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悪女転生~父親殺しの毒殺犯にはなりません~  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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39:干渉

 デビュタントから屋敷へ戻る馬車で、アマリアは隣に座るトムにもたれ、爆睡。トムもこれには「参ったな」と表情に出ていたが、邪険にはできないので、そのままにしていた。


 一方のヴィオレットは、このデビュタントでどんな令息と話したのか、誰が一番かっこよかったのかなどを話しまくる。自身のデビュタントではないのだが、ヴィオレットはすっかり自分が社交界デビューを飾った気分になっていた。


 そんなこんなで屋敷へ帰宅すると。疲れがドッと出てくる。何せ朝から動いていたのだ。疲れて当然。


 ということで早々にドレスを脱ぎ、入浴済ませ、休むことになった。


 コルディア公爵からもらったハンカチはヴィオレットに見つからないよう、引き出し奥に隠すことにした。


 そして迎えた翌日。


 トムは役目を果たしたので、帰ることが決まっている。もっと滞在すればいいのにと思うが、トムにはトムの都合もあるのだ。それを邪魔するわけにはいかない。それにアマリアがトムにべたべたするのも気になってしまう。父親が不在中に、叔父に擦り寄るなんて……。だからトムが帰ることを、私は止めるつもりはなかった。


「ティナ。聞いたわよ。昨晩、アレス・ウル・コルディア公爵に迷子になったところを助けてもらったのでしょう?」

「あ、はい」


 私はまだその件をアマリアには報告していない。まさに今、この朝食の席で話すつもりでいた。


 相手が公爵となると、その場で御礼を伝えても、手紙でも感謝を示す必要がある。なんならちょっとした贈り物を添えてもいいだろう。そしてその手紙は私が書いても、アマリアと、ヘッドバトラーもチェックすることになる。本当は父親が見ればいいのだけど、不在なので仕方ない。


 たかが迷子の道案内でも、貴族であると、特に助けた相手が公爵ともなると、家門全体の重大事と考えられるのだ。


 ということで当然の義務として報告するつもりでいたが、アマリアは既に知っている。これはヴィオレットがアマリアに話したのだろう。


「分かっていると思うけど、公爵への御礼の手紙をすぐに用意するのよ。この朝食の後、即書きなさい。手紙だけでは感謝の気持ちを伝えきれないから、会いたいと書くの。公爵邸を訪ねたいと。母と妹も同行しますと書いて頂戴」


 これには「えっ……」と声に出しそうになるが、我慢だ。


 公爵邸を訪ね、御礼を伝えること。これは貴族社会のマナーとして何も問題ない。だがヴィオレットまで同行するの……?というのは前世の感覚。


 この世界では、貴族の結婚が家同士のつながりを深めるものであるように。御礼を伝えるために家族全員で訪問することは……変なことではない。一族として感謝を示すことになるからだ。


 もしアポなしで家族全員で押し掛けるようなことがあれば、それは失礼極まりないことになる。だがちゃんと約束をとりつけ、家族総出で訪問することは……決して悪いことではなかった。


 ただ、私は前世感覚がある。さらにヴィオレットがコルディア公爵に興味を持っているところが……不安だったのだ。


 コルディア公爵はぐいぐい言い寄る令嬢やマダムに困っていた。若くして公爵となり、今は恋愛どころではない。だがヴィオレットはアマリアから「いい相手を見つけなさい」と言われ、育ったのだろう。さらに年齢も年齢なので、異性に興味津々なのだ。


 もしヴィオレットにぐいぐい言い寄られたら、コルディア公爵は困惑すると思う。それにヴィオレットは私と同伴となるのだ。私へのコルディア公爵の印象も、とても悪くなる気がする……。


「ティナ、聞いている?」

「あ、はい。お母様。分かりました。朝食の後、すぐに手紙を書きます」


 ここはこう返事をするしかない。どの道、私が書いた手紙はアマリアが見るのだから。


「コルディア公爵と言えば、若き公爵として王都では人気なんだろう? でも当の本人は女性を寄せ付けない。まだ十八歳なのにワーカホリックとは。僕がその年齢の時は恋に夢中だったのに」


 トムの言葉にヴィオレットとアマリアから笑いが起きる。


「ただ苦労人だよな。母親は彼を産むと同時で亡くなっている。そして彼が幼い頃に父親は急死した。兄弟もいない彼は六歳で爵位を継ぎ、叔父が後見人となった。その年齢で両親がいないなんて。そんな苦労人には、絶対に幸せになってもらいたいよな。ちゃんと心から愛する人と結ばれて。今度こそ、家族の存在を感じる人生を送って欲しくなる」


 さっきは笑っていたヴィオレットとアマリアだが、今は何だか表情が硬くなっている。


 そうなる理由を分かってしまう。


 コルディア公爵を訪ねる理由。アマリアはヴィオレットを売り込むためだ。ヴィオレットは彼を気に入っている。婚約者になりたいと願っている。


 迷子の私を助けてくれた御礼なんて二の次。二人とも自分の欲を満たすことしか考えていない。


 トムの今の言葉は、そんな二人を牽制するように、当事者には聞こえたのだろう。


「うん? どうしたみんな、無言になって??」


 不思議そうな表情でトムがアマリアとヴィオレットを見た。

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