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御伽血戦  作者: 藤本由真
5/7

鬼退治其の壱

ヌーンでのテレビ電話は、まだ続いていました。


「じゃ、すぐにこっちの人員をナイトに向かわせるよ。とりあえず庁舎にいる隊員たちを適当に見繕って……」

佐久間はそこで言葉を止め、窓の外へと視線を向けます。


「……どうかしましたか?」


画面の向こうから、那須が声をかけました。


「与一くん、悪いねぇ。ごめんだけど、増援は送れないな。それと会議はここまで。ちょ〜っと仕事だ」


佐久間の眼光が鋭くなります。松笠と那須は、その空気を察しました。


「そうか。気張れよ」

「ご武運をお祈りしております」

「はいよーー」


佐久間はテレビ通話を切り、大きく伸びをしました。

「んんんんん。さぁて、暇の貯金を崩す時が来たかな」



時を同じくして、佐久間のいる建物の地下1階。そこにある広い道場には、おじさんと若い娘の姿がありました。


「……師匠?」

「何か来たな」

「へ?」

「稽古は終わりだ、花。ついてこい。教えたことを発揮する時だ」

「え? え? ちょっと、師匠! 百田さーん!」

女の名は大塩花おおしおはな。男の名は百田捨吉ももたすてきちといいます。



さらに同じ頃、同じ建物の3階にある一室。そこには、おじいさんと若い娘がいました。


「……なんじゃろうなぁ」

「ん? じいちゃん、どうしたん?」

「パパって言いなさい。わしちょっと外に出てくるのお」

「あ、オッケー! 気をつけてねー」


二人の名は、木節昴きぶしすばると木節かぐやといいます。




その頃、建物の外では、謎の男と女たちが複数人で迫ってきていました。その中には、浦島が取り逃がした者たちの姿もあります。

彼らは建物の正面入口手前で足を止めました。


「変な気配はお前らかぁ。それ以上は進ませねえぜ」

そう口を開いた男の名は、名取参元なとりさんげん。両手には、伸びた餅のような物体を携えています。

「よし! 修行の成果、ここで見せます!」

続いて声を上げたのは、大塩花でした。片手には傘を持ち、斜めがけの鞄には数本の傘が収まっています。

「僕らで殲滅しましょう!」

そう言ったのは、工藤一寸くどういっすんという男です。片手には、鋭く大きな針のような武器を持っていました。


三人は、それぞれファイティングポーズを取ります。

そこに庁舎にいた複数の隊員たちも駆けつけました。

「さぁ! 踊ろうぜぇ!」

名取が気合を込めて、大音声を上げました。



建物の表で戦闘が始まってから数分後。建物の裏側に、数人の人影があらわれました。


「なるほど。貴方あなたが考える作戦とは、このことでしたか」

「ふん。単純な作戦だ」

「褒め言葉として受け取っておきますにゃー」


そこにいたのは、シャット、シーバルト、ヘンゼル、グレーテルの四人でした。


「たしかに単純ですが、我々の目的は人探しです。悪くない作戦ですね」

「そうですにゃ〜。さ、捜索開始ですにゃ〜」


ドガァ

四人は建物の裏口を攻撃し、扉を破壊しました。


「おや...?」

「...なるほどねぇ。表の連中は陽動かぁ」

扉の先には、壁によりかかった佐久間の姿がありました。


「いい作戦だったけど、人数が少ないねぇ」

シャットたちはファイティングポーズを取ります。

佐久間は意に介さず、言葉を続けました。


「それと……相手が悪かったね」

そう言って、佐久間も刀を抜きます。

「ヘンゼルくん、グレーテルちゃん。戦闘は君たちに任せますにゃー」

「は? マジかよ。めんどくせぇな」

「私どもは、さくっと抜けますにゃ〜」


シャットはシーバルトに目配せしました。

「ええ。そうしましょう」

シーバルドが軽く返事をします。


「はぁ、仕方ねえな……やるぞ、グレーテル」

「はーい」


スーッ

ヘンゼルは大きく息を吸い込みます。


「ガムマシンガン!」

ドドドドドドドドドドド

口から大量のガムの粒が吐き出され、まるでマシンガンのように放たれました。

佐久間は一粒を刀で斬ろうとしましたが、違和感に気づき、鞘で受け止めます。


ベチャベチャベチャベチャ


佐久間は鞘を巧みに操り、飛来するガムをすべて受け止めました。


「今のうちに抜けましょうか」

「そうですにゃ〜」


シュッシュッ

ガムだんと共に、二つの影が佐久間の左右をすり抜けます。シャットとシーバルトでした。

「……まぁいいか」

佐久間は二人を追わず、目の前の戦いに集中します。


佐久間は弾幕の隙間から、ヘンゼルの背後に立つグレーテルの異変を捉えました。


ガガガ ガガ ガガ

グレーテルの右腕が、みるみるうちに変形していきます。それはドリルのような、大きな円錐形でした。変形というよりも、硬質な物質を腕から分泌し、それをまとって武装しているかのようです。


床を蹴り、グレーテルがガムの弾幕と共に佐久間へと突進します。


ガキィン!


佐久間は刀で、グレーテルの右腕を受け止めました。グレーテルはすぐさま距離を詰め、連続で攻撃を仕掛けます。


キンッ、キンッ

ベチャベチャベチャ


佐久間は左手の刀でグレーテルの攻撃を防ぎつつ、隙間を縫って飛来するガムを、右手の鞘で受け止めました。


ガキィン!


瞬間、佐久間は肩を入れ、グレーテル、ヘンゼル、そして自分が一直線に並ぶように立ち回ります。ガムの弾幕を封じるためでした。


「くそ……」

攻撃が届かなくなったヘンゼルが、思わず声を漏らします。

ヘンゼルは上を向き、再び口からガムを射出しました。ガムは放物線を描き、上空から降り注ぎます。

佐久間の刀は、なおもグレーテルの右腕を受け止め続けていました。

その時、刀が一瞬、グレーテルの腕に押し込まれます。それを合図に、グレーテルはさらに力を込めました。


「……うーーん。......ちょーっと、甘いんじゃないかな」


佐久間は右手の鞘を、グレーテルの頬めがけて振り下ろします。


ドガァッ


グレーテルの体勢が大きく崩れました。すぐさま佐久間は、左の回し蹴りを腹部に叩き込みます。


ドガッ

「ぐっ……!」


グレーテルは、ヘンゼルの方へと吹き飛ばされました。


「んー、やっぱりベトベトだなぁ」


佐久間は右手のひらを見ながら、呟きます。ガムのせいで鞘はグレーテルの顔面に張り付き、すでに手元にはありませんでした。


佐久間はガムの弾がたどり着く前にヘンゼルの元に駆け出しました。


「んー! 邪魔だぁ!」

ヘンゼルは、飛んできたグレーテルを押しのけます。

そして迫る佐久間に向け、再びガム弾を放ちました。

佐久間は軽やかにそれをかわし、一気に距離を詰めます。右手の刀をくるりと半回転させ、刃を指でつまみました。

そのまま低い位置から刀を振り上げ、つかでヘンゼルの顔面を殴りつけます。

ヘンゼルの顔が、ひょっとこのように歪み、刀が顔面に張り付きました。


「ふーん。君自身も、ベトベトなんだね」


ヘンゼルが動こうとした、その瞬間。

ドガッ、ベチャッ

佐久間の左足による蹴りが腹部に炸裂し、ヘンゼルは壁へと叩きつけられます。腹部と佐久間の足は、ガムによって接着されていました。


「うわぁ……やっぱりベトベトは不快だねぇ」

佐久間は足を引き剥がしながら、ポケットを探ります。そして、小さな箱を取り出しました。

「持っててよかった。これは雀葛篭すずめつづらって言ってねぇ、すごいんだよ。……まぁ、見てな」


そう言って、佐久間は雀葛篭すずめつづらを放りました。

瞬間、雀葛篭すずめつづらはみるみるうちに巨大化します。佐久間の身長ほどにまで膨れ上がった葛篭つづらが、ゆっくりと口を開きました。


グオーーーーーー


雀葛篭すずめつづらは、まるで掃除機のように、風を吸い込み始めます。

すると、ヘンゼルとグレーテルだけが引き寄せられ、抵抗する間もなく中へと吸い込まれていきました。


「使用者が敵とみなしたものだけを吸い込んで、封印する道具なんだよね」


二人の姿が完全に消えると、雀葛篭はゆっくりと元の大きさへと戻っていきます。


「ふぅ……お人形遊びに構ってる暇はないんだよ」

佐久間はポケットからタバコを取り出し、火をつけました。

「増援、行くべきかな……いや、あいつらなら平気か」

そう呟き、佐久間はシャットたちが破った壁の穴に腰掛け、煙をくゆらせました。

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