間章:紹介
頭を強く打たれなんだか昔の記憶を見ていた気がする。
イアは倒れ目を閉じたまま〔私は私を憎んだ全てに制裁を与えるために魔王になったのにたった数百年でこんな本気を出すとか言いながらやる気のほとんどないふざけた奴に撲殺されるなんて死んでも死にきれない幕引きだった〕と内心で呟いているつもりだった。
?「おいふざけんなよ」と聞き覚えのある声が聞こえた。
目を開けると魔王城の地下の天井が見えるはずなのに狂月 龍のイライラして眉毛をぴくぴく動かしている顔がそれを遮っている。
龍「もう一度聞くおいふざけんなよ。だれがやる気のないふざけた奴だって」ともう一度問いただしてきた。
イア「あなたですよ。聞こえてたんですか?」
龍「ああ、だだ漏れてた。」と言うと同時に、ああそうですか、と言いながらイライラした顔をやめていつもの冷静な顔に戻った。
イア「なんで 私を生かしているんですか?」
龍「俺がそうしたかったから」と龍が言うとイアは起き上がった。
周りを見るといつもの見慣れた地下の教会と目の前には龍がその後ろにはDはあぐらをかきながら、優火は三角座りで寝ていた。
そして龍は寝ている二人を軽く叩いて起こした。
D「・・・ん?」
優火「にゃんですか?」完璧に寝ぼけている。
龍「魔王様が起きたぞ」
それを聞きDはいつも通りめんどくさそうに姿勢を正し優火はびっくりして目が見開き正座に直した。
それからイアはもう一度龍に聞いた。
龍「せっかちだな。これからいろいろ説明するよ」
イアは一応納得し龍は唐突に大きな声で言った。
龍「これから俺らギルド アウトサイダー の自己紹介をします」
龍はいままでの人生で大声を出すことがなかったためとてもぎこちなかった。
優火「わーい」と盛り上げる。
Dは笑っている顔を見られないように顔をそらした。
イア「は?」
イアは全くもって意味がわからずふざけているのかと思い、殺してやろうかとも思った。しかし他二人は殺せても龍は殺せないと思い殺意を抑えた。
そんなことは知らず龍はぎこちないながらも続ける。
龍「俺から、名前は狂月 龍、男、能力は影、ギルド アウトサイダー のギルドマスターです」
龍は恥ずかしさのあまり死にそうになりながら自己紹介をした。
イア「うん、知ってるわ」だからっという顔をしている。
優火「次は僕、名前は猛鬼 優火、男、能力は鬼火です」
イア「あっそ」
D「俺の名前はD・エスト、男、能力は病気だ」
イア「どうでもいい」
龍「さて本題に入ろう。なぜ俺がおまえを生かしているかだってそれはな・・・」
というかなぜこのタイミングで自己紹介なのかというとギルドメンバー全員まともな自己紹介をせずにここまできていたから優火が魔王を倒したあとにしようと言ったから、そして・・・
龍「おまえを4人目のギルドメンバーにするためだからだ。なんか文句ある?」
イアは予想外の言葉に驚きを隠せていない。
イア「は・・・えっ?意味がわかんないわ」
龍「そのまんまの意味だ」
イア「私は魔王だよ。あんた達の敵だよ」語調を強めて言った。
龍「んなこと知ってるわ。」
イア「そもそもあなた達は私を殺しに来たんじゃないの?」
D&優火「そのつもりだった」
イア「それにあなた言ったじゃん。全力で倒すって」
龍「確かに俺は全力で倒すとは言ったが殺すとは言ってない」
イア&D&優火「あ・・・」
龍「あれあれ~俺がこんな面白そうな子を殺すとでも」と全員を小バカにする。ちょっと笑ってから話し出す。
龍「魔王様、あなたが俺達の敵なのは俺も知ってる。だから何」
イア「何ってえっ?」
龍「だーかーらー、敵だからって仲間にしちゃいけねぇのか?」
イア「私は魔王だし」だんだん声が弱くなってくる。
龍「知るかぁ。誰がなんと言おうとおまえはこれから俺らのギルドのメンバーなんだよ。この際、一応言っておく。俺はな他の人がするようなことは極力しないようにしてる。なぜなら面白味がないから。俺自身のオリジナリティが出ないから。そして何より俺は面白いことをするようにしてる。面白ければ全ていいと思っているから。おまえが寝言か何かで言っていた。全てに対して制裁を与える。いいだろうよ俺も手伝ってやるよ」
優火「いくら何でもそれはさすがに・・・」と苦笑い。
D「めんど」
優火「まあでもそれが狂月さんの良いところなんですけどね」
龍「それとも何か軽蔑されるのが怖いのか?」
イアは頷いた。
龍「おまえを気味悪がったりする奴はこの中にはいねぇから。全員似たような境遇にあったことがあるから」
イア「えっ!」龍と他の二人を見た。
龍「これだけでもダメか?イア・グレイシス」
イアはしばらく俯き黙り込む。そして頭を上げた。目に涙を浮かべながら龍に聞く。
イア「本当にいいんだね?本当に信じていいんだよね?」
龍「それは知らん」
イア「え」涙が零れ落ちる。
龍「嘘だ。信じろよ。俺が言ったんだ。その代わり俺もおまえを信じるからな」
イア「なんだ。嘘なのか」と泣きながら笑った。
イア「ありがとう」