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神々の代理ゲーム  作者: AAA
第一章
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プロローグ 情報の大切さ?

神々の代理ゲーム プロローグ 情報の大切さ?













「……あぁ…、くそっ……」



膝から力が抜けて、地面とキスしてしまう。



「……こんなことならっ……」



周囲で何やら騒いでいるが、頭に入ってこなかった。



「……復讐して…、やりゃよかった…な……」



そこで俺の意識は消えた。





・・・・・・・・・・・・・






俺は八島(やじま) 涼也(りょうや)


22歳で次の春から警察官になる。


顔は中の上くらいはあると思うのだが、切れ長な鋭い目つきのためか、彼女ができるどころか、まともな女性とは--事務会話以外で--話すこともなかった…。


身長179㎝で体重は72kgと身長は高め、習っていた武道のおかげで体は無駄なく引き締まっているが、普通の女性には怖がられてしまっていた…。


性格は生真面目の上、正義感は強いのだが、感情表現が苦手なため、他人からの評価は根暗の無口だろう。


まぁ、実際に人生に対して諦め癖がある。



今思えば、こんな性格だからモテなかったのかもと思ってしまう。


思い返せば、前に師匠の迷惑・暴力・理不尽と三拍子そろったお孫さんや、容姿や家柄に本人の能力など--つまりは性格以外--は超優秀だった女友達が、



「性格さえ 無ければさぁ(ね) 彼女(あいて)になってもいいのにぃ(んだけど)」



みたいなことを言っていた。



その時は「誰がお前なんかで納得するか、こっちこそ願い下げだぞ」と思ったが、後悔するばかりだな。


ちゃんと助言を聞いておくべきだったかもしれない。


まぁ、もっとも思ったことが顔に出ていたらしく、トラウマになるレベルでズタボロにされたから聞くチャンスは無かったんだが…。







とはいえ、言い訳させてもらえば、こんな性格になったのにも理由はある。



俺はかなり裕福な家に生まれた。


そして、7歳までは幸せに暮らしていた。


誰もが羨む家族だったろう。



しかし、8歳の誕生日の3日前に両親が亡くなったのだ…。



さらに、祖父母はすでに亡くなっていたので、一人で現実に理解が追いつかずに途方に暮れてしまった。


そこへ父の弟である叔父さんが現れて世話をしてくれることになったのだが、両親の死から立ち直った時には全財産が叔父の物になっていて、自分は孤児院に入ることになっていたというオチだ。



事態に気付いた祖父の親友だった“師匠”こと


神木(かみき) 武刀(むとう)さんに拾われて、家族同然に扱われたのだが、心の傷が癒えるのには大分時間がかかった。



まぁ、そんなことがあったのだ。


暗く、ねじ曲がった性格になるのは仕方ないのではなかろうか。



それに“師匠”と呼ぶから分かるかもしれないが、武刀の爺さんは道場を開いていて、鬼みたいに滅茶苦茶強かった。


当然のように、俺も道場でしごかれることになる。


それも性格に影響しているのだろう。


頑固な爺さんとの修行と二人暮らしで、生真面目な正義感の強い男になったのだ。


これは師匠のおかげというべきかもしれない。


しかし、諦め癖も話を聞かないで無茶なことをやりまくる師匠のせいで出来たものだが……。



……少し泣きたくなるな。








まぁ、そんな感じで成長した俺は警察官の道を選ぶことにした。


結構、頭は良かったので将来を決めるのには悩んだのだが、強いて言うなら叔父のことと正義感からだった。



もっとも、叔父への復讐心は師匠の育て方がよかったのか、ほとんど持っていなかった。


むしろ自分が無知で、しっかりしていなかったからだと考えるようにすらなっていた。


そんのこともあって、勉強はめちゃくちゃ頑張った。


そして、将来は法律関係の仕事をしようと思っていたほどだった。


でも、弁護士は叔父と一緒に財産を奪い取っていった糞ヤローとか思っていたので、警察官にしようみたいなノリだったと思う。



そんな訳で警察官の道を選んだのだ。



しかも、頭がよかったのでエリートコースを進んだほうが良いと先生にアドバイスされ、試験を受けた結果、見事に合格できた。


今まで、お世話になった師匠に--必要ないと言われたが--恩返しができると思って、やる気も高く頑張ろうと決意した。


そして、大学の卒業も決まり、これからという時だった。










大学で内定が決まった友人たちと、第三回目の卒業と内定祝いの飲み会--騒げれば何でも良かったのだろう--をやって、


帰宅途中の深夜………。






いきなり背後から頭を殴られ、襲われた。



いくら武道をやっていて、人よりは強いといっても酔ってふらついていたし、治安が悪い場所でも無かったので気も抜いていた。


というか、日本で人の頭をためらい無く、--おそらくバットだろう--フルスイングするような馬鹿がいるのだろうか?


日本の安全神話はどこへ旅立ったって話だぞ。



しかも、一撃目で後頭部をやられたせいか、意識がぐちゃぐちゃで足がふらつく。


そこへ、さらに数発殴られて意識が完全になくなった。






・・・・・・・・・・・・・・・







意識を覚醒すると体が悲鳴どころか絶叫している。


激痛を我慢しながら、とりあえず体の調子を確かめようとしたら動かなかった。


疑問に思いながら、重たい(まぶた)をあげてみると、ガタイの良いお兄さんたちが俺を囲んでいた。


どう見ても暴力で飯食ってますって感じだ。


そんな893なお兄さんたちから視線を逸らすように、自分の体に向けてみれば両手両足縛られていた。



(……なぜ?夢か?ドッキリ?)



とまぁ、軽く現実逃避を始めようとしたところで、俺を監視していた若い男の一人が、遠くで何かやっていたグラサンの男に声をかける。



「気がついたようですよ、兄貴」



その声に反応して顔を上げたグラサン(おとこ)は煙草を灰皿に押し付けて立ち上がった。



「んぁ、おお!そうか、今行くわ」



グラサン男が近づくと俺の周りにいた連中が肩を掴んで膝立ちにさせてくれた。


滅茶苦茶痛い、もっと慎重に扱ってほしい。



「……だ、誰だ……」



呆然(ぼうぜん)としていたが、俺はひとまず疑問をぶつけながら、状況をうかがおうとする。


武術では、いや何でもそうだが、訳が分からない状況になった時にパニックになるのが一番まずい。


冷静になれとは言わないが、状況が分からければ対処のしようがないからな。


師匠との修行などで、理不尽な出来事は悲しいことに慣れている。混乱しそうになったら状況分析するのは癖のようなものだ。



辺りを見回せば、男たちは10人前後といったところだ。場所は暗くてよくわからないが、埃っぽいし、何やら大量のダンボールがあるのを見るとどこかの倉庫のようだった。


口の中は血の味でいっぱいだったが、まずは状況確認が必要だと必死に声をだそうとする。


でも、それより早くグラサンの男が、扉の左右を固めていた1人の眼鏡をかけた男に叫ぶ。



「八島さん、呼んでこいや!挨拶するんやったろ!」



それに頷いた眼鏡の男は扉を出て、1分ほどで戻ってきた。


そして、その後ろには俺がこの世で一番嫌いな人間がいた。



「フン!久しぶりだな、涼也?」



顔に侮蔑と嘲笑を混ぜながら、こっちを見下していたのは成金趣味なごてごてした杖を持った50くらいの男。


そう八島(やじま) 慎二(しんじ)


幼かった俺から全てを奪った男だった。



十年以上会っていなかったのに、顔を見た瞬間にはらわたが煮えくり返った。


復讐心は隠れていただけらしい、感情のままに飛びかかりそうになった。


しかし、拘束されていた上に暴れ始めたら、


「元気がいいなぁ~。大人しくしとけや!っとぉ」


ニヤニヤしたグラサン男に鳩尾を蹴られた。


俺は悶絶して床を転げ回りたかったが、さらに強く肩を抑えつけられ、叔父のほうに顔を向けさせられた。



そこからは叔父が得意顔で今回の暴挙について語り始めた。



叔父いわく、


「黙って、こそこそ生きていけば良かったものを!   ………復讐のために警察官僚になって私の不正を暴くつもりだったんだろうが!   ………無駄だ!おまえの情報は手に入れていたからな!    ………クソっ、本当に兄さんに似て小賢しい奴だ! 何だ! その目はクソ!クソ!クソ!   ………………フン!絶望しながら死んでいけ!………   」



蹴りの痛みと途中で何度も殴られて、意識が飛び飛びだったが大体の内容はわかった。


この目の前で騒いでいるクズは、俺が復讐しようと思っているらしい。


ぶっちゃければ、さっき会うまでコイツことなんかほとんど忘れていた。


我を忘れるほど怒りを感じたが、顔を見なければもう二度と思い出しもしなかったろう。


害虫(ゴキブリ)がこの世にいることは知っていても、自分の目の前に出てこなければ駆除しないのと同じ感覚だ。


というか、関わりたくなかった。


しかも、不正してたのかよ。こいつ。



「フフン!この世はな!涼也!情報なのだよ!復讐するにしても、もっと賢くするべきだったな!」



そして、俺はコイツの勘違いで死ぬらしい。


テンションが上がってきたのか、演説中に何度も杖で殴られ蹴られて、もうほとんど、聞こえなくなってきた。






「……あぁ…、くそっ……」



体から力が抜けて倒れこむ。



「……こんなことならっ……」



「……復讐して…やりゃよかった…な……」







・・・・・・・・・・・・・・・・・








こうして、俺は死んだらしい。


死因は叔父の勘違いだった。


情報の大切さを死ぬ前に叫んでくれたが、情報から正しい推論を出来ないなら駄目じゃねーかと思う。


まぁ、口が動かず、言い返せなかったけど。


それに叔父からしたら、


真実なんて、


どうでもよかったのかもしれない。






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