19話 見られていた代行者
前話は 一度間違えて下書きを載せてしまったので
2時間後くらいに気づいて直したんですが、掲載直後に見てしまった人はできれば見直していただけると良いかと思います。
まぁあまり内容に変わりはないので見なくても困らないですけど、見たほうが楽しく読めるかなと思います。すいません。
神々の代理ゲーム 19話 見られていた代行者
―――村長の娘 コリエルフィン―――
今日は朝から最悪でした。
昨日 父様が出かけるから2週間は狩りに出られないと知らされて落ち込んでいた所にあのクリートが規則を破って狩りに行こうとしつこく迫ってきたんです。
しかも 弱くてアホなくせに私を口説こうとしてきて虫唾が走って大変でした。
私を口説きたかったら せめて父様並みになってからにしてほしいです。
まぁ もちろん無理でしょうけど。
その上 あまりにもしつこかったので 私が頭にきて かってにしてください と言ってしまったら、ほんとにかってに狩りに出かけたらしいんです。
あまりにもアホ過ぎて頭が痛くなってしまいます。
しかし これでも村長の娘なので、あんなアホ達のことも考えないといけないんです。
父様からも留守中を頼むと言われてましたから……
それで仕方なく 村長代理のキースルさんと相談して捜索隊を作って見に行くかどうかを話し始めたんですが…
普段ならすぐ作れるのに 今回はいつもの戦い慣れた人たちがいないんです。
弱い人たちで向かって逆に魔物に襲われても意味がないので
どうするか話し合うために村の大人を集めることになりました。
まったく クリート達のおかげで鍛錬の時間がつぶれてしまいます。
そうして 村人の家を回っていると、急いでどこかに向かっているミスト君を見つけました。
正直言って 私は彼のことが好きではないんです。
だって 村一番の いえ おそらく少数の現存する古代魔法の使い手でも優秀な魔法使いである あのノムランさんの教えを唯一受けているんですよ!
私の師である父様は魔法剣士だったので魔法は補助に使っていただけで、覚えているのは素早く発動できるものばかりしかなく 上級魔法はあまり覚えていなかったんです。
なので 魔法を教えてもらうならノムランさんがいいと思ったのに私がどんなに頼んでもダメでした。
しかし 彼は気付いたらいつのまにかにノムランさんのとこに通って魔法を教わっていたんです!
常人程度の魔力しか感じない彼に教えて 私に教えないのは不公平だと思うのに父様ですら仕方ないよと笑っているんです!
意味がわかりません!
きっと 顔が良くて、行儀がいいとかそんな理由でしょう! ムカつきます!
そのことを思い出して 少し不機嫌になって、彼のことを睨めつけてしまいました。
しかし それに気付いた様子もなく、走っていくので興味も失せて また村人たちを集めようとしたら
彼は顔色を真剣なものにして
「……チェコ 相手の人数と正確な場所は?」
と急にひとり言を言い始めたんです。
私は驚いて どうしたのかと彼を見ると
「……北西の草原に800人! まじか!」
「……っち! 面倒だな つか過剰戦力だろ!」
さらにひとり言を言いながら村の外に出てしまったんです。
周囲には他に人がいなかったので気付いたのは私だけでしょう。
私はクリートのアホに影響を受けたのかと思って、ため息をつきながら彼を追いました。
遭難者をこれ以上増やすのはダメですからね。 ハァ…
そして 私も村の外に出て行くと
「……ああもう! 草原の方向はこっちだな!?」
彼は叫びながら どこからともなく身長の倍はあるだろう大きな戦斧を取り出したんです。
私は愕然としました。
だって 武器の召還は中級魔法です。 しかも彼は無詠唱でそれを行ったんですよ!
ありえないです! そんなことは父様クラスの魔法剣士じゃないと無理なはずです!
私は呆然と固まって 彼に声をかけることを忘れてしまいました。
そしたら、彼は猛スピードで森の中に入ってしまったんです。
一瞬悩みましたが、なぜ彼にあのようなことができるのか気になって 私は後を追いかけてみることにしました。
何か変なことでもしてたらダメですからね。問題をこれ以上出してもらっては困りますし。
しかし 彼は予想以上に いや あり得ないくらいに速過ぎました。
私の戦闘スタイルは速さを活かしたものなので スピードには自信があります。
というより 父様が驚くほどに、速くて 目が良いからこそ村の子供の中で最強でいられるんです。
それなのに 彼は私より全然早いんです!
しかも 村周辺の森は私にとって 毎日鍛錬をしている庭のようなものです。
だから 木々をスイスイかわしながら全力で追いかけてるのに、木々をジグザグに大きくかわしながら進んでいる彼に追いつけないんです。
さらに 彼は進路上にいる魔物を屠りながら走ってるのに距離が少しずつ開いていきました。
それが悔しくて 負けてなるものかと私は最初の目的も忘れて全力で追いかけたんです。
でも 30分も追いかけていたら 息が完全に上がってお腹が痛くなってきました。
彼は顔色一つ変えていないのに。
悔しく思いながら もうダメかと諦めたら、彼の先に甲冑を着た人影が見えてきたんです。
この時になって 何故彼がこんなところにいるのかが疑問になってきました。
思い出してみたら 街を出る時も何か言ってましたし、
疑問になって 良く観察してみるとクリート達が捕まっているのを見つけました。
私は訳がわからず、とりあえずは様子を見ようと木の陰に隠れます。
本当は飛び出そうかと思ったんですが
「……貴様ら その子たちは俺の連れだ 返してもらいたい」
と彼が言うのを聞くと 体が動かなくなったんです。
いつもと違って 行儀のいいニコニコした笑顔ではなく 怒っているようでした。
私は彼の怒りを見て 体が固まったんです。
そうしていると 彼と甲冑の方たちが話し合い 甲冑たちがダークエルフ狩りの人間たちであることがわかりました。
私はパニックになりました。 だって彼らから感じられる力は1人1人が私以上で、しかも何百人といるんです! 勝てるわけがありません!
ミスト君やクリーク達を助けるか 村に大人たちを呼びに行くか
私がパニックになっていたら 甲冑の人間たちは次々に倒れてそのうち地面に消えていきました。
「え? 何が起こったんですか?」
誰に聞くわけでもないのに ぽつりと声が出ていました。
そうして見ていると倒れたのはミスト君が手を振った直後からだとわかって、彼が何をしたのか気になっていると甲冑を全滅させてしまいました。
呆然としながらも 良く分かりないですが村が甲冑たちに襲われることはないようです。
と安心しながら 長い間 固まっていましたが、今の一連の出来事について聞こうとミスト君に近づこうとしたら…
彼が魔法で吹き飛ばされました!
「な 何なんですか!? もう!?」
またもや 何が起こったか分からずに少し泣きそうでいると
さっきの魔法でやや離れた所の木々が吹き飛んで、そこから軍勢が出てきました。
私は終わりではなかったんですかと思って どうしようと吹き飛ばされたミスト君を見ると彼は苦い顔をしながら私の方を見ていていました。
どうやら彼に気付かれたようです。
でも急な展開についていけてない私は何もできず呆然と見つめ返すことしかできません。
私が混乱していると 彼は甲冑たちの生き残りらしい人物たちと話ながら 私と甲冑の間に移動して…
私の周りに防護結界を張ったんです!
彼は私を驚愕させて 心臓でも止めたいのでしょうか?!
かけられた魔法を見れば 優れた魔法障壁だということが一発でわかりました!
しかも それを私の方を見ないで かけたんです!
あり得ないことですよ! もはや父様ですら無理でしょう!
私はもう脳の処理限界が超えて 何が何やらとの気分でぼうっと事の成り行きを見ていることしかできませんでした。
そうしていると 軍団の中で間抜けな みこしの上に椅子をつけている移動用の乗り物らしいものに乗った人が、なぜか自分のことを話し始めました。
特に意味がわからなかったのは神から能力を貰ったとか言ってることです。
私はかわいそうな人なのかと思いながらも聞いていると能力の解説をし始めます。
なんでも 一騎当千とか言うらしいんですが、
一騎が千人分の力を発揮するのではなく 千人の人を一騎として扱うことができる能力だそうです。
良く分かりませんし、そんな魔法は聞いたこともないので 何が起きてるのか さっぱりわかりません。
というより なぜ? との考えが頭の中をめぐって意味がわからなくなってきたんです。
だって クリート達は捕まっているのを見つけたら ミスト君がそれを助けようと何百人もの強そうな甲冑を倒して
それで助かったと思ったら さらに彼の攻撃が効かない人が現れたんですよ。
しかも それを私は何1つ理解できないんです!
もう何が起こってるのか 説明してほしいです!
何か 全てが蚊帳の外のようで無力感が漂ってきました。
「もう 何が起こってるんですか…」
と呟いても 当然答えは返ってきません。
ため息をついて 見守ることしかできないのかと思っていると
みこしの人が怒鳴り始めて 何やら袋を持って来させてました。
パニックになっている頭で 次は何が出てくるんです?と軽く現実逃避をしてしまうのも仕方ないことでしょう。
なんて 馬鹿なことを考えていたら 今度も私の想像を遥かに超えたことが起きました。しかも最悪な展開に。
まずは ミスト君の前に何かが転がされると彼の動きが固まったんです。
それで 何が出てきたんだと見てみると
「と と とう とうさま?……」
自分の声が引きつっているのが痛いほどわかります。
私は何も考えずに彼が張ってくれた結界から飛び出して その物体に近づきました。
そこからは記憶が曖昧です。
目の前のみこしの男が父様たちを殺したと言い、ミスト君が私を制止するように言った気がしますが。
気付いたら みこしの男に飛びかかっていて、
しかし 触れることなく その男の横にいた甲冑に槍でお腹に大穴を空けられたようです。
魔法で強化されていたらしくて、下半身がギリギリ繋がっているのが不思議なくらいでした。
ミスト君は吹っ飛ばされた私を受け止めて 抱きしめながら 何か言ってくれたようですが、聞こえませんでした。
私は 何一つ状況を理解できなかったんですが
本当は仇を取ってほしいんだけど、無理そうだから逃げてと言おうとして声が出ませんでした。
そして それをとても残念に思いながら意識がなくなりました。
皆さん 楽しみにしていたチェコに続く2人目のヒロイン登場・・・
あれ? なぜ? おかしいですけどおおおおお???