3話 賢者の誕生
神々の代理ゲーム 3話 賢者の誕生
他の種族から離れて
山奥深くにその村はあった。
そして そこでは今日。
後に世界で誰もが知り
敬い恐れ平伏した。
一人の男が誕生した。
………ま…ぶしい……
……ね…むい……な
…………zzZZZ
―――寝てしまったが
―――〈1ヶ月後〉―――
……ふぅ
俺こと 八島涼也は!
今! とてつもなく困っていた!!
そう!!! とにかく 暇なのだ!!!!!!
……………
―――ガクっと 力が抜く―
今の状況を説明すると
2週間前に気がついたら 赤ん坊になっていた!!!!
って感じだ。
……なぜだ?
と悩みもしたが、
少し考えれば
あの神様のせいだろうと思い当たる。
最初は文句を言おうと叫びまくったのだが
声帯がまだ上手く動かせないらしく
ただ 泣き叫ぶだけになった……。
しかも 視界はぼやけているが
おそらく母らしい人物を ―言葉はわからなかったが― 困らせてしまってからは用もないのに泣く事はしないようにしている………。
………はぁ
……何かすることは
……ないだろうか?
そんなことを考えてる時だった。
(ふぅーん じゃあ してみる?)
……え?
と思った瞬間。
ごっそりと 体の中から何かが抜けていく。
いきなりのことに驚くが
次の瞬間には頭痛と虚脱が襲ってきた……。
しかも 脳の神経回路が焼き切れるかと思うほどの痛みと
前世 師匠とやった真冬の寒中修行の後のようで
体の中心に力が入らないのだ。
もう訳もわからず 気を失いそうになると
(おっきろ~ こっちだよ~)
とのんきな声が聞こえた。
もちろん、こたえる元気など、あるはずもなく
そのまま 気絶する瞬間――
(むしすんな~~!!)
と叫びながら、ソレは頭に体当たりしてきた。
「ほぎゃっ!!」
口から間抜けな悲鳴があがる。
今度は激痛で気絶することもできない。
(ん? あれ? なんか けいれんしてない?)
ピク……ピクッ…
(おーい だいじょうぶ?)
俺が激痛を我慢していると
……そいつは
…………俺の頬をペシペシたたくという
…………………悪魔の所業を開始しやがった
…………………………………ガクッ
―――〈十分後〉―――
(いやぁ ごめんごめん~)
(まさか そんなに きついとはおもってなくてさ~)
ようやく 激痛がおさまってきた頭を振って
少しめまいを感じながら 目をあけると……
……目の前には 羽虫がいた
(はむし?! ひど! どうみたって ようせいでじゃん!)
…………ふむ ……確かにな
……良く見れば 物語にでてきそうな妖精だ
全体的に光っていてよくわからないが
7~8センチほどの大きさで人型で透明な羽が付いている。
……まぁ 妖精に見えるな……
……でも! 俺にとっては羽虫ということは変わらない!!
(……もういっかい さっきのやるわよ?)
………さて 妖精さんが私に何のようかな?
(いきなり たいどを かえるわね…)
(まぁ いいけどね わたしってやさしいから!)
…………もとはと言えば 原因はそっちにある気がするけどな
(うぐっ しかたないでしょ! いたみがあるなんて しらなかったし)
……はぁ
……それでお前は なんなんだ?
……まさか イタズラ好きの妖精ってオチは勘弁してくれよ?
(まぁ それは それでたのしそうだけど……)
……おい!
(わかったわよ まじめにいくわ! わたしは ほんのせいれいよ!)
……ほんのせいれい? 本の精霊か?
(いいえ せい がちがうわ)
………生霊? いや聖霊?
(そうよ さいごのやつね! えらいんだから!)
……ん? でも さっき妖精って言ってなかったか?
(あぁ それは わたしって からだがなかったから)
(あなたの いめーじにあった けんげん しやすそうなものをえらんだのよ)
(だから からだはようせいね)
…………………まぁ わかった
……んで 本の聖霊さんが何の用だ?
(なんのようだって ひどいわね)
(これから ぱーとなーとして いっしょにたたかうのよ?)
……パートナー? どういうことだ?
(あれ? あんこくしんさまから きいてないの?)
……聞いていないな
(うーん ま いっか じゃあ せつめいするわね)
……ああ 頼む
(どこから せつめいしようかしら……)
(そうだ! すこしまってて!)
……ん? どこへいく?
そのまま聖霊は視界の外に消えてしまう。
30秒ほどで戻ってきたが
その手には
(んしょ んしょっ)
明らかに自分の倍以上の大きさの本をもっていた…。
しかも……
……おい …なんだ その禍々しい本は?
……呪いの本か?
全体的に黒い表紙に どす黒い赤と金で装飾してあった本は
どうみても 悪意を感じてしまう。
(なっ! しつれいね! これはわたしが やどっているほんよ!! …あっ)
「ごふっ!………」
ふらつきながらも
重そうな本を持ってきた聖霊は俺の目の前で掲げようとしたが
俺の考えに怒って文句を言ってる最中
手を滑らして 俺の鳩尾に……
……殺す気かぁ! 羽虫ぃぃいい!!!
(ごめんごめん てか 誰が羽虫よ!)
(もとはと言えば あんたが失礼なこと考えたからでしょ!)
騒いでる羽虫を無視して
痛みに耐えながらも落下してきた本をみる。
少し観察していたが
違和感に気がつく
……ん? 目が見えるな
(? どうしたの~?)
騒いでた羽虫も俺が困惑してるのに
気がついたようで訪ねてくる。
……いや 目がちゃんと見えるんだ
(…当り前じゃない?)
……俺は赤ん坊だぞ? まだぼんやりとしか見えなかったんだ
(そうだったんだ…)
(…うーん たぶんだけど~ 本と契約したからじゃない?)
……契約? どういうことだ?
(さっき 体に違和感あったでしょ?)
……違和感というよりは激痛だったがな
(ごめんってば~ まぁあ それは置いといて!)
(たぶん その激痛ってのは この本と契約したからなの!)
少しテンションをあげて 誤魔化そうとしてるのには腹たつが
……まぁいい それより
……なぜ 俺は呪いの本と契約したんだ?
(? 私がやったからだけど?)
……うすうす思ってたが やっぱりか!
……下りてこい! …握りつぶしてやる!
(…赤ん坊の手じゃ 無理でしょ)
(というか 何をそんなに怒っているのよ?)
(これはあなたの神器なのよ?)
……は? …神器? どういうことだ?
(何言ってるの?)
(あなたは3つの力と1つの神器を暗黒神様からいただいたんでしょ?)
……そういえば そんなこと言ってたな
……んじゃ 俺の力ってのは なんなんだ?
(ハァ? 知らないの?)
……知らん
(なんで知らないのよ? 暗黒神様と相談して決めたんでしょ?)
……いや 時間切れだとかで 無理やり決められたな
ぽとっ
妖精は落下した後 悲痛そうに
(暗黒神様ぁ~!!)
いきなり頭の中で叫ばれたような感覚でウザイが
……くっ …まぁいい それで俺の力ってのは?
(……はぁ どうりで戦闘向きの能力と神器じゃないと思ったのよね~)
……何? どういことだ?
(ほかの神様たちはね?)
(全員 代行者にSS級以上の戦闘用神器を持たせたのよ?)
……代行者?は 俺のような存在か
……戦闘用神器ってのは まさか…?
(昔 神様たちの戦争時に 神々が使ってた武器ね)
……オイ やばくないか それ?
(超ヤバいわよ! 特に! “全てを切り裂く剣”とかは 神様が使ったら世界を切ったなんて言う伝説のシロモノだしね!)
(一応 代行者が使えるように 力は落ちてるけど それでも十分におそろしいわ! しかも 代行者全員が同じような神器を持っているからね!)
……なんという……………
……それじゃあ 俺の神器は?!
(…………庶務用神器 ランクC級の “神々の知恵庫”よ)
……は?
…………庶務用?
………………………C級?
(……そうよ 神様たちが管理するとき 調べ物しやすいように)
(今までの全世界の記録や 神々の知恵が集めてある)
(通称 “アーカイブ”にアクセスする端末ね)
……それは 凄い物なのか?
(そりゃ 神器だから すごいことはすごいけど)
(アクセス権限のLVが違うだけで ほとんどの神様が持ってるし)
(…戦闘能力は0よ)
………………0かぁ…
目の前が真っ暗になりそうになるが
……いや まて! 能力の方はどうなんだ?
……そっちで戦えるかもしれない!
(……ああ あなたの能力はね?)
(1.天才の頭脳 2.神の知恵 3.ハーレムの主 の3つね)
…………………………………………………………
………なんだそれは?
(暗黒神様は あなたの望みを与えたって言ってたけど?)
……な?! どういことだ?
……いや まてよ
……まさか
能力を決めるときの
〔くそっ 突然すぎて 頭が回らないぞ……
もっと 情報はないのか……〕
……これが望みとしてカウントされたのか?
そりゃ 確かに もっと頭の回転を速くなれとは思ったし
もっと説明もしてほしかったが
……能力にされるとはな……
……ん! オイ! 1と2はわかったが 3は身に覚えが無いぞ!
(え? ああ それはね)
(暗黒神様から伝言があるわ)
(今 再生するわね……
「やぁ 元気かい? 代理ゲーム頑張ってよ
負けたら 許さないからね………………………………
ああ そうそう 能力のことだよ
1つ目と2つ目はね
意識の表層にあったんで 簡単だったんだけど
3つ目は見当たらなくてさ
仕方ないから意識の奥底にあった
愛にあふれた家族が欲しいって願いを採用したんだ
感謝してくれよ?
たださ 神器がしょぼかったから、神力が大量に余ってしまってね?
おもしろ…… もとい僕のやさしさから
願いを強化してあげたんだよ
それ以外にも余った神力でルール違反にならない程度には全体的に強化しといたからね
頑張ってくれ
……………拷問がいやだったらね…………」
…………まじか
……いや まぁ 昔のことから
……家族が欲しい とは思ってたけどな
……師匠がいたけど
……半分は師弟愛だったと思うし 爺さんとの二人暮らしだ
……それを考えたら 愛にあふれた家族が欲しいのは分かる
……ただ! それがどうして ハーレムの主になるんだ?!
強化しすぎだろ!! 暗黒神!!!
むしろ身を守る術をくれよ!!
魔物がいる世界だぞ!!
死んだら意味ないんだぞ!!
………………はぁ
(…落ち着いた? 大丈夫?)
……大丈夫じゃないが 落ち着いたよ
……終わったことに文句を言っても仕方ないからな
……ん? じゃあ 目が見えるようになったのは
(おそらく “神々の知恵庫”と契約したおかげね)
(もともと 天才の頭脳だった上に)
(神の知識を受け入れられるように脳が強化されたんでしょ)
……天才の頭脳だったのか?
……というか それだと 天才の頭脳はいらないんじゃ?
(……何言ってるの)
(天才の頭脳を持ってるから 生まれて1カ月で)
(ここまで 思考出来るくらいになってるんでしょ?)
(それに天才の頭脳が無かったら)
(神の知識を受け入れた瞬間にパンクして発狂すると思うわよ?)
……そんな危険物なのか 禁書じゃないか それ?
(まぁね それに この本は暗黒神様特性の物だから)
(アクセス権限は 最高神秘匿級 以外は全部見れるもの)
(戦闘能力はないけど ある意味じゃ お宝よ?)
……まぁ 確かにな
神の知恵とか 人が使えるかは わからんが凄いものだとは思う。
………ふぅ
一度ため息をついて
今 考えたら ものすごく速く回る頭で
状況を整理する。
30秒ほどで 全てを再考して
……1つ 聞きたいことがある
知りたいことを聞いてみる。
(ん? なになに? 何でも聞いて?)
(使用者の疑問に答えるのが “神々の知恵庫”だしね)
……羽虫 お前の名前は?