一話目.猫の眼
罪を犯した人間は、
必ず罰せられる。
黒猫の手によって。
←黒猫通り→
一話目.猫の眼
暗い夜道。
唯しんしんと、小雨が彼に、当たり砕ける。
(何人殺した・・・? 俺は誰の血を欲した?)
人通りのない、寂れた商店街。
細い路地の壁に身を預けるは、櫻華 命美。
ふと彼は、近くにあった電柱に目をやった。
◆凶悪殺人犯・櫻華命美!!
此の顔に ピン! ときたらすぐ通報
俣賀市警察署◆
「凶悪殺人犯・・・はっ! 笑えるな・・・」
鼻で一笑し、また壁にもたれる。
死人から奪い取ったセヴンスタアに、
死人から奪い取ったライタアで火を付ける。
(姉貴殺しから始まって、最後の最後は俺の前横切ったおっさんか・・・)
「何時から俺ぁ、変わったんだろうな・・・」
タバコの煙を一気に吐いて、そして。
煙の間から誰かが見えた。
遠い様で、また近い様で。
(察か・・・?)
キッと、眼を細ませた瞬間。
「ニャ〜」
黒い猫だ。
ギラギラと眼を光らせて、こっちを睨んでいる。
まるで命美を責め立てるかの様に。
「・・・猫か・・・おら、あっち行け」
たかが猫如きにビビてしまった自分が情けない。
苦し紛れの言い訳で、其の、黒い猫を追っ払おうとした。
だが。
「ニ〜」
付いて来いと、言ってるみたいで。
なんだか背筋に悪寒が走った。
でも何故か、そんな感覚に陥ってしまった彼は。
「・・・お前・・・俺の事助けようとしてんのか?」
まさか、幾らなんでも有りえない。
けれど追われる身の人間にとって、どんな事でも都合のいい様に捕らえてしまうのであるから、仕方がない。
そして其処で、黒い猫が後ろを向いて走り出したのだ。
「あっ、おい待て・・・!」
慌てて重い腰を上げ、命美は後を追いかけた。
救われる事など、有りえはしないのに。
続きます。