話の通じない王子に聖女はうんざりした
話の通じない人のとのやり取りに苛々して書いてしまいました(笑)
確かにね、人の理解力って個人差があると思うよ?
1を聞いて10を知る人だっているし、1を聞いて0.1しか理解しない人もいる。
0.1しか理解出来なくても何回も説明すればそのうち1になるし、1になるまで説明するよ?
「アーマディ!自らを聖女と偽り、愛らしいシャンティを虐げた罪を償ってもらう!婚約破棄だっ!!」
でもさぁ〜、1を聞いて−10位になる奴に何て説明したら良いかなぁ?
「ですからっ!私は教会に認められた聖女です。聖女だと偽っていない事は教会に確認していただければわかる事です。それに、シャンティ様とは顔を合わせた事すらありません!!あっ、婚約破棄は承りました。」
「教会が認めても王子であるオレは認めていない!だからお前は聖女ではない!それにシャンティを苛めておいて顔を合わせた事がないとは言い訳にもならないぞ!!オレを愛しているからって、オレの婚約者の立場を失いたくないが為に愛らしいシャンティを苛めやがって!」
教会が聖女だと認定した女性が聖女になると、この馬鹿……ラペル王子は知らないのかなぁ?
ちなみに、教会に認定されたのが男性なら聖人ね。
婚約破棄も受け入れるって言ってるじゃん。
婚約破棄して良いって言ってるのに、婚約者の立場を失いたくないって……矛盾してるのわかってるのかなぁ?
こんなのが次期国王よ?
「教会の聖女認定に王家は不可侵なはずですが?」
「オレは王子だからな。王子の言う事は絶対だ!」
馬鹿王子の後方に控えている側近達が私に必死な形相で土下座をしている事から、馬鹿王子の側近達は懸命に馬鹿王子の暴走を止めようとしたのね。
家門の為とは言え……こんな馬鹿の側近になってしまっただなんて、本当におかわいそうな人達だわ。
「アーマディ様!私はアーマディ様に苛められた事は怒っていません。一言謝って下されば、ラペル様もアーマディ様を国外追放にせず、罰は軽いものにして下さると仰っていました。」
いきなり出てきたあのおっぱいぼよよんな女の子は誰???
話の流れから察するにシャンティって娘なんだろうけど……本当に会った事ない人だわ。
「おぉっ!シャンティ!愛らしいだけでなく慈悲深いとはっ!!愛らしく慈悲深いシャンティこそが聖女に相応しい。」
ぶちゅーっと人前でキスをしてイチャつく2人に、私だけでなく周りの貴族達もドン引きしている。
何で周りに貴族達がいるかって?
「皆に宣言する!偽聖女アーマディとの婚約を破棄し、聖女シャンティを私の婚約者とする!!」
あーあ、教会で認めていない人物を聖女って言い切っちゃったよ。
今日はあの馬鹿が主催のパーティで、職権乱用しまくって貴族達を集めた訳ですよ。私の断罪と婚約破棄と、シャンティとの婚約の証人にするために!
「アーマディよ、速やかに聖女シャンティに謝罪するんだ!本来なら聖女を騙った罪で国外追放とするが、謝罪をすれば減刑を考えてやらなくもない!」
「あー……国外追放で良いっス。」
こんな馬鹿が王子の国にいてもお先真っ暗じゃん?
隣の国の王子様は賢王になると誉れ高いし、追放されたらそっちに行こう。
「シャンティに謝罪したならば、シャンティの代わりに聖石に聖なる力を注入する業務を与えてやろう!!それが罰だ!!」
人の話を聞いてねぇし。
馬鹿の!乱用に、耳が痛くなってきた。
「聖石に聖なる力を注入出来るのは聖女だけです。私が聖女でないのなら、聖石に聖なる力は注入出来ません。私は国外追放で結構ですので、聖石に聖なる力を注入するのは聖女であるシャンティ様がなさって下さい。」
聖石はこの国を護る結界の要。
聖女が聖石に聖なる力を注入するのは、結界を維持する為だ。
「どうしてそんな意地悪言うんですかぁ?聖石に聖なる力を注入するだなんて大役、私には重過ぎますぅ。」
大きな胸をぶるるんと揺らすシャンティに、バカの鼻の下がでろんと伸びた。
「重過ぎると言われても、聖女として1番重要な仕事ですので、聖女となられる以上はシャンティ様がなさって下さい。」
「アーマディ!オレの愛しいシャンティに重過ぎる仕事なんてさせられるかっ!!お前がやれっ!」
「聖石に聖なる力を入れられるのは聖女だけです。先程バ……ラペル王子は私を聖女だとお認めになられていないと仰っていたではありませんか。聖石に聖なる力を注入しろと言う事は、私を聖女としてお認めになられていると言う事です。」
聖女しか出来ない仕事をやれって言うって事は、私が聖女だってわかってんじゃん!
「聖女はシャンティだ!」
「なら、聖石に聖なる力を注入する仕事はシャンティ様にお願いなさって下さい。」
「愛らしいシャンティにそんな仕事はさせられん!お前がやれ!!そしてシャンティに謝れ!つまらない維持を張ってないで婚約破棄を受け入れろ。」
あー!もうっ!理解力の足りない王子だなっ!
イライラする!
「だぁーかぁーらぁー!国外追放で良いって言ってるじゃん!わかんないの?」
馬鹿なの?
婚約破棄も受け入れたじゃん!
「王子に向かってその口の聞き方は不敬だぞ!!」
王子だって言うんなら、もう少し人の話を理解しろよ!
懇切丁寧に説明してやってんのに理解できないバカ相手に、丁寧な口調を維持出来るかっての。
「よろしいですか?
1つ、私は国外追放で構いません。
1つ、婚約破棄は了承しました。
1つ、聖石への聖なる力の注入は聖女しか出来ません。
1つ、私が聖女でないなら、王子が聖女とお認めになられたシャンティ様にお願いします。」
ここまでわかりやすく言えばわかるだろう!
「もぅ〜!どうしてそんな事言うんですかぁ?アーマディ様がラペル様をお好きなのはわかりましたからぁ、アーマディ様は側室としてお妃様のお仕事をなさって下さいぃ。」
だぁーかぁーらぁー!どうしてそうなるの?!
もう、嫌ぁ。涙が出てきた。
「アーマディ……泣く程にオレを愛していたのか!」
違うって。
何なの?このバカ。
周囲の貴族達が1人、また1人とこの場を去って行く。
バカを見限って亡命するんですね?
わかります。
私も聖女として隣国の王子との交流がありましたので、私もその伝手で隣国へと参りましょう。
「アーマディ!お前がどうしてもと言うのなら、側室にしてやらないこともない!」
「遠慮しておきます。私は自主的に国外追放されますわ。」
これ以上バカに付き合ってると、私までバカになってしまうわ。
国を支える聖女と貴族に去られたこの国は、一体どうなるのかしらね?
数年後、愚王ラペルの治める国は地図上からなくなったとされる。
ラペルの治めていた国の国民達は、聖女であり、隣国の王妃となったアーマディに受け入れられたと言う。