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パーティーの開宴

「確認いたしましたが、マルグリット様は支度を終え、中でお待ちです」

「分かった」


 マルグリットの部屋の前に着くと、私はハンナに中の様子を確認してもらった。

 さすがに支度中であるのに中に入っては、彼女に迷惑がかかってしまうからな。


「マルグリット」


 扉を開け、部屋の中に入ると。


「あ……ディートリヒ様……」


 そこには、まるで女神と見まがうほど美しいマルグリットがいた。

 長い白銀の髪をハーフアップにまとめ、その唇にひかれているルージュが透き通るような白い肌によく映えている。


 耳と胸元には、彼女の髪と同じように輝くダイヤのイヤリングとネックレスを身につけ、この日のために用意しておいたマリーゴールドのドレスをまとう姿は、その琥珀色の瞳とも相まって、まさに今、私の目の前で可憐に咲き誇っていた。


「そ、その……」

「あ、ああいや、すまない……君の美しさに、思わず固まってしまった……」

「ふあ!?」


 はは……相変わらず、可愛らしい声と仕草だ。


「……ディ、ディートリヒ様。この度はこのような素晴らしいドレスをご用意いただき、ありがとうございます」


 優雅にカーテシーをしながら、マルグリットは感謝の言葉を告げる。

 だが、これから行われるパーティーに緊張しているからか、その表情は硬く、彼女の不器用な面が出てしまっている。


「マルグリット。間違いなく、今日パーティーに参加する者の中で、君より美しい者はいないと断言できる。だから、そのように緊張する必要はない」

「ふああああ!?」


 私の言葉で、またもや彼女は可愛い声を漏らした。


「べ、別に緊張などしておりません」

「そうか、それならよかった」


 少し身を乗り出し、マルグリットがそう強調する姿を愛らしいと思いつつ、私は満足そうに頷いてみせた。


「ディ、ディートリヒ様……」

「む、なんだ?」

「そ、その……そのような素敵なお姿で、そのように笑顔をお見せいただくのは、反則……です……」


 マルグリットは消え入るような声でそう言うと、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

 ……そのような姿を見せておいて、私のほうこそ反則だと言いたい。


「コホン……では、まだ開始までお時間もありますので、お茶でもお飲みになられますか?」

「あ……う、うむ、そうだな」

「お、お願いするわね……」


 咳払いするハンナにそう提案され、私とマルグリットは気まずくなりながら、お茶を頼んだ。

 それにしても、いつも気安いハンナはともかく、ノーラまでそのように苦笑することもないだろうに……。


 私は侍女二人を見やりながら、深い溜息を吐いた。


 ◇


「殿下、マルグリット様、そろそろお時間です」

「そうか」


 マルグリットとお茶をしながら談笑していると、ハンナが知らせてくれた。

 さあ、私達のためのパーティーの始まりだ。


「マルグリット……行こうか」


 私は席を立ち、マルグリットの前で(ひざまず)き、右手を差し出す。


「はい……どうぞよろしくお願いいたします……」


 さすがに一週間もこのようにしていると、マルグリットも諦めたのか今では素直に手を取ってくれる。

 このまま、少しずつこうやってお互いの壁を取り除いていって、素直な本当の彼女が……彼女の笑顔で(あふ)れる毎日にしたい。


 そして、私達は今日の会場である王宮内のホールへと向かう。


 その途中。


「ディートリヒ様……実は、一つお尋ねしたいことがあったのです……」

「? どうした?」

「はい……今日のドレス、どうして色をマリーゴールドにされたのですか……?」


 マルグリットは琥珀色の瞳を潤ませ、私をジッと見つめる。


「……君と初めて逢った時、庭園に咲いていた花の色だからだ」


 私は恥ずかしくなり、少し顔を逸らしてそう告げた。


「ディートリヒ様……私は、やはりあなた様と婚約できて……あなた様を好きになって、本当に幸せです……!」

「それは私の台詞(セリフ)だ。また(・・)私を選んでくれて、ありがとう……」


 琥珀色の瞳から(こぼ)れる一滴(ひとしずく)の涙を、私は人差し指ですくうと、その指にそっと唇を当てる。


 私とマルグリットは、お互い幸せな気持ちでホールの手前までやって来ると、ホールから聞こえる賑やかな声が聞こえ、使用人達がせわしなく働いていた。


「ディートリヒ、マルグリット」


 後ろから、国王陛下と二人の王妃が現れ、声をかけてきた。


「国王陛下、本日は恐悦至極にございます」

「うむ。今日は二人が主役、存分に楽しむがよい」

「ありがとうございます」


 私とマルグリットは、嬉しそうに頷く国王陛下に恭しく一礼する。


「では、参るか」

「「はい」」


 国王陛下、そして二人の王妃がホールに姿を見せた。


「マルグリット……行こう」

「はい」


 私は、緊張しながらもニコリ、と微笑むマルグリットと共に、王国の全ての貴族が見守る中、(まばゆ)い光を放つホールへ入った。

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