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第7話:もう耐えられません

「マーガレット、令嬢たちと食べないなら、僕と一緒にご飯を食べよう」


 私の元にやって来たのは、ジェファーソン様だ。


「いいえ、結構ですわ。それでは失礼いたします」


 ペコリと頭を下げ、ジェファーソン様の元を去る。後ろで令息たちが


「せっかくジェファーソンが気にかけてくれているのに、性格の悪い女だな」


「ジェファーソンもあんな女が婚約者で可哀そうに」


 と、私に対する暴言が聞こえるが、そっとしておいた。


 どうして私がこんな目に合わないといけないのだろう。悔しくて1人校舎裏で涙を流す。でも、泣いていても始まらない。何とか2人の不貞行為の証拠を手に入れないと。


 そんな思いから、翌日もその翌日も、毎日学院に通った。とにかく2人の不貞の証拠を掴みたい、そんな思いから、2人の後を付けたりしていたが、やはり警戒しているのか、2人で会うどころか、話しすらしていない様だ。


 ただ、私の不審な姿が気に入らなかった令嬢に


「まだマリン様とジェファーソン様の仲を疑っているのですか?本当にしつこい女ね。そんな性格だから、友人の1人もいないのですわ」


「さすがに2人の後を付け回すだなんて、気持ち悪いですわ。マリン様、よくこんなのと友達でいましたわね。あまりにも酷いようでしたら、伯爵家に抗議文を出したらいかがですか?」


 そう言われた。これ以上マリンたちを尾行するのは無理がある。やっぱりあの時、証拠を残せなかった私が悪いのね…


 完全に孤立してしまった私は、ただただ辛い日々に耐えるしかない。そんな私を見たジェファーソン様が


「マーガレット、いつまで意地になっているのだい?いい加減僕を受け入れたらいいのに。独りぼっちは辛いだろう?君だって、もう僕たちが会っていない事くらいわかっているだろう?君は僕と結婚する道しか残っていないのだから、諦めた方がいい。さあ、僕と一緒に昼食を食べよう」


 ジェファーソン様が笑顔で私に話しかけて来た。でも私は、どうしても彼の顔を見ると、あの時の姿が脳裏に浮かぶのだ。


「申し訳ございません、ジェファーソン様。私はやはり、あなたを受け入れる事はどうしても出来ないのです」


 不貞を働いたあなたを、受け入れる事は出来ない。


「マーガレット嬢、ジェファーソンのどこがそんなに気にいらないんだよ。マリン譲と少し話をしただけで、ここまで拒絶するだなんて。こんな事は言いたくはないが、少し異常だぞ。一度医者に頭を見てもらった方がいいのじゃないのか?」


「おい、さすがにそれは言い過ぎだろう。でも、確かにマーガレット嬢って変わっているよな。俺ならとっくの昔に、婚約破棄しているところだよ。それなのにそれでも彼女に寄り添おうとするジェファーソンは、本当に尊敬するよ。マーガレット嬢、いくらジェファーソンが優しいからって、これ以上我が儘を言っていると、本当に大切な人を失うぞ」


 令息たちが次々と私に意見をする。この人たちに何が分かるのよ!本当の2人の姿を知らないくせに。


「皆、マーガレットは繊細なところがあるんだよ。僕はどんなマーガレットも受け入れるつもりだ。それに僕は、絶対に婚約破棄をするつもりはない。マーガレット、後7ヶ月もすれば、僕たちは結婚するんだよ。それだけは絶対に変わらない事実なのだから…」


「ジェファーソンはすぐにそう言ってマーガレット嬢を甘やかせるから、この女が調子に乗るんだよ。とにかくマーガレット嬢も、自分の置かれている状況を考えるべきだ!」


 そう言うと、令息たちが去って行った。


 “マーガレット、誰も君の味方はいない様だよ。いい加減僕を受け入れてほしい。これは君の為を思って言っているのだよ。そうだ、今度我が家に来てくれ。母上も君と一緒にウエディングドレス選びを楽しみにしているよ。いいかい、君がいくら僕を拒否しても、無駄なんだよ。いい加減無駄な事はやめるべきだね”


 耳元でそう囁くと、笑顔でジェファーソン様は去って行った。


 どうして…

 どうして私がこんな思いをしないといけないの?私が一体どんな悪い事をしたと言うの?


 悔しくて悲しくて胸が張り裂けそうで、そのまま馬車に乗り込んだ。もう嫌、貴族学院も学院の皆も、両親も誰もかれも嫌よ!


 もう二度とこんな学院になんて来ない!貴族なんてまっぴらごめんよ!こんな理不尽な思いをするくらいなら、私はいっその事…


 屋敷に着くと、そのまま部屋に閉じこもって泣いた。どうしようもない気持ちを一気に爆発させるように、声を上げて泣き続けたのだった。


※次回、ジェファーソン視点です。

よろしくお願いいたします。

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