10話 ◎傘、同じ理由で忘れたわΩ
ガラガラッドアの開く音がした。
振り返ると鈴白さんがこちらに歩いて来ている。
「おやよう」
鈴白さんが手を振り挨拶をしてきた。
俺と日舞もおはようと手を上げ返す。
鈴白さんもだ。
挨拶してきた鈴白さんは日舞同様目の下に隈を付けて来ている。
「鈴白さんももしかして誰かから話聞けた?」
「……ん? ええ聞いたわ」
反応が遅いすごく眠そうだ。
「日舞も聞いたみたいだから」
「うん! 私も聞いたの昨日」
荷物を机に置き眠そうな顔でこちらに話す。
「そう。芯葉くんには迷惑かけることになったわね、ごめんない」
「大丈夫じゃないけど大丈夫。平気だよ」
「フフッ」
可愛くも眠そうに笑ってくれる。いい人だ。
「それでさっき聞いた時さんつけてなかったけど2人の呼び方変えたの? 私も呼び捨てでいいかしら?」
「ああ変えたんだ。全然平気だよ」
「うん。いいよ!」
「なら呼び捨てで呼ばせてもらうわね」
これから鈴白さんではなく鈴白、芯葉と呼び捨てで呼ばれるのか、しかも日舞と2人に…クラスの奴らから何か言われるかもな、いや言われるか。う~んなんて言い逃れよう…
なんて考えながら俺たちは花壇へ水をやりに行く。
放課後になった。
昼休みに購買で残っていたカレーパンを買っておいてある。なんとなくカレーパンが置いてあったし日舞が好きと言っていたので買っておこうと思った。それと宣言通りしっかり授業中居眠りをしていたので何か栄養になればと思ってだ。
因みに鈴白も寝ていた。何が好きなのかわからなかったのでクリームパンにしていおいた。
でも今は教室の中で周りにも人がいるから渡すのは帰りの時だ。
窓の方に耳を傾けるとザーザーと土砂降りの雨が降っている。
傘は持ってきているので大丈夫だ。
日舞と鈴白と合流。一緒に昇降口へ行く。
日舞が俯きながら言う。
「同仕様……同仕様」
俺が切り出す
「まさかとは思うが…傘忘れた?」
すると今朝までの気だるそうな動きの悪さはどこへ行ったのかと思うぐらいの行きよいの良さで俺を揺さぶりながら言う。
「だって仕方ないじゃんっ!! 昨日凄いこと聞いちゃったんだもん!! そんな時に呑気に天気のことなんて心配してられないよーー!!」
からだを揺さぶられているのであわあわ言ってしまう。
「た、確かにそうだった! ごめん、確かにそうだったわ!」
俺が反省を込めて返事をした。すると。
「あの――」
鈴白がこっちを見て言ってくる。
「傘、同じ理由で忘れたわ」
真剣な顔で言われた。
「う、嘘。俺1本しか持ってきてないぞ。どうする?相合傘でもするか?なんてそんなことはしな――」
「それいいわね」
「うん!そうしよう」
鈴白と日舞が呼応する。
「え」
突然の事に俺の手はあっちへ行ったりこっちへ行ったり動揺が隠せない。
「どういう……」
鈴白が話し出す。
「そんな慌てなくても……だって近くにいた方が私達の花に栄養がいくんでしょ? ならせっかくだしくっついて帰りましょうか」
え、嘘だろ!? そんな、そんな事あるのか!!??
日舞も話し出す。
「恥ずかしいけど生きる為なら仕方ないよね!」
「そ、そ、そ、そうだな」
鈴白が顔を赤くもせず淡々と言う。
「じゃあ行きましょう」
冷静だなー。生きる為ならそうなるか。そうか、これは生きる為だ。恋愛とかではない! だから仕方ないんだ!
「分かった行こう」
今は下校ラッシュの時間。当たりには他の沢山の生徒も普通に下校しようと歩いている。
俺は昇降口を出て傘を広げる。
バサッと鳴った音が妙に大きく聞こえた。
「じゃあどうぞ」
2人が傘に向かって俺を真ん中に入ってきた。
2人の肩が触れた。
普段あまり感じない自分以外の人の感触に心臓の鼓動が速まる。
周りの目も気になる。周りがざわついている。予想外だったのが男子よりも特に女子の方がキャーキャー言っていることには驚いた。
男子達に叩かれ愚痴られるんだと思っていたが、いやそれは明日ってことなのかな。
俺たちは歩いていった。
人通りも少なくなってきた。
辺りを見回す。
途中まで追っかけてきていた男女グループも今では帰ってくれたみたいだ。
3人で歩くのでいつもよりゆっくり目のスピードで歩いている。
「……」
何か話すことはないか……あっ。
俺はバックの中からカレーパンを取り出す。
「はい、日舞カレーパン買ったからあげるよ」
「え、くれるの?」
「うん」
日舞の表情がぱあ! と明るくなる
「あ、り、が、とうっ! うーれしいーなー!えへへへ」
元気いっぱいに喜んでくれる。あげたこちらとしても嬉しくなる。
「鈴白にもって何かっていいのか分からなくてこれも置いてあったやつなんだけど」
バックからクリームパンを出して鈴白に渡した。
「あらありがとう」
「嫌いだったか?」
「別に嫌いじゃないわ」
日舞はカレーパンをむしゃムジャ食べ一瞬で食べきった。鈴白はゆっくり食べている。
「……」
「ねぇ芯葉だけずっと傘持ってたら辛くない?」
これらを見て日舞が心配してくれる。
「いや平気だけど」
正直言うとだいぶ痛くなってきている。腕を上げるのがしんどい。でも女子に傘を持たせて相合傘というのはなんか恥ずかしかった。
「無理してるでしょ! 分かるよ、だって私友達と相合傘やって持ったことあるけど地味にきつかったもん」
成る程、バレてたみたいだ。俺は諦めて白状する。
「実は結構腕が痛い」
「もしかして持たれるのが恥ずかしいの?」
「うっ」
鈴白が俺の本音を貫いてきてつい反応してしまった。
「そうなのね…」
日舞が訪ねるように言ってくる。
「ふーん。それなら、花の栄養を摂取するのに一緒にいたほうがいいっていうのがどれだけ近くかは分からないけど」
そう言って傘を持っている俺の手を握って支えてきた。
「なっ」
思わず体が反応する。
「これくらいやったら呪も花の力でどうにかなるんじゃない?」
そう言うが日舞の顔はみるみる赤くなっていく。
鈴白もその上から手を被せてきた。
「こう?」
「……」
緊張の余り何も言えない。
「どう楽になった?」
顔を赤らめた日舞が聞いてくる。
「うん、めっちゃ楽になったよ…」
「……」
その後俺達は手を被せながら傘をさし、ザーザーいう雨の中を無語で家まで帰った。
そして今日この日の雨に俺は感謝した。




