったを掛けた。
「おっとごめん、ごめん、じゃあどっちからする?」
「はい‼︎俺からやります‼︎」
順番を問うターニャさんにやる気に満ちた顔で答えるカイル。
(ターニャさんの戦い方も見ておきたいし僕は後が良いかな?)
そう考えて僕は異論を上げず見守っていた。
「じゃあ、カイルからだね…武器を取りに行こうか、ついて来て、こっちだよ」
ターニャさんがそう言って向かった先は数多くの刃引きされた武器が並べられている場所だった。
「此処がギルドの訓練用武器庫だ、多くの種類を取り揃えているからどれか普段使っている物に近いのがある筈だよ?」
圧倒されてる僕らに説明して、探しておいでとターニャさんは言った。
「すげぇ!…大剣はあっちだな」
そう言って大剣の場所に向かったカイルを横目に見ながら、僕は片手剣が置いてある場所に向かった。
「よし、これとこれが一番近いな」
素振りをして一番感覚に合うものを選び終えると、カイルは選び終えていたみたいで僕を待っていた。
「よし、2人共武器を選んだね?じゃあ戻って軽く慣らしたら試験を始めるよ」
ターニャさんについて訓練場に戻ると、僕とカイルは型をなぞり剣を手に馴染ませた。
暫くして型を終えるとカイルが前に出て言った。
「よろしくお願いします‼︎」
そう言って構えたカイルを見届けて僕はジンさん達がいる場所まで下がって行った。
sideカイル
「よろしくお願いします‼︎」
型を終わらせて剣のバランスをもう一度確かめた俺は、試験官に向き直った。
憧れてた冒険者に確実な一歩を踏み出せた事に頬が緩みそうになる。
俺が6歳の頃、宿の手伝いを失敗ばかりしていて、その時4歳の妹が簡単な手伝いをしていた。
妹は褒められて、俺は叱られる、それに嫌気が差した俺は、家出のつもりで外に飛び出した。
行く宛も無くぶらぶらしているとアランの家の近くに着いた。
どうせならアランの所に泊めてもらおうと考えてアランの家に向かうとキン、キンと金属を打ち合う様な音が聞こえて来た。
家の裏庭から聞こえて来たから恐る恐る向かって覗き込むとその光景に息を飲んだ。
大人の背丈程ある剣を振り上げ打ち込む男の人とそれを容易く受け流しながら攻め込むアランの親父さん。
その迫力は凄くて、そんな光景に憧れた。
良く見ると庭の隅で座りながらも真剣な表情をしているアランがいた。
こそこそとアランに近づいて声を掛ける。
「よぉ、アラン何してるんだ?」
アランは気付いてなかったみたいで体をビクっと揺らして、チラッとだけこっちを見た。
「カイルか…、今父さんが冒険者の人に協力して貰って大剣の対処方法を見せてくれてるんだ。」
そう言いながらも目を離さず見逃すまいとするアランに感心しつつ気になってる事を聞いた。
「…冒険者か、アランも剣の稽古してるのか?」
「うん、でも型の稽古だけだけどね」
「俺もさせて貰えないかなあ?」
いつの間にかそう口にしていた。
驚いたのかこちらを見たアランを見つつ俺は親父さん達を見ていた。
「…とまぁこんな感じだ。アランと…カイルだったか?中々カッコ良いだろ?」
そう言う親父さんに首を振り俺はお願いしてみる。
「…あの、俺もやらせてもらえませんか?」
「何だ?お前も冒険者になりたいのか?宿はどうするんだ?」
「宿は妹が居るから大丈夫です。だからお願いします‼︎」
俺がそう言うと親父さんは「分かった」と言いながら許可をくれた。
その時に双剣をやってみたけど両方の手を別々にタイミング良く振る事が難しくて、それにさっきの大剣の迫力を思い出して大剣を使わせてもらう事にした。
大剣を持った男の人に型を教わりながら振り回す。
剣に振り回されていたけど、風を切る音が聞こえて体が震えた、教わってるうちにだんだん冒険者の魅力に惹かれていった。
その日は少しして終わったけど翌日もその翌日も、男の人がアルカの街に滞在している間懸命に教わり続けた。
その間は両親に何をしてるのか聞かれたけど剣を習ってる事はなんとなく秘密にした。
そうして今まで剣を振り続けジンさんに身体強化を教えてもらい、冒険者見習いとして試験官に挑んでいる。
剣を構え試験官の様子を伺う。
「それでは、試験内容を説明する
試験内容は私との模擬戦、と言っても私から攻撃する事は殆ど無い。
と言ってもカイルの攻撃の最中に隙が出来たりすると攻撃していくから気を緩めないように、後は体力がどれくらいあるかも見たいから出来るだけ長く続けるように。」
試験官の言葉に俺は気持ちを昂らせていく、それを見た試験官が1つ頷くと「始め‼︎」と言った。
合図と同時に俺は地を蹴った。
大剣は重さの為に初手が突きか下からの切り上げになる事が多くタイミングを読まれやすい、だから俺は今回はタイミングを計られないようにあえて開始と同時に突きを放った。
「うん、なかなか良い突きだね」
しかし相手は余裕を持って突きを逸らして来た。
放った突きの勢いのまま相手と距離を置き、向き直る勢いで相こちらに詰め寄って来た相手に剣を切り上げる。
軽く躱されてしまうけど返す刃で振り下ろした。
ギンっ!受け流すこと無く剣を止められて硬直してしまう。
「ほらっ、止められた位で動きを止めるな‼︎隙だらけだぞ!」
試験官に蹴り飛ばされそうになるのをなんとか転がって避けた。
このままじゃマズイと思い身体強化をして、空いた距離を埋めて切り掛かった。
「なっ、身体強化⁉︎」
予想してなかったのか驚いていたがこれも危なげなく受け流された。
「まさかその歳で身体強化できるとは思わなかった、ジンはこの歳の子に何を教えてるんだ?」
…どうやら俺位の歳では身体強化を教え無いらしい、だけどこれはアドバンテージだこのまま一気に攻める‼︎
「オリャっ‼︎ハァァ‼︎」
「確かに驚いたけど、自分が出来ることは相手も出来る可能性を考え無いと駄目だよ」
打ち込んでいるとそう言って試験官は剣を思いきり振り上げた。
ガンッ‼︎大剣を弾かれて体勢が崩れる。
弾かれた事に驚いていると試験官に蹴り飛ばされた。
「リカバリーが遅い!不足の事態なんて冒険者では日常茶飯事だ、そんなんじゃすぐに死んでしまうよ?」
なんとか剣を手放さないで起き上がる。
「こなクソ‼︎」
試験官の余裕を崩してやりたくて思いきり向かって行く。
暫く剣戟が続き30分位たった頃試験官に剣を弾き飛ばされて模擬戦は終わった。
「うん、なかなか良いね。
思い切りの良さもあるし、諦めない根性もある。この歳でここまで出来るって事は相当努力したんだろうね。
このまま慢心せず努力を続ければ良い冒険者に成るよ。
ただ挑発に熱くなり過ぎるのは良くない頭は常に冷静にして無いと駄目だよ?
攻撃が単調になって読みやすくなるからね。
試験は合格だ、今からカイルは見習い冒険者に成ったんだ。
見習いとは言え冒険者ギルドの一員だ決して無理をせず犯罪なんかに手を染めないようにね?」
…ん?今のって、見習いになる為の試験なのか?見習いの実力を見る為じゃ無い?
いや、でも合格したんだ!俺は見習い冒険者に成った‼︎
「よっしゃぁぁー‼︎」
試験の目的を勘違いしてたけど結果的に良かった。
後でアランに聞こうと頭の片隅で考えながらも俺は雄叫びを上げた。