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御伽血戦  作者: 藤本由真
6/8

鬼退治其の弍

ドガッ


佐久間をすり抜けたシーバルドは、2階の部屋という部屋の扉を片っ端からぶち破っていました。どうやらシャットとは別行動を取っているようです。


「うーん。もしや、ここにはいないのでしょうか。人探しというのも、なかなか骨が折れますねぇ」


一通り部屋を調べ終えたシーバルドは、廊下に出ようと部屋の出口へ向かいました。


「……おや?」

その時、シーバルドの前に一人のおじいさんが姿を現しました。木節昴きぶしすばるです。


「んー、ここらをめちゃくちゃにしたのは、君ですかな?」

「ええ。何か問題でも?」

「いやぁ、まぁ、私らの職場ですからねぇ。あまり荒らさないでもらえると助かるんですが……」

「そうですか〜。でしたら、ここを使う人たちが全員いなくなれば、困る人もいなくなりますね」

「んー、名案ですが、それだと私もいなくなるということですかねぇ」

「ええ」

「それは……ちょっと困りますのぉ」

「しかし、道はそれしかありませんよ」

「んー、でしたら、元凶である君たちがいなくなる、という案もありますな」

「それも悪くありませんね……」

木節は刀を抜き、シーバルドは斧を構えます。

「……できればですが!」


瞬間、シーバルドは床を蹴り、木節との距離を一気に詰めました。それを迎え撃つように、刀を構えた木節が口を開きます。

竹断一刀流たけたちいっとうりゅう 刃走はばしり

横薙ぎに振るわれた刀から、斬撃が飛びました。


「!!」


シーバルドは咄嗟に斧を掲げ、飛来する斬撃を受け止めます。


ガキィィィィン!


凄まじい金属音が廊下に響き渡りました。木節は間髪入れず、次々と斬撃を放ちます。


ガキィン、ガキィン!


シーバルドは防御に手一杯で、なかなか近づけません。やがて彼は左手を下から上へと振り上げ、自身の正面に水の鏡を出現させました。


「ゴッドネス・ファウンテン!」


二つの斬撃が、水の鏡の中へと吸い込まれていきます。


「コレクション」

「ほぉ……これは見事ですな」


木節が感心したように呟きました。

斬撃を凌いだシーバルドは、そのまま木節へと駆け寄ります。走りながら、再び水の鏡を展開しました。


「ファイアリング!」


掛け声と同時に、先ほど吸収した二つの斬撃が木節めがけて放たれます。木節はやや驚きながらも、刀でそれを弾き返しました。

続けて、シーバルドが斧を振り下ろします。木節は半歩後ろへ跳び、間合いを取りました。


「飛び道具を溜め込む能力ですかな。刃走とは、相性が悪いですな」


シーバルドは再び距離を詰め、斧で襲いかかります。木節はそれを刀で受け止めました。


ガギィン!


激しい金属音が鳴り響き、両者の武器は鍔迫り合いになります。木節は刀を握る拳に力を込めました。


竹断一刀流たけたちいっとうりゅう……」

低く、渋い声が漏れます。


無隙寸断むげきすんだん!」

力を込めた瞬間、シーバルドの斧が真っ二つに割れました。木節の刀に触れていた部分を起点に裂けたのです。

「!?」


今度はシーバルドが驚き、半歩後ろへ跳躍しました。


(なんという切断力……! 密着した状態から、あれほどの剣術を……!)


後退するシーバルドを、木節は逃しません。跳躍した瞬間を狙い、喉元へと突きを放ちます。

シーバルドは即座に水の鏡を出現させ、突きを吸収しました。

木節はすぐに刀を引き抜き、鏡ごと斬りかかります。しかしシーバルドの判断も早く、鏡を消すと同時に木節の腹へ蹴りを入れました。


二人の間に、再び間合いが生まれます。


シーバルドは地面に水の鏡を出現させました。その場所は、折れた斧が落ちている位置でした。


壊れた斧が、水鏡の中へと吸い込まれていきます。

その間にも、木節は距離を詰めてきていました。


「コレクション」

迫る木節を横目に、シーバルドが呟きます。


木節の斬撃が届く、その直前。

「ファイアリング・シルバー!」

地面の水鏡から、元の形に戻った斧が飛び出しました。それは、銀色に輝いています。

シーバルドはタイミングよく、それを掴み取りました。


ガキィィィィィィィン!

銀の斧で斬撃を受け止めた瞬間、今までにない激しい金属音が庁舎中に響き渡ります。


ピシィッ

廊下の窓ガラスに、ヒビが走りました。


「ほぉ……斧が直っただけでなく、銀色に。強度や威力を飛躍的に高める術ですかな」


刃同士をきしませながら、木節が言います。シーバルドは、ニヤリと笑いました。


「ええ。本来は、戦闘で使うつもりはなかったのですが……」

「本気を出してくれたようで、嬉しい限りですな」


ここから、激しい斬撃の応酬が始まりました。

ガキィィン!キィン!キン!ガキィィン!


しばらく打ち合った後、二人は同時に後方へ跳び、再び間合いを取ります。

互いに牽制し合い、相手の動きを探ります。


(銀の斧でも、ほぼ互角……。化け物じみていますね。まともに受ければ瀕死は免れません。奥の手を使うべきでしょうか……)

(銀色になる前とは、衝撃が別格ですな。斬撃をもらえば無事では済みませぬ。ただ……隙はありますな。策がバレれば逃げられかねませぬ。……次で決めましょうぞ)


二人の間の空気が、細い糸のように張り詰めます。


ダッ

ほぼ同時に、二人は駆け出しました。間合いは一瞬で詰まり、再び刃が激突します。


ピシピシッ

衝撃で、窓ガラスのヒビがさらに広がりました。


シーバルドは斧を大きく振りかぶり、木節の脳天めがけて振り下ろします。木節は喉元を狙い、踏み込みました。


再びの衝突――その直前。


木節は体を華麗に捌き、シーバルドの斬撃をかわします。


(フェイント!?)


斧は空を切り、その勢いでシーバルドの体は前傾しました。その真横に、木節は立っています。

木節は刀を振り上げました。

竹断一刀流たけたちいっとうりゅう…… 孤虎爪撃ここそうげき!」

振り下ろされた刀が、シーバルドの肩を捉えようとした、その瞬間――


「!?」


何者かの気配に、木節の体が一瞬だけ硬直しました。その僅かな隙を突き、シーバルドは水の鏡を出現させ、その中へ飛び込み姿を消します。


「逃しましたか……。しかし、今の気配は……」

木節は静かに気配の方向を見つめました。


「……行ってみますか」

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