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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私と君のおわり

『好きだよ』

恋に繋がるパスワード。

でも、あの時、三日月のネックレスを渡した君には言えなかった。

ただ、5年経った今でも言うべきだったかわからない。

行動でいいから示すべきだったのかな。

文化祭の後、全てが終わった。

届かなかった。

そして…

君はどういう気持ちで私の前にまた、現れたのかな。

私は親友だと思ってた。

先輩との恋も本気で応援してた。

最後の最後に残ったクエスト。

電話をもらった瞬間、それをしくじったことはすぐにわかった。

雪山で遭難した時みたいな、水から上がった金魚みたいなパニック状態。

泣きながら私に『会いたい』って。

だから私は家を飛び出した。

和菓子屋さんを曲がって。

コスモスの咲く君の家の庭を駆け抜けてさ。

玄関の先で君を見つけた。

温泉宿にいる中居さんのコスプレのまま泣いてる姿が今でも瞼に焼き付いてる。

私は…その時、もう友達じゃいられないって思った。

どこかで思いは同じだと思ってたのに。

私は君を抱きしめた。

強く。

君の震えを抑え込むように。

強く抱きしめた。

暫くして、ごめんね。って私がこぼした時、君は顔を上げた。

違う。

貴女は悪くない。

そう言って真っ直ぐに私を見つめる目。

眩しくて直視できなかったそれが、後ろめたさに変わっていた。

泣きそうだった。

辛い。

私に残った最後のクエスト。

口に出せばいい。

だが、その言葉が喉につまり、息苦しくなる。

視線が痛い。

不思議そうに、心配するように。

そんな優しい瞳で見つめないでほしい。

君が思うような私じゃない。

私は歪んでいるんだ。

君が歪めた。

そうだ。

君のせいだ。

君が歪めたんだ。

ゆっくり温めるべき感情のたまご。

それを君が歪めた。

さっきまで彼女を抱いていた手が首を掴みそうになっていた。

反射的にその手を彼女の背中で捉える。

何をしようとしていたのか。

考えたくもない。

ただあの時の私は、どの一線も越えられない臆病者だった。

訳のわからないまま、私は黙って君の家を出た。

拒絶したんじゃない。

ただ、もう限界だった。

親友を傷つけることも。

『好きだよ』と伝えることも。

全てがギリギリで。

歪んだ器に注がれる感情が溢れそうだった。

それから私は逃げるように上京した。

君に見つかりそうで帽子を被るようになった。

いまだに、あの時の一線だけは超えられそうにない。

やっぱり『好きだよ』って言えればよかったのかな。

でも、私にそんな資格はないんだ。

暖炉の火を一緒に眺めながら思う。

なんでまた…会ったんだろうな…

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