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その悪役令嬢、天下無双の武神になりて。  作者: 卑下流
第一章:サレス・レディールは死んだ。
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決意




「リンゴを取ってきたぞ、ミーシャ」


「その辺の奴だろー?

 食べれるのか??」


怪訝な顔を浮かべる

ミーシャにこぶし大の果実を投げると

ふらつきながらも何とかキャッチした。


「さっき食べてみたが

 問題ない」


座ってうとうとしている

ヴァルムの口にリンゴを近づけると

眼をかっぴらいてリンゴを

ムシャムシャと食べだした。


「アーラの貴族の娘は随分と野生児なんだな」


「いや、多分私だけだと思うぞ」


「まーそうだろうな。

 …いや、だから何で僕の隣に

 …何でこんなにくっつくんだよ?」


「ここからならミーシャの綺麗な顔が

 良く見れるだろう?」


「はぁ~~~??」


口は素直ではないが

距離を取るわけでもないし

アホ毛がぴょこぴょこと動いている。


碧白い美しい髪に

月光を反射する水面の様な煌めく瞳

色白で整った顔。


「ミーシャは妖精みたいだな」


「妖精?妖精は初めて言われたな」


「他には何て言われてるんだ?」


「大体の連中には天使とか言われてるな。

 お前は…魔女以外も想像に難くないか」


「そうだな、大体の罵詈雑言で

 私は表されているし表せれる」


身に覚えはないが事実だ。

()()()にリンゴを齧ると

瑞々しい甘さが口いっぱいに広がる。


「リンゴってこんな形で生えていて

 齧って食べれるんだな」


「調理済みの奴しか見た事ないのか??」


「あぁ、宮殿やザトミェーニェの屋敷じゃ

 パイだとか甘いお菓子に

 入ってるのしか見た事ない」


「お坊ちゃんだな」


「帝国一甘やかされてるからな」


リンゴを持っていない方の手で

足元の小石を拾うと

ミーシャが大きな川に石を投げた。


かなり手前に落ちて、ただ沈んでいった。


ミーシャはそれを見てまた儚げな顔になった。


「向こう岸まで投げたつもりだったんだけどな」


「それじゃ届かないさ」


「…分かってるさ、それくらい」


「何だか久しぶりな気がするし

 かなり膂力が落ちているが

 やってみますか」


「…何をするっていうのさ?

 まさか向こう岸まで投げてみせるとか

 言うんじゃないだろうな??」


出来るわけがない!

と言うミーシャの瞳には

どこか期待しているような光を感じる。


「今の膂力だけでは間違いなく無理だ。

 だが…」


サレスになってから気付いた事。

身体の内側に流れている不思議な力の流れ。

この流れはコントロールする事が出来る。


「身体の末端からだと体外に放出しやすい。

 こんな風に」


右の手のひらから力を放出すると

微かに黒い稲妻が宙を走り出す。


「なんだ、その黒い稲妻は…?

 どうして左目が光っている!!?」


「分からない」


「分からないのか!?」


この力が何なのかも

左目が光り出すのも見当がつかない。


だが、この力が不可能を可能する予感はある。


「お、丁度良い石があった」


誂え向きのまん丸で平たい石。


「ミーシャ」


「な、なんだ」


「一つの方法ではダメでどうしようもなくても

 別の方法でなら案外簡単に通ったりするものだぞ?

 そんなに落ち込み事は無い」


「そんなわけ…あるわけ…」


腰を軽く捻ったり

右腕の力を抜いてリラックスさせる。


水面ギリギリのところに立ち

前かがみな姿勢を取る。


「…ふっ!!」


上体を捻り連動して

鞭のようにしなる腕の先。

伸びきったところで更に手首を捻り

身体の内側に巡る力をも石に乗せて

水面に平行になるように放った。


石は黒い稲妻を纏いながら

凄まじい回転と共に水面を跳ねていく。

いや、駆けていくと言った方が正確だ。


「あんな小石が、水面を走ってる…」


ミーシャは愕然としたまま立ち尽くしている。


そのまま俺の放った小石は

50mはある川を駆け抜けて

向こう岸を転がっていった。


「いやー

 ちゃんと向こう岸まで

 届いてよかった」


「随分と余裕で届いていた様に見えたが…

 その若さで魔法が使えるなんて」


「そうか!

 これが魔法か」


道理で万能感を感じるわけだ。

この力がなければ小石は

川の半分程度の辺りで沈んでいただろう。


「お前は一体何なのだ…?」


「知ってるだろ、魔女だよ」


俺は悪戯っぽく微笑んだ。

それが可笑しかったのか

ミーシャは笑い出した。


「フフフ、あはははははは!!」


腹まで抱えて、そんなに面白かったか?


「受けたようで何よりだ」


「ハハハ…いや、ありがとう!

 何だかおかげで吹っ切れた気がするよ」


無邪気な顔で笑うミーシャ。

やはり君にはそっちの顔の方が似合う。


「本当にありがとう、サレス」


「どういたしまして」


俺はドレスを翻して返礼した。

何かの映画の猿真似だが

これであっているかは分からない。


「そんなに感謝しているなら

 何か一曲弾いてくれても良いんだぞ??」


「良いよ、君になら聞かせてやる」


そう微笑むとミーシャは座って

ギターを爪弾き始めた。

切なく綺麗なメロディだが温もりを感じる曲。


夕陽に照らされたミーシャの笑顔がとても眩しい。


俺はミーシャの隣に座って

眼を閉じ彼の演奏とそよ風だけを感じていた------


------


こんなに気持ちよく演奏したのは久し振りだ。

母様が生きていた頃だからもう10年近く前か。


「この曲、僕のお気に入りでさ

 人前で弾いたのは初めてなんだけど

 どうだった…!?」


なんだなんだなんだ!!?

どうして急に寄りかかって来る!!?


「なんだよ急に…って」


サレスは寝息を立てていた。


…今の僕のときめきを返して欲しい。


それにしても、なんか良い香りがするな。

体温も伝わってくるし

彼女の胸が僕の腕に当たっている。

や、柔らかい。


「聞く限りじゃ同い年、だよな…随分デカいな」


14歳の少女にしてはという意味だが。


すぐそこには彼女の艶やかな唇までもが

無抵抗に鎮座している。


「コイツは魔女だぞ?

 人間の屑、いやきっと悪魔か何かだ。

 噂によると、だけど」


実際に会った印象は全然違う。


「距離感なさすぎだし

 渾名で呼ぶし

 不敬だし…」


でも僕の演奏を、母様の曲を褒めてくれた。

誰かも知らない僕に意味もなく優しくしてくれた。

大事な事を教えてくれた。


何より、君の悪戯っぽい笑顔は

今まで見たどの美術品なんかよりも眩しかった。


「噂なんて当てにならないな」


さっきからずっと心臓の鼓動が高鳴っている。


きっと、人前での演奏が初めてだったから

それで緊張しているだけに違いない。


「父様とは…あの暴君とは違う」


民を悪戯に虐げるような真似を繰り返し

帝国の全てを破壊してしまいそうなあの男とは。


「そうだ、今はまだ君に夢中になっている場合じゃない」


決意したんだ、彼女の言葉で。





「スラヴァ帝国皇帝を殺し、僕が新たな皇帝になる」










ウマ娘1周年おめでとうございます!!


というわけでブクマ・高評価


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よろしければお願い致します。

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