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いつか君へ…  作者: 半纏少尉
決意の刻 2章決意と見習い冒険者
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9話

武闘会から今日でちょうど1週間、僕とカイルは今か今かとこの日を心待ちにしていた。


ジンさんの教えを受けてから半年、今までは基礎鍛錬として体力トレーニングと剣の扱い、そして身体強化について教わって来た。


身体強化を覚えるのが大変で魔力を感じる事から始まり(この時は本当に死ぬかと思った)魔力操作の習熟、そしてやっと身体強化を覚える事が出来たんだ。


ジンさんが言うにはまだまだらしいけど、それでも普段の2倍くらいの速度で動けるし、五感も鋭くなっている。


ここから先は自分で自分を鍛えるしかないから、ただひたすら鍛錬の日々だ。


自基礎能力の向上に、より精密な魔力操作、身体強化も均一にしたり、一点集中したり、魔力密度をより綿密にしたり。


どれか1つ欠けるだけで意味が無くなるから全部均等にやっていかなきゃいけない。


全てを一流にしても、公爵令嬢である彼女を助け、守る事が出来るか分からない…けど出来る限りの事をしないとね。


こんな事を思い返すのは、遂に、待ちに待った冒険者見習いとして僕とカイルは依頼を開始するからだ。


武力だけでなく、頭も鍛える為に王都にある学園に行きたい、その為に冒険者として過ごし学園に通う為のお金をまず貯めないと学園に行けない。


宿での手伝いは生活する分には問題無い、でもそれでは学費には到底足りないだろう。


だから僕は、危険だけどその分見返りがある冒険者の仕事をする事にしたのだ。


それでもよほど上手く行かないと学費を稼ぐ事は無理だと思う。


よしんば冒険者として上手くいき、お金を貯めれたとしても、学園の試験があり平民の僕らが入れる可能性が低いそうだ。


それでも、僕が彼女を守る為には進むしかない。


僕が守るなんて烏滸がましいかもしれないし、彼女は守られる事を望んでいないだろうけど、僕がそう決めたんだ。


そんな事を考えながら僕は、ジンさんとカイルと一緒に冒険者ギルドへ向かっていると、ギルドの前に着いた。


「いよいよだな‼︎」


興奮気味に話すカイルを見ながら僕も興奮して来る。


「今日から依頼を受けて行くがこれは、お前らが将来冒険者として活躍して行く為に必要な事だ。

薬草の種類や採取の方法、どんな魔物が居て、どんな生態をしているのか?

魔物を相手にするからには、相手を知り常に考えて行かなきゃならねえ。

だからこそ先達である俺から学べることを学び尽くせよ」


そんなジンさんのそんな訓示を聞き、ギルドの中に一歩踏み出した。


一言で言ってギルドは騒然としていた…。


受付をするカウンターには数名の受付嬢が並んでいて、カウンターの横にはデカデカと依頼票が貼った掲示板が置いてある。


更に奥には酒場があり、そこで臨時パーティーの募集や情報交換、依頼達成の打ち上げをするんだろう。


多分朝のピークが過ぎたからだろうけど人が少ない、それでも何組かの冒険者が居て、そこで話し込んだり、酒を飲んだりしていた。


酒場と掲示板の間には二階に続く階段がありあそこより上はCランク以上の人しか入れないとジンさんは言っていた。


暫く呆然としていると、父さんと宴会をしていた数名の冒険者が僕を見つけて少し騒がしくなった。


「ん?アランじゃねえか?」

「何⁉︎」「…本当だアランだ‼︎」

「ローランさんの…?」


そんな会話が聞こえてくる。


何人かが、こっちに来て僕達を囲みながら話し始めた。


「まさか、あのローランさんが亡くなるなんて思ってもみなかった。

俺は、別の場所にいたから後から聞いたんだ…」

「ああ、俺もだ」


父さんの事を話しながら、父さんの死を悼んでくれる。


「…君がローランさんの子供?」


そう言って若い男の人が、僕に声を掛けて来た。


「…はい、そうですけど…」


誰か分からないから顔を良く見ながら言う。


「アラン君って言うんだね…僕はユーリっていうんだ、その、なんて言うか…」


歯切れが悪そうに彼は話し始めた。


「…えーと、この前の戦争でね、僕はローランさんと一緒の場所で戦ったんだ。

…僕を含めて一緒にローランさんと戦った多くの冒険者や傭兵が居たんだ。

途中までドンドン敵陣に食い込んで行けたんだけど、敵の罠に掛かってね…敵に囲まれてしまったんだ。

その時だ、ローランさんが僕らに声を掛けて敵陣の囲みを突破しようとしたんだ。

ローランさんのお陰で僕らは殆ど数を減らす事無く突破出来たんだけど、ローランさんは先頭を走っていたから受けた傷が酷くて…

後ろから敵は追って来るし多分助からない事が分かってたんだと思う、僕に双剣の片方を渡して『俺のローランの息子に渡してくれ』って言ったんだ。

その後に1人敵を迎え撃って亡くなったんだよ。」


その話をしてる時、彼は思い出しながら、涙を堪える様に話していた。


「…そう…ですか…」


僕は父さんの壮絶な最後を聞き、目から涙が零れるのを必死で堪える。


「…父さんは、カッコよかったですか…?」


「…あぁ、ローランさんは僕の、僕達にとっての英雄だったよ」


僕の問いに答えたユーリさんの言葉に一筋、涙が頬を伝った。


(父さんはやっぱり僕のヒーローだよ…)


「ありがとうございます。父さんの剣を…父さんの最後を僕に届けてくれて。」


精一杯の感謝の気持ちを込めて、泣き笑いながらユーリさんにお礼を言った。


二階から誰かが駆け足で降りてくる。


「…アラン‼︎ローランさんが亡くなったみたいだな…、俺も心配してたんだ。

今まで長期の依頼に行っていてな、さっき知った所だったんだ。」


そんな風に言いながら、大丈夫か?と心配しながら僕に近寄って来たのはダウンさんだ。


この人は確かBランクで父さんの宴会の時は必ずと言って良いくらい参加していた。


僕も可愛がってもらっていたし戦争の後に会ってないから僕は忘れていた。


「ダウンさん、大丈夫ですよ‼︎」


そう言って笑う僕を見てダウンさんは少し安堵しながら微笑んだ。


「ローランさんには本当にお世話になったからな…出来る事なら助けてやりたいと思ってたんだ。」


「ありがとうございます。」


ダウンさんの言葉に頭をさげる。


「…そう言えば、アランその格好って…」


「はい、今日から冒険者見習いとしてジンさんに教えて貰うんです」


「そっか、じゃあ10歳で冒険者になるんだね…ローランさんもきっと喜んでるよ」


そうかな、父さんも喜んでくれるかな?

そんな風に考えながらダウンさん達と別れて受付に向かった。


「おはよう、ジンその子達が言ってた見習いの子達ね。」


受付嬢のお姉さんは、ジンさんに確認を取るとこちらに向き直り喋り出した。


「ようこそ冒険者ギルドへ、初めまして私は受付嬢のシャルルです。

今回は冒険者見習いの登録ですね?

まず最初に、冒険者見習いの為には軽く実技試験が有ります。

これは見習いと言えども冒険者として働くからには常に危険が有り、死ぬ可能性が高い為、それを出来る限り減らす為ある程度実技が出来る人のみに見習いとしての許可を出しています。

これに合格しない場合は依頼は受けられませんので御了承下さい。

そして見習いとして合格だった場合、後見人となる冒険者の方…つまりジンの事ね。

その人と一緒で無いと依頼には出られませんのでご理解お願いします。

ただ、ギルドの施設、書庫や訓練場は後見人が居なくとも利用頂けますのでお好きにご利用下さい。」


へぇ〜書庫があるのか…ここで少しは勉強出来るかな?


「ギルドの規則や冒険者のランクなどの説明は見習いに合格してから説明する決まりになってますので後ほど説明します。

…それでは試験官を訓練場に呼びますので準備の間暫くお待ち下さい。」


シャルルさんは1つ1つ丁寧に僕とカイルに説明してくれて、試験官を呼びに行った。


結構な美人だからカイルは顔を赤くしながら首を縦に振り続けている…多分話し聞けてないよね、後でしっかり説明しなきゃ…そう思いながら試験について思いを馳せた。

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