03.指令
銀河鉄道の中枢にして、全宇宙の交通網を統括する、セントラル・オービタル。その中心部に位置するGRSI本部。重厚な金属の扉の向こうに広がる、最新鋭のサイバーシステムが光るオペレーションルームは、まさに銀河の安全を守る心臓部だった。
その部屋の一角、巨大なホログラムディスプレイが中央に浮かび上がる会議スペースで、チームYの面々は静かに座っていた。彼らの目の前には、白髪交じりの威厳ある男性、GRSI局長のアラン・フォードが立っている。彼の眼差しは鋭く、その声には一切の迷いがなかった。
「チームY。諸君らに新たな任務を与える」
アラン局長はそう告げると、ホログラムディスプレイにリュミエール惑星のルナ・パレス駅の空撮映像を映し出した。きらびやかな駅舎と、その周辺に広がるリゾート地の賑わいが、精密な3Dで再現されている。
「この美しいリゾート惑星で、最近、不穏な動きが確認されている。新種の麻薬『ドリーム・クラウド』の密売だ」
画面が切り替わり、ドリーム・クラウドの危険性を示すデータと、その影響を受けたと思われる人々の悲惨な映像が映し出される。チームの顔に、わずかながら緊張が走った。
「ドリーム・クラウドは、吸引すると幻覚作用をもたらし、究極の幸福感を与えるという。だが、その実態は使用者の脳を不可逆的に破壊し、最終的には理性を奪い、狂暴化させる極めて危険な代物だ。この麻薬が銀河中に拡散すれば、我々の社会は根底から揺らぐことになる」
アラン局長の声に、重みが加わる。
「情報によれば、麻薬組織はルナ・パレス駅を拠点に、大規模な取引を行おうとしている。諸君らには、潜入捜査によって組織の実態を解明し、麻薬の取引を阻止、そして供給源を断つことを命じる」
カケルは、冷静な面持ちでホログラムディスプレイを見つめていた。ミリアムは真剣な表情で映像に集中し、イヴァンは顎に手を当てて深く考え込んでいる。エミリーの瞳には強い決意が宿り、ノアは既に、表示されるデータに目を凝らし、分析を開始しているようだった。
「今回の任務は、諸君らの連携が鍵となる。リゾート地の日常に紛れ込み、誰にも気づかれることなく任務を遂行しろ」
アラン局長の言葉に、チームYの五人は、静かに、しかし力強く頷いた。彼らの目には、銀河の平和を守るという、揺るぎない使命感が宿っていた。




