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悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【事件簿】数話で完結する短編集

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侍女の悩み事(4)

 マルティウス伯爵家には平和が戻った。

 そう思っていました。

 実際のところ、平和と言っても、のんびり穏やかな日々とは違います。

 ティナお嬢様の婚約式やらサファイアティーのイベント。

 旦那様もさらに交易のお仕事で新規の取引も始まり、忙しい日々を送られています。

 多忙ではあっても、旦那様が魔女と呼ぶアマリア様とその娘もいなくなり、不吉な出来事とは無縁になった――そう誰もが思っていたのですが……。


「今日もまただわ」

「本当に」

「一体、誰なのかしら?」


 朝からメイドたちが離れの裏口でヒソヒソと話をしています。


 マルティウス伯爵家には母屋の他に離れがあり、ここは来客用に使われています。使用人たちの部屋はこの離れの屋根裏部屋が割り当てられていたのです。そして離れの厨房や食堂、浴室などを使うことを、マルティウス伯爵は許可してくれています。言ってみれば使用人専用の設備があるようなもので、みんなこの待遇に喜んでいました。


 そんな使用人たちが暮らす離れの建物。その裏口で最近、不審な出来事が起きているのです。


「こんな嫌がらせをするなんて……しかも私たちはただの使用人よ? マルティウス伯爵に恨みを持つなら、使用人にこんなことをしても無駄よね?」

「もしかしてグルゼなんじゃないかしら? あの子の出身地のブード(とう)では動物の骨を使った呪術があるのでしょう? これ、呪いなんじゃないの? 仕事をクビにさせられた腹いせ!」

「でもグルゼはアマリア様の息がかかっていたとはいえ、本人は何も分からず、ただ従っていただけみたいだからと、紹介状は書いてもらえたのでしょう?」

「そうね。マルティウス伯爵家でメイドをしていた、そして紹介状もあるなら、次のお屋敷仕事は見つけやすいはずよ。腹いせにこんなものを毎朝ばらまくなんて。時間の無駄よ」


 裏口で起きている不審な出来事、それは動物の骨、虫の死骸、釘、ガラス片などがある日突然、置かれるようになったのです。最初は虫の死骸だったので、たまたまそこで虫が死んだのだと思い、特に報告されることもなく、掃除の際に片づけられました。その翌日は釘です。まだ新しい釘で、先端も鋭く尖っていました。釘を入れた袋に穴でも開いていて、落ちたのではないか。三本の釘は回収され、落とし主は探されたようですが……。見つかることはありませんでした。


 そこから血が付いているようなガラス片、さらに動物の骨などが見つかります。さらに人の叫び声を聞いた、なんてことを言い出す人も現れました。すると離れの使用人たちは何者かが嫌がらせをしていると考えるようになったのです。


「あら、何をしているの、こんなところで! 早く母屋に行って、旦那さまたちの朝食の用意、掃除も始めなさい」


 メイド長が出てきて、メイドたちは「「「はい、メイド長!」」」と慌てて母屋へ向かう。


「……またなのね。まったく、どこの誰だか知らないけれど、暑さが収まったからと言って、こういう悪戯は困るわ」


 そう言いながらメイド長は箒と塵取りを手に裏口に落ちている虫の死骸を片付け始めました。


 ◇◇◇


「ハンナ、どうしたの?」


 母屋でティナお嬢様の朝の身支度を手伝っていました。

 ドレッサーの前で座るお嬢様の髪をブラッシングしていたのですが、私はグルゼは今、どうしているのだろうとぼんやり考えていたのです。どうやら考えごとをしていると気付かれたようで、質問されてしまいました。


 鏡に映るティナお嬢様の美しい碧眼が私をじっと見ています。


 艶のあるブロンドに、ビスクドールのような肌。ローズ色の唇に頬をしたティナお嬢様は女神のようにお美しいです。そのお嬢様が、重ねて私に声をかけてくださいます。


「ハンナ。もし何か困っているなら、相談してほしいの」

「お嬢様……」

「マッセ氏の暴力は常習性があり、危険と見なされたわ。従来家庭内暴力に近いことに警備隊が介入することはほぼなかった。でもライズ隊長とアレス様のおかげで、半年間の禁固刑を科すことができた。男爵位の件も白紙撤回になり、マッセ氏の銀行もライバルに押され、彼が刑期を終える頃には倒産する可能性が高い。そうなったらもうマッセ氏は再起不可能よ。この街にもいられなくなる。財産は倒産した銀行の後処理に回されるだろうし、きっと地方にでも逃げて行くはずよ」


 まさにティナお嬢様の言う通りで、マッセ氏が経営していた銀行は大変な状態になっていました。マッセ氏が牢屋にいる間に倒産する……新聞の見立てではそうなっています。


「それにハンナは公爵夫人付きの専属侍女になる。アレス様は護衛の騎士を私につけてくれるし、彼らとハンナも一緒に行動するのだから、身に危険が及ぶことはないはずよ。もし獄中から恨み言の手紙でも送って来ているなら、今すぐやめるよう、アレス様に動いてもらうわ」

「お嬢様、お気遣い、ありがとうございます。マッセ氏からは一切、連絡はありません。実はマッセ氏ではなく、離れで不可解な出来事が起きているんです」


 こうして私はティナお嬢様に、離れで起きている嫌がらせについて話すことになりました。

お読みいただき、ありがとうございます!

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