8:深まる仲、気になる謎
こうして『悪女は絶対に許さない』のメインキャラであるアマリアとヴィオレット親子に、思いがけず出会うことができた。
ヴィオレットは物語の冒頭で見た通りで、天使みたいな美少女だった。年齢も今の時点ではまだ十四歳だが、私より年上かと思うほど、大人っぽい。やはり西洋人は年齢より見た目がかなり上に見える。
そんな大人びた雰囲気のヴィオレットであるが、美少女だからとツンとすましていることもなく、ニコニコと笑顔。できれば仲良くなって、味方になって欲しいと思ってしまう。
一方のアマリアもまさに聖母のようで、優しかった。私が母性に飢えているのではと考え、まるで母親のように抱きしめてくれたのだ。あれにはとても癒された。できればこのまま良好な関係を築き、もしもの時はやはり味方になって欲しいと考えてしまう。
(ううん。味方うんぬんじゃダメね。そもそもの父親の毒殺を阻止しなければならない。真犯人を見つけなきゃ!)
「ティナ、どうしたんだ? もしかして眠くなったかい?」
ヴィオレットに挨拶をして、レストランを出て馬車に乗りこんでからずっと。私はアマリアとヴィオレット親子のことを考え、無言になっていた。父親は急にだんまりとなった私を心配し、声を掛けてくれたのだ。
「満腹でぼーっとしてしまいました。あ、お父様。私、レストルームで素敵な女性と出会ったんです」
私はレストルームで会ったアマリアのことを父親に話す。
前世で物語の冒頭を読んでいた私は、アマリアと、父親が会ったヴィオレットが親子であると知っている。だがそのことを明かすことはできない。なぜ二人が親子であると知っているのか?──問われたら答えようがない! よってあくまでここではアマリアとヴィオレットの関係性は明かさず、話すことになる。ただ、アマリアが優しい女性であると父親に伝えるにとどめた。
よって後日、伯爵邸へアマリアとヴィオレットが揃って遊びに来て、父親は大いに驚くことになる。
「まさかお二人に、ティナと僕は、レストランで別々で会っていたとは! なんとも奇遇ですね!」
そんな偶然に父親はビックリして、何か運命的なものを感じたようだ。すぐにアマリアとも打ち解ける。
こうしてアマリアとヴィオレットの親子は、頻繁に伯爵邸へ足を運ぶようになる。
蝶の標本で父親とヴィオレットはすっかり意気投合していた。それもあり、父親はみんなで出掛けることを提案した。王都郊外へ、ピックニックと蝶を捕まえに行くことを。
その日は朝から晴天だった。ところが昼食の直後に天気が急変し、大雨に見舞われることになる。
私とヴィオレットは大きな木の洞で雨宿りをしたが、父親とヴィオレットは洞窟で雨をしのぐことになった。
この時、父親とヴィオレットは子育てについて深い会話をしたようだ。その日以降、父親は子供に母親が必要であることについて、真剣に考えるようになった。
一方の私は、アマリアとヴィオレットと仲良くしながら、父親がなぜ毒殺されることになったのか。その原因を探ることになる。
この世界では刺殺は怨恨であることが多く、毒殺は謀略の要素が多分に含まれると言われていた。強い感情に基づくなら、刺殺になるだろうが、毒殺は計画された殺人になる。静かなる犯罪であり、怨恨よりも、政治的な陰謀、権力争い、経済的な競争が犯行動機に挙げられることが多かったのだ。病死に見せかけることもできるので、密かにライバルを排除したい時にも、毒が使われる。
そこで父親が手掛けている貿易業でライバル関係だったり、父親の業績が伸びることで、苦渋を飲まされていたりする人物がいないか。調べることにしたのだ。
その結果、結構な人数がいる!
成功者に敵なし……なわけがなかった。
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次話は20時頃公開予定です~
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