6話 初めての狩り
神々の代理ゲーム 6話 初めての狩り
ゴーレムの体を動かしながら
……よし 初の実践だな! 東の森へ行くか
(ねぇ ミスト?)
(このまま行くの?)
(さすがに 村人に見られたらさ 魔物と勘違いされて襲われるかもよ?)
たしかに 今の体は土で作られた人型だ。
ぶっちゃけ いきなりあったら相当怖いだろう。
だが
……ああ 大丈夫だ
……こいつには隠密行動や待ち伏せができるようにな
……<土中移動><陰行>
ゴーレムが地面と同化していく
(あわわわ! ……えっと …土の中に潜ったの?)
……そうだ これなら 特に問題ないだろう?
……しかも 魔力濃度の高さも誤魔化してくれるんだぞ?
……土の中にいれば気付かれることは ほぼあり得ない
……すごくないか?
(…暗殺者に なるつもり?)
……………さて 行くか
チェコの言葉は聞き取れなかったので無視することにする!
そして ゴーレムは土の中を泳いで東の森へと進む………
こうして俺は
ゴーレムに―意識だけ―チェコと乗り込んで
魔物退治に出発した。
とはいえ 森に着くまでには少し時間がかかる。
というわけで
チェコと魔物について
もう一度 講義を始めた。
天才の頭脳があれば 本来は必要ないのだが
まぁ 暇つぶしとリラックスをねらってだ。
千年前の代理戦争の時に
兵士たちの【練習相手】兼【生贄】として創られたのが魔物である。
―このことは今では知られていない―
しかし 千年たった現在では少し事情がかわってくる
簡単に言えば 戦争をしていないのだから魔物は必要ないのだ。
しかし 魔物からしたら そんなことは知ったこっちゃない。
神々に 創られた本来の意味を発揮すべく
人種に襲いかかってくる。
しかも 最悪なことに
一番 最初に創られた どんな種族でも倒せる魔物は経験値欲しさの兵士たちによって
とっくの昔に絶滅させられていた。
その上 神々は魔物創りの途中から
何度も 補充するのが面倒になったらしく。
繁殖能力だけではなく
絶滅するような 一定数以下になると周囲の魔力を集めて
魔物を受肉させる術式を創ったのだ。
これにより 魔物を絶滅させることが 不可能になり
千年後の今日も魔物と戦い続けている。
とはいえ 救いであったのが
高位の魔物は基本的になわばりに入らなければ
襲ってこないように創られていることと
今も現存している魔物の最弱LVは
とりあえず 戦闘訓練を受ければ 一対一で勝てるようになるということだ。
しかし 魔物も群れて生活するのがほとんどなので
戦う時はパーティーと呼ばれる
4人以上の仲間と戦うらしい。
次に魔物の死骸についてだ。
この世界〈アリアオーネ〉には すでに動物はいない。
これは 神々に魔物創りの材料にされたり
弱かったので
人種からは 食料 兼 経験値
魔物からも 食料として
狩られまくったからだ。
そのため 動物を喰いつくした人種は
食料をとして
次に魔物を食べ始めた。
しかも 毛皮や鱗に骨などといったものまで有効に使っているらしい。
そして もっとも重要なのが
魔物の心臓や核にある 魔力石である。
これは 魔力の塊であり
この世界では電気にかわってエネルギーとして使われている。
ゆえに魔力石や食料・貴重なアイテムを狙う
冒険者やハンターなどと呼ばれる職種ができた。
その上 魔力石は高位の魔物ほど
魔力純度が高いし 大きい
しかも 高位の魔物は魂が強力なため
生命力が強くて 栄養価が高く 精力も豊潤であり
人種にとって その肉は美味らしく
高位の魔物の死骸は高額で取引されるようになる。
こうなれば 冒険者たちは一攫千金を目指し
次々と 高位の魔物に挑戦していくことになった。
しかし 当然 ほとんどが失敗に終わってしまう。
そのため 無茶な冒険をしないように冒険者の互助組織 兼 育成機関として
ギルドと呼ばれるものができた。
そして ギルドによって組織だって
魔物と戦うことにより人種の生活は安定し
今では魔物の少ない土地や弱い魔物しかいない土地に
国を造って ある程度 平和に暮らしている。
というのが チェコが話した。
魔物と人種についてのお話だ。
まぁ 魔物は 増えると人種を襲い始めると言うので
強くならなくてはいけない俺にとって
罪悪感が少なく殺せる相手だろう。
などと考えていたら
……ふぅ 東の森についたな
(そうね これから戦うの?)
……まぁな さて<探査>
これにより 魔力石と魔物の魂をさがす
……よし! いたぞ
そして そのまま<土中移動>で
魔物に接近していく。
……ふむ この地上にいるな
……<遠見>
……おお いたいた
……あれは 確か
そこには 1~2メートルほどの巨大なイノシシのような魔物がいた
(ボアルって魔物ね)
……ふーん まぁ イノシシでいいだろ
とかってに名付けながら
3匹ほどいた中で一番近くにいた 全長1メートルほどのイノシシの真下に来る
……じゃあ 性能テストといこうかな
―意識だけだが―
一度目をつぶって覚悟を決める
そして 土中でイノシシの心臓に向かって左手を出す
……<土槍>!
土が圧縮され 硬質化し 飛び出して
ドシュ!
イノシシの心臓を貫いた。
「ボギャ! ギャ……ギグ………」
心臓を破壊されたイノシシはうめいたが ほぼ即死であった。
しかし 他の2匹はまだ状況がわからず 動けていない
……よし <石弾>!
土中から姿を現しながら
こっちを見て ポカンとしている
2匹に向かって 右手から大量に石ころを ものすごい勢いで飛ばしていく
ズダダダダダダダダ!!!!!
しかし 堅い毛皮によって防がれる。
……ふむ 単なる石ころでは
……魔物の毛皮は貫通できないのか
といいながらも地面に接している足から弾を補充して撃ちまくっていると
さすがに ダメージはあったらしく
イノシシたちは倒れこむ。
そして 倒れたイノシシたちに撃ちながら近づいていき
……<土拳>!
<石弾>を撃っている
反対側の手が圧縮しながら 大きくなって50センチほどのハンマーになる。
そして すでに石ころにリンチされていた瀕死のイノシシの頭に向かって
ドシャ! グシャ!
とどめを刺した。
……まぁ とりあえずは成功だな
……最弱の魔物なら 一応は倒せるようだ
(………えぐい…)
……ん?
(……いくら! 何でも! やりすぎよ!)
(頭つぶれて脳味噌が飛び散ってんじゃん!?!)
どうやら チェコにはヴィジュアル的に受け付けなかったらしい。
半泣きで文句を言ってきたので
落ち着くように なだめておく。
少しして落ち着いてきた チェコはイノシシたちを見ないようにして質問してきた。
(ミストってさ 前世は平和な世界に いたんでしょ?)
……ん? まぁ 何が平和か わからんが
……基本的には 命の危機にさらされることはない所だったな
(でも なんか 戦い方が慣れてなかった?)
(ためらいも なかったしさ)
……ん ああ まぁな
……育て親の爺さんが古風な人でな
……武道の修行で山籠りしたこともあって狩りもしたし さばくこともしたからな
……少しは慣れてるし 戦いの最中に下手に加減すると
……大切なものを失うってのが 爺さん いや 師匠の教えだからな
(へぇ~ ちゃんと戦えるのね)
(なんだかんだいっても やっぱり 暗黒神様が選んだ代行者ってことか)
(ほとんど諦めてたけど希望が見えてきたかも!)
……なんだ 諦めてたのか?
(だって 最初は 戦場に辞書を持って行くなんて)
(何考えてるの? って思ってたし)
(話を聞いたら 無理やり参加させられたっていうから)
(半分以上 諦めて 上手く生き残るか余生を楽しむことを考えていたもの)
……まぁ 確かに
……能力見たら 戦闘力0だしな
でも 辞書って! 確かに能力としちゃ そんなもんだが
自分を卑下するのは良くないぞ?
(よし じゃあ 代理ゲーム!頑張りましょうか!)
……今さらだな
……当然だ
話も一段落ついたので
その後 イノシシの解体を始めると
(そう言えばさ 魔力って大丈夫なの?)
……ん?
(だってさ ここまで来るのにしたって魔法だし)
(さっきの戦いで魔法連発してたじゃん?)
(最初に 注いだ魔力って少なくなっちゃったんじゃない?)
(本体と これだけ離れると補給もできないしね)
(これって 魔力で動かしてるんでしょ?)
……ああ そのことか
……当然 魔力で動かしているが
……異世界にあった魔法とかで すこしイカサマしているからな
(イカサマ? 何したの?)
……こいつが 魔力を得る方法はな?
……4つあるんだよ
1つ目は 主人から魔力を注ぐこと。
もっとも ポピュラーで魔法使いなら
大抵 この方法で行う。
ただし 遠距離だと注げないので魔力が切れたら動かなかったり 土に戻ってしまう。
2つ目は<吸収>魔法の中の1つ
<大気吸収>だ
これは名前の通りで 大気の中にある魔力を喰らうことができる。
といっても 通常時は微々たるものだし
人種や魔物も呼吸などで似たようなことをしている。
しかし それを改良して戦闘用にまでLVを上げたのだ。
魔法を使える相手との戦闘時には 周囲の魔力を根こそぎ喰いまくることにより
相手の魔法を弱体化させ さらに放たれた魔法からを魔力を喰らうことで無効化する
魔法使いにとって最悪の魔法といえる。
3つ目も<吸収>魔法の中の1つ
<対象吸収>と言う。
これは 一種の呪いのようなもので
発動しながら 一度でも触れた相手ならラインを繋いで生命力を奪っていくことができる。
戦闘中に行えば 相手の弱体化と自分の強化と補給が同時にできるし
土人形なら相手が地面に触れていたら ラインを繋げれるので
ある意味 最凶の魔法だろう。
4つ目は 魔力石から吸い取ることだ。
倒した魔物の魔力石を取り込んで ためておくことができる。
しかも 複数の魔力石から吸い取って
1つの純度の高い物に出来るから体内が魔力石だらけになることもない。
つまり 戦い続ければ 半永久的に動ける仕様である。
……というわけだ
(ははぁ~~ なんか呆れてくるわね)
(この世界の魔法研究者が見たら卒倒するんじゃない?)
……確かに この世界の魔法は正直なところ無駄が多いしな
……種族魔法や特殊魔法とか 解放して全てを統合したら
……大分 良くなると思うんだが
……まぁ 国の政治的問題になるか
としゃべりながらも イノシシから魔力石と毛皮に牙を頂戴する
(毛皮や牙はどうするの?)
……ん? ああ 本当ならギルドに持っていくと
……金になるんだが ゴーレムじゃな
(確かに 行ったら討伐されそうね)
……というわけで <保存><強化><構築>
毛皮と牙に防腐処理と耐久度を上げる魔法をかけて
ゴーレムに取り込ませる。
そうすると 土人形から毛皮で各部を補強され 牙をもった
土と魔物の融合したような ゴーレムになる
(うはっ! さらに キモくなったわ!)
……戦闘用だから 外見は別にいいだろ
……ついでに 肉にも<保存>
……んで <倉庫>
ゴーレムの腹が縦に割れて開く
そうすると 中には亜空間が広がっていた。
その中にイノシシを入れて 閉じる。
……ふぅ これで始めての実践は終了だな
(……………今のって 時空間魔法よね?)
……ああ 中の時間は止まってるから腐らないという 優れものだぞ?
(この世界じゃ 千年前に失われた神代の古代魔法よね?)
……そうらしいな それがどうかしたのか?
(………いえ 何でもないわ)
……ん? おかしな奴だな?