旅が始まる少し前
この世には無数の宇宙、世界が存在している。どのくらい存在しているのかはもはや定かではなく、今こうしている間にも世界というものは誕生している。
一つのくくりで世界とまとめているがその実態はそれぞれ異なっている。一番多いのは人類が発展している世界ではあるが人類以外が発展した世界ももちろん存在する。
ただ一つ共通のルールがあるとすれば神、というものが存在していることである。そもそも神とは何か。それは他の生命体を超越した存在である。そんな神の役割は世界の管理である。生命を循環させ世界を一定の状態に保つそれが管理者としての役割だ。それ以外にはこれといった仕事などは存在しない。世界に干渉しない神もいれば干渉する神もいる。神も十人十色であるのだ。
そんな世界を管理している神たちだがそんな神を統率するものが存在している。あらゆる神の頂点に立ちすべてを支配する存在、それは究極神そう呼ばれている。なぜ究極神と呼ばれているのかは定かではないが最高神だと複数神がいる世界でトップの神が最高神と呼ばれることがあるから被らないようにするためだとか。
まぁこれまでの話を簡単に言うと社長が究極神で社員が他の神、その中でも平社員や部長、専務など階級で別れていて仕事内容は管理、役職が上がるごとに管理できるエリアが広がる。そう認識してもらえばいい。
すべでを統率するもの究極神、そんな究極神が何をしているのかというと・・・・
「あー暇だ」
何もせず、暇を持て余していた。
「何もすることがない。あー暇だー暇だ―」
「うるさいですよ」
暇すぎて叫んでいたら怒られてしまった。
「部屋も真ん中で寝転がらないでください。邪魔です。邪魔です」
「わざわざ2回も言わなくてもいいだろ。しかも2回目は殺意こもってたぞソフィア」
「本当に邪魔だったのでつい」
機嫌を損ねたら本当に殺しに来そうな俺の銀髪メイド、ソフィア。ある日メイドが欲しいなーと思ってあらゆる世界を探しに行って連れてきた。一応言っとくぞ、別に誘拐してきてないからな。同意のもとだから。
ソフィアは俺が頑張って探してきただけあって強さはそこらの神を軽く凌駕している。
「暇だ暇だって仕事を楽にしたのはご主人様自身ではないですか」
「まぁそうなんだけどさ。もちろん忙しいのは嫌なんだけど、暇なのも嫌というか」
俺の仕事宇宙の管理だが、実際は存在しているものすべての管理。つまり世界の管理も含まれている。昔は俺自身が世界を回り実際に世界が循環しているのかを確認していた。それだとあまりに忙しすぎたので世界を管理している神に世界について報告書を書けとお願い(強迫)して書かせた。そして俺の仕事は送られてきた書類を読むだけとなった。最初はあまりの分量に気絶しそうになったが俺の直属の部下を総動員して読んだ結果たったの数百年で終わってしまった。
そしてそれ以降暇になってしまったのだ。最初は仕事が終わったって喜んで遊んでいたが次第に飽きてきて今に至る。
「なんかいいアイディアないー?」
「はぁ、そうですね。旅にでも行かれたらどうですか?」
「旅?」
「そうです。ご主人様は仕事で世界を訪れることはあってもプライベートで行かれたことはありませんでしたよね。仕事で行くのとプライベートで行くのはまた違ったものになるかと」
旅、まぁ旅行か。確かに言われてみればしばらく、というか全く行ってないな。仕事で世界をめぐってたからある程度見回ったらすぐに別の世界へと移動していたからゆっくり見て回ってる時間なんてなかった。たまに100年ほどいた世界もあったがそんなのはかなり少ない。
「そうだな。旅、いいな。ゆっくり世界を見てみるのもいいのかもいいかもしれないな」
それにまさかとは思うが噓の報告書を出している愚か者がいるかもしれないからな。
「それでは旅に出られるということでよろしいですか?」
「ああ、旅に出ることにするよ。ゆっくり世界を見てまだ見たことないいろんなものをこの目で見てみようと思う」
「いつ、出発なされますか?」
「旅は即決即断今すぐに出発するよ」
「分かりました。私はついていったほうがよろしいでしょうか?」
「いや、一人で行ってくるよ。ソフィアも来たら甘えちゃうからな」
「そうですね。いつも私が食事、洗濯、掃除身の回りのことすべてやってますからね。私に甘えないで生活することも学んでください。そして私を少しでも楽させてください」
それを言われると少し心が痛む。俺も手伝ったりはするが家のことはほとんどソフィアが管理しているからな。
「はい、そうします。というかメイドなんだからそれが仕事でしょ」
ソフィアはメイドだ。普通のメイドがどのようなものかは知らないがそこまで違うとは思えない。だからそう言われる筋合いはないと思うのだが。
「はぁ考えてみてください。私はご主人様の加護のおかげであなたと同じ永遠を生きるものなんですよ。永遠と身の世話をするこっちのこと考えたことがありますか?」
た、確かに・・・・ソフィアは俺の加護で年も取らなければ病気にかかることもをない。誰かにやられない限り死ぬことはないのだがソフィアを殺せる存在なんてほんと片手で数えるくらいしかいない。その相手も全員顔見知りだから敵対することなんてのはまずありえない。つまりソフィアは永遠と俺に使えてくれるわけだ。それを考えたら頭が上がらないな。
「十分に考えておりませんでした。今までのご無礼謝罪します。生意気言って申し訳ございません」
「分かればいいです」
「そうだな、いい機会だ。ソフィアお前が望むなら俺に使えるのをやめてこれから自由に生きてもいいんだぞ」
長いこと生きてると考えというのは変わるものだ。最初はもちろん同意のもとだったが、時がたち今では嫌々俺に付き合ってくれてるのであるとしたら主従関係を終わらせたい。お互いのためにも。
「はぁ、冗談ですか?だとしたら笑えないですよ」
「改めて考えてみると、永遠を生きるのは辛いことだ。それをお前に無理強いしてるんじゃないかって考えちゃってな」
永遠を生きるのはただでさえ辛いことであるのにしかも嫌なやつに無理やり従ってるのだとしたらそこは地獄のほかない。俺の加護をなくせばソフィアは他よりも多少長い気はするだろうがいづれは死を迎えることができる。
「私はあの日ご主人様に永遠に使えることを誓いました。その思いが変わることはそれこそ永遠にありませんので」
「なるほど、ソフィアは俺のことが好きすぎて離れたくないと。まったくソフィアはツンデレだなぁ。そんなにツンツンしてても心の底からは俺のこと好きなんだから」
そうやってふざけてたら、何かが切れる音が聞こえた。この音はあるときによく聞こえるものだ。それすなわち、ソフィアが切れたときに
「はぁ本当は今すぐにでも殴りたいのですが殴れないのでやめておきます。本当に厄介ですね。ご主人様の能力、無反撃無反撃それさえなければ今すぐにでも殴るのですが」
無反撃無反撃、俺の持つ能力の一つでありその効果は、俺を対象とした範囲に攻撃を受ける時その攻撃を無かったことにして攻撃者に本来起こりえるダメージを与える。例えば、俺の目の前に爆弾があったとしようそれが爆発する時、その爆弾は爆発しなかったことになりその代わり仕掛けた本人が爆発するそう言うことだ。そしてもう一つ、反撃で与えるダメージ倍率は俺が調整できる。ダメージをそのまま返すこともできるが威力を2倍、3倍にして跳ね返すこともできる。この能力の突破方法は正直俺でもよくわからん。仮に突破できたとしても俺自身にダメージを与えることなんてそうそうできないが。
「我ながらチート能力だと思うよ。ま、今は発動してないけど」
そう言った瞬間、ソフィアの拳が目の前に迫ってきてた。そして悟。
あ、これ避けられない。
そしてその拳が俺の顔面に炸裂する。そのまま壁を突き破り庭の方まで吹き飛ばされる。木にぶつかりようやく止まったら体を起こし吹き飛ばされた道を戻り部屋に戻る。
「痛てーよ!全力で殴っただろ!」
「ふぅ、人を殴るっていいですね。ストレス解消にいいですね」
「聞けよ!」
「はぁ、もとはと言えばご主人様がふざけたのが原因なんですから。それに日頃溜まってたストレスが爆発したものだと思ってください」
「いやいや、さっき俺に永遠に使えたいって言ったじゃん。それならストレスなんて溜まらないでしょ」
「それとこれとは別なので。愛し合う夫婦でもストレスがたまるのと同じです。いくら尊敬、信頼してる人でもずっと一緒にいればストレスはたまります」
「言われてみると納得するな」
「納得されたなら定期的に殴らせてください。いいストレスの解消だと気が付いたので」
「別に俺じゃなくていいだろ!人形とかでも殴ってろよ」
「それではお人形が可哀想ではないですか」
「その言い方だとまるで俺が可哀想でないみたいだな」
「はい。そもそもさっきも全力で殴ったのに軽く傷がついてるくらいじゃないですか。しかももう回復していらっしゃる」
「いや、痛いものは痛いんだが。さっきもかなり痛かったんだから。まあいい、俺はそろそろ行くよ」
このまま居るとまた殴られそうな気がするからすぐさま撤退だ。ただその前にさっき壊した壁の時間を戻し元に戻しておく。
「分かりました。留守番はおまかせください」
「あーそのことだけど、いい機会だしお前も旅に出てみろよ。たまにはお互い羽を伸ばそうぜ」
「ですが・・・・」
「家なら大丈夫だろ。俺の家に侵入する愚か者なんているわけないし。仮にいてもそしたらすぐ戻ってくればいいんだから」
「分かりました。ご主人様がそうおっしゃるのなら私も旅に出ようかと思います」
「じゃ俺は一足先に行くよ」
「行ってらっしゃいませ、ご主人様」
「ああ、行ってきます」
俺はそう言ってからゲートを作り出す。聞く先はランダムに設定してありどこにつながっているかは入ってみないと分からない。
楽しい旅になることを祈りながら俺はゲートをくぐるのだった。
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