7話 初めてのLVアップ
神々の代理ゲーム 7話 初めてのLVアップ
初めての戦いを終えて その後について考える。
……ふむ 結構疲れたな
(そうね 何か精神的に疲れたわ)
……さて これから もう一回戦うか?
(ん~ 疲れたし休憩しない?)
……確かにな どうしようか?
(あっ マレルが様子見に来るわよ?)
……なに? 母さんが?
……不審に思われてもダメだしな 戻ろうか
(わかったわ)
……と その前に<自動人形>起動
……パターンB 対象は村で行動しろ
と命令して <接続>の魔法を切る
……ふぅ 戻ってきたか
そこには 当然 自分の部屋で寝ている俺がいた。
(…んん ああ 戻ってきたんだ)
チェコも目を覚ます。
そして
(じゃあ 隠れてるわね?)
と言って 本棚にある神器の中に消えていく
俺も魔力操作で 漏れ出る魔力が普通の赤ん坊より
少し多いくらいに調節して 怪しまれないようにすると
赤ん坊の演技を始めた。
30分ほどで母さんは世話をおえて 部屋から出ていった。
……ふぅ いったか
(御苦労さま~ なんか さっきとのギャップで笑えたわよ)
チェコが本から 笑いながら出てくる
……仕方ないだろう?
……代理ゲームに母さんは巻き込みたくないからな
(はいはい そうだったわね)
(そういえば 戻る前になんかやってなかった?)
……ん? 何のことだ?
(えっと 何か パターンBとかなんとか)
……ああ そのことか ふぁ~!
あくびを我慢しながら
……でも 今日は疲れたから…な
……明日…にしてくれ 赤ん坊は…寝る……時間だ
(えぇ~ そんな~)
……仕方…ないだろ…う 体力は…赤ん坊…なん……だ…………
(ああ 寝ちゃったし 明日 絶対教えてもらうからね!)
こうして俺の初戦闘の日は終わった。
次の日 とんでもないことになってるとは知らずに
朝 チェコに叩き起こされた。
……な! なんだ いきなり!
(なんだ! じゃないわよ!)
(自分の体を調べてみなさい!)
……は? なにいってんだ?
(はやく!)
チェコが何に怒っているのか 分からないが
とりあえず 自分の体に注意を向けると体に力があふれている
……なんだ これ 魔力が上がってる?
(魔力っていうより 魂のLVだけどね)
……魂のLV?
…………前に言ってた 成長システムのことか?
(そうよ 神代の戦争時に創られた)
(≪魂力殺奪成長評価制御術式≫ね)
……“LVアップシステム”とか言ってたな
(それは 俗称だけど もとの名称が言いにくいからね)
……なんでそんな名前にしたんだ?
(知らないわよ 神様の考えることなんて)
(たぶん 術式の効果をそのまま あらわしたんじゃない?)
……なるほどな まぁ 神様に名付けの才能が無いのはわかる
(って そんなことは 置いといて)
(なんで 急に魂のLVがあがってるの?)
……そんなこと 言われてもな
……確か 魂が成長するのは…
(肉体・精神的に成長にともなってか 魔物を倒すかね)
(でも 1日でここまで成長することはないから 何したの?)
……ん~ あっ! 思い当たることがあるかもしれない
(なになに!?)
……昨日 戻ってくる前にゴーレムに命令したろ?
(…そういえば言ってたわね)
(でも 説明しないで寝たし!)
……それは 悪かったが
……まぁいい 説明するぞ
(うん おねがい)
……あのゴーレムはな 元々守護者として作ったんだ
……俺の意識が無い時に襲われたら危ないからな
……それに今の状態じゃ 戦えないしな
(まぁ 赤ん坊だもんね)
……ああ だから 自動防衛システムを組み込んだんだ
(自動防衛システム?)
……そうだ パターンA 通常モードは
……俺とチェコ それに母さんを防衛対象にしている
……この3人に危険があったら守るようにな
(ふぅーん ……ねぇねぇ 優先順位は?)
……一応 戦闘力が無い順に俺・チェコ・母さんだが
……今はいいだろ
(ふーん 自分が優先なのね~)
……俺とチェコは いつも一緒だし 母さんだって身を守るくらいの魔法は使えるんだから
……別にいいだろ!
(まぁ いいけどね それで?)
……んで 次は昨日ゴーレムに命令した パターンBだな
(そうだったわね)
……これは防衛対象を決めて ひたすら それを守り続けるんだ
……昨日は村を対象にしたから村を守って戦ったんじゃないか?
(なるほどね~ でも ゴーレムが倒したのに)
(ミストに 経験値が入るの?)
…………俺も 入るとは思ってなかったが
……ゴーレムは俺の攻撃魔法として カウントされたのかもな
(でも ミストのLVって 今3だよ?)
(どんなけ 魔物を殺したのよ?)
…………確か 生まれた時は全ての生き物は LV1だったよな?
(ええ そうよ それで成長して大人になったら)
(人種は だいたいLV10位になるわ)
(村の魔物狩りをしてる男の人でも 20~30あたりよ)
人種の寿命は まちまちだが18歳位までの成長スピードはかわらない。
これは神々が 戦争するのに 兵士を補充しやすいようにしたからであるが
現在では知られてはいないことでもある。
……ふむ となると 今の俺は6歳児程度の魂というわけか?
18か20くらいで 成人と考えると2年に1つ位のスピードで成長するのだろう。
……俺ってまだ 生後3カ月だよな?
(そうよ LV3なんて ありえないわ)
(というか 低LVの時は上がりやすいと言っても)
(2つも上がるなんて 異常事態よ?)
…………ふむ 確かにな
……ゴーレムには村を守れと言ったが 狩りに行けとは言わなかったのに
……そうだ 昨日の夜に何があったか 調べてくれるか?
(そうね わかったわ)
チェコは 目をつぶって
あらゆる世界の出来事を記録している 知恵庫を調べる。
しかし 少ししたら顔を蒼白にして
(た たたいへんよ! 昨日 この村は!)
(中級の魔物が率いる 100匹ちかい群れに襲われているわ!)
……な …うそだろ?
(本当よ! それをゴーレムが半分くらい)
(負傷させたから 一度 体制を立て直しに退いたみたいね……)
背筋が凍る 冷や汗がとまらない のどが渇いて痛い
……コホッ コホッ
最弱の魔物でさえ 大の大人一人と互角以上なのだ。
しかも 中級の魔物が率いる群れは統率されていて
配下の下級魔物でも厄介さが何倍にもなる。
チェコがこの村には150人くらい住んでいると言っていたが
いくら 戦闘が得意なダークエルフでも
大半は戦闘経験が無いか あっても 身を守る訓練くらいだ。
そもそも 戦闘が好きで経験が豊富な若い男はギルドがある 大きな町で冒険者として暮らしている。
こんな一般人しかいない村が襲われていたら
大半が死んだか 滅んでいただろう。
……ふぅ まさか保険のゴーレムが活躍するとはな
……助かった
しかし チェコの顔色は優れない。
(……いいえ おそらく ボスがいる以上)
(すぐに数を増やして襲ってくると思うわ)
(しかも 今度はもっと多い数で……)
………………
言葉を失ってしまう 呼吸も10秒は止まった。
……本当か?
(基本的な魔物の習性上 高確率でね)
(しかも ゴーレムが追い返したせいで)
(村人は気付いていないから ギルドに助けも呼べないしね…)
……………っくそ! 裏目に出たか!
……いや! ゴーレムがいなければ 滅んでいたかもしれないんだ!
……落ち着けぇ! 落ち着け!
まずは 自分の気持ちを落ち着かせる
深呼吸をしたら あぷ― あぷー と間抜けなものになってしまったが
むしろ その赤ん坊のしぐさが笑えて落ち着いてきた。
そうなると 天才の頭脳は勝手に回ってくれる
……チェコ? まだ魔物は近くにいるんだよな?
(ええ 昨日行った東の森の奥深くで そこにいた魔物たちを配下にするか 殺して乗っ取っているわ)
……正確な数は? それと強さと種類も頼む
(今のところ 数は73匹ね)
(でも ボスモンスターがいると どんどん集まってきて増えるわ)
(おそらく3週間もかからず 200匹になるかも)
……3週間か しかも それより早く来るかもしれないし 時間が無いな
それに 村の人が外に出たところを襲われるかもしれない。
(強さ的には 中級はボス一体しかしないけど)
(そのボスは ローグガルフよ やっかいだわ)
……ローグガルフというと ガルフが長い間生きたことにより
……魂の格が上がった奴だったよな?
(そう 賢くて強くて素早いし 中には魔法も使って配下もいるっていう面倒な相手よ)
(狩るときは LV100以上の冒険者の中規模パーティーが出るくらいね)
……くそっ こっちはまだLV3だぞ!
LV100というと 1人前の冒険者である。
それが20人近く必要であることに目がくらむ。
さらに 悪い情報をチェコが言う。
(配下の下級魔物はガルフが52匹 ベアンが21匹だわ)
ガルフとは オオカミを1.5倍させ 狂暴にさせたもの
ベアンは クマをこちらも1.5倍させて 力を強くしたものだと思えばいい。
だいたいが 2~5メートルほどのサイズだ。
これは大型バイクや軽自動車が群れになって襲ってくるようなものだ。
しかも ローグガルフは長い年月によって体が大きくなり続けて
10メートルを超えることもある危険な魔獣だ。
しかし 必死に頭を回転させる。
……昨日の戦いの様子を教えてくれるか?
……いくら ゴーレムとはいえ 100匹相手にどうやったんだ?
あいつには 異世界の戦闘魔導機兵の思考回路を入れてあるとはいえ
100匹と同時に戦える力はないはずである。
(…えっと まずはね)
こうして俺は中級魔物と戦わなくてはならなくなった。