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横恋慕① ※オスカー=トゥ=エストライン視点

■オスカー=トゥ=エストライン視点


「クソッ! 何なんだよアイツ! ただの“冷害王子”のくせに!」


 忌々しいアイツの婚約記念パーティーが終わり、僕は部屋に戻ってそこら中の物に当たり散らした。

 というか、最近まで何事にも無関心で、ただただあの気持ち悪い第一王妃に『はい』というだけの操り人形(・・・・)だっただろうに!


「オ、オスカー殿下、どうか落ち着いてください!」

「落ち着け? 落ち着けるわけないだろう! この僕が、あんな奴に馬鹿にされたんだぞ! 分かっているのか!」

「は、はいい!」


 侍従のリンダが止めに入るが、怒鳴りつけてやったら委縮してすぐに引き下がった。

 だったら最初から口を出してくるな!


「そもそも、マルグリットもマルグリットだよ! この僕が先に目を付けてたのに、どうしてあんな奴と婚約なんてしてるんだよ!」


 そう……僕は、あの琥珀色の瞳をした彼女……マルグリット=フリーデンライヒという女の子に、ずっと恋をしていたのに……!


 ◇


 彼女……マルグリットと出逢ったのは、僕が幼い頃の秋。


 僕は、あの(・・)マリーゴールドの花が咲き誇る庭園に向かって駆ける、妖精を見つけたんだ。

 白銀に輝く髪、琥珀色の瞳、肌も白くて美しくて、とてもこの世のものとは思えなかった。


 だから僕は、そんな妖精を捕まえようとして追いかけて行ったんだけど……追いついた時には、彼女は噴水で何かを祈っていた。

 それに何の意味があるのか分からなかった僕は、ただ、そんな彼女を眺めていた。


 でも……そんな祈りを捧げている姿も神秘的で……。


 そして、僕は思ったんだ。


 あの妖精を、僕だけのものにしたい。

 僕の部屋で飼いたいって。


 すると。


「……それは一体、何をしているのだ」


 よりにもよって、あの人形野郎が僕よりも先に妖精に声をかけたんだ。

 だけど、アイツは普段から周囲に無関心で、誰にも話しかけたりすることもないはずなのに……もしかして、アイツも妖精を狙ってるのか!?


 そう考えた僕は、慌てて横取りしようと(そば)に駆け寄ろうとしたんだけど、結局はアイツもボタンを引きちぎったかと思うと噴水に投げ入れて祈りを捧げ、そのままどこかへ行ってしまった。


「なんだよ……ただの気まぐれか……」


 本当に、人形野郎のくせに驚かせてくれるよ……。

 僕は今度こそと、妖精に気づかれないようにゆっくりと忍び寄った。


 だけど。


「そこで何をしている!」

「っ!?」


 妖精は王宮を巡回していた騎士に見つかり、そのまま連れて行かれてしまった。


「クソッ! なんで勝手に連れて行くんだよ! 僕が連れて帰ろうと思ったのに!」


 悪態を吐きながら何度も地面を踏みつけるけど、さすがに騎士に連れて行かれてしまうと、いくら第二王子の僕でも横取りすることができない。

 仕方なく諦め、僕は王宮の中へと戻った。


「あ……やあ、兄上」

「…………………………」


 たまたま見かけた人形野郎に、僕は笑顔を貼り付けて声をかけるけど、アイツはチラリ、とこちらを見るだけでそのままどこかへ行ってしまった。


 その時。


「マルグリット、帰るぞ」

「……はい」


 あの妖精が、大人の男と一緒に王宮から帰ろうとするところに出くわした。

 だけど、この男……確か、この国の大臣でフリーデンライヒ侯爵だっけ……。


「あはは、はじめまして!」


 僕は人懐っこい笑顔を貼り付け、男と妖精の前に飛び出した。


「これはこれは……オスカー殿下、ご機嫌麗しゅうございます」

「あ……王国の星、オスカー殿下にご挨拶いたします」

「あはは、そんな堅苦しい挨拶はいいよ。それより、君は誰だい?」

「はい……マルグリット=フリーデンライヒと申します」


 ふうん……マルグリットか……。


「そうか。マルグリット、よろしくね」


 僕は右手を差し出し、握手を促す。

 なのにマルグリットは、手を取らずにカーテシーをした。


 少しムッとしたものの、彼女のその可愛さに見惚れてしまい、すぐにどうでもよくなっていた。


「……殿下、それでは失礼いたします」

「失礼いたします」


 そう言うと、二人は王宮を出て行った。


「……ディートリヒ様」


 マルグリットが、そんな呟きを残して。

お読みいただき、ありがとうございました!


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