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永遠の別れ ※ロクサーヌ=デュ=カロリング視点

■ロクサーヌ=デュ=カロリング視点


「…………………………」


 祝賀会も滞りなく終了し、私は今、エストライン王国の地下牢の前に来ている。

 もちろん、コレットに会うために。


 本来なら、友好関係を結んでいるとはいえ他国の人間が王宮のこのような場所に来ることは、到底認められるものじゃない。

 でも、祝賀会の継続をエストライン王国の国王陛下へ具申した見返りとして、マルグリット様が取り計らってくれた。


 何者かの毒によって倒れてしまったディートリヒ殿下のためにと、マルグリット様はこの私に協力するよう必死に訴えた。

 あのように愛する人のためにと気丈に振る舞われては、私もそれを断ることなんてできない。


「フフ……本当に、ディートリヒ殿下もマルグリット様も、お互いのことをこんなにも愛し合っておられるのですから、羨ましいかぎりです」


 弟のシャルルとの皇位継承争いを繰り広げている今の状態では、さすがに婚約なんてしている暇はないですが……私も、婚約者が欲しくなってしまいました。

 とはいえ、本来婚約というものは家同士……私の場合ですと国としての契約のようなもの。そのような間柄で愛などというものは望めないのが一般的なのですが、ね。


 それでも、あの二人は愛を育んだ。

 弟であるオスカー殿下との王位継承争いの最中であるにも関わらず……いえ、むしろそのことが、あの二人を深く結ばれるきっかけになっているのかもしれません。


「……そんなことを考えている場合ではありませんでしたね」


 気を取り直し、私はコレットが入っている地下牢の前へと歩を進める。


 そして。


「コレット……」

「ロクサーヌ、殿下……」


 コレットは牢の一番奥の角で、膝を抱えて座っていた。

 今、彼女の中にある想いは何なのだろうか……。


「少し、話をしない?」

「…………………………」


 そう話しかけるが、コレットは無言で私を見つめるだけ。

 なら、こちらから一方的に話をしよう。


「あなたがオスカー殿下とその従者であるオットー=コレンゲル子息と共謀した、今回の祝賀会におけるテロ行為については、結局オットー子息の単独犯という扱いになったわ」

「っ!? …………………………」


 私の言葉に、コレットが一瞬目を見開くけど、すぐに元に戻る。


「本当なら、コレットとオスカー殿下も処罰されるはずなんだけど、どうやらオスカー殿下とこの国の第二王妃が裏から手を回したみたい。まあ、そうは言っても国王陛下は怒り心頭みたいだけど。何故だか分かる?」

「……当然です。祝賀会をテロ行為で(けが)そうとしたのですから」

「残念、違うわ」


 コレットの答えに、私は苦笑しながらかぶりを振った。


「実はね? ディートリヒ殿下が、何者かによって毒殺されかかったの」

「っ!? ど、どういうことですか!?」


 さすがにこの話には驚いたみたいで、コレットは身を乗り出して大声で尋ねる。

 でも……この反応……。


「そう……コレットは知らない(・・・・)のね」

「は、はい……まさか、オスカー殿下が……?」

「少なくとも、国王陛下はそう考えているみたい。調べたところ、さすがに実の弟が兄を毒殺しようとしただなんて恥をさらすわけにはいかないから、オットー子息に押し付けた形だけど、オスカー殿下自身も幽閉されるみたい」


 そう……国王陛下の怒りはすさまじく、オスカー殿下が実の息子でなかったなら、間違いなく極刑にされていただろう、

 それを第二王妃の働きかけもあって踏みとどまり、極寒の地、マントサウザンの街の塔に幽閉されることになった。


 おそらく、もう一生日の目を見ることはないでしょうね。


 でも。


「……コレット、あなたとシャルルの間に何があるのかは知らない。でも……私は今でも、あなたを大切な友達だと思っているわ。それだけは、忘れないで?」

「…………………………」


 とりあえず、これで私の目的は果たした。

 コレットが毒殺に関与していないことは分かったし、言うべきことも言った。


 あとは……彼女自身が決めること。


 そう思い、私はコレットのいる地下牢から離れようとすると。


「……シャルル殿下が、おっしゃったのです」

「…………………………」

「私を……隣に置いてくださると……」

「……そう」


 コレット……あなた、シャルルのこと……。

 本当に、可哀想なコレット。


 シャルルは、コレットのことなんて欠片も情がないのに……。


 友の想いを踏みにじられた怒りに、キュ、と唇を噛む。


 そして。


「……さようなら」


 私は、友との永遠の別れを告げた。

お読みいただき、ありがとうございました!


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