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その悪役令嬢、天下無双の武神になりて。  作者: 卑下流
第一章:サレス・レディールは死んだ。
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魔法学校とデビュタント




というわけで今は

ムルと書斎で紅茶を飲んでいる。


「うっま!!

 この紅茶って

 この屋敷で一番お高い奴じゃないですか!!」


「褒美で粗茶を出すわけがなかろう」


「お茶請けの

 このスコーンもめちゃうまですぅ~!

 こんな美味しいの

 生まれて初めて味わったっす~!!」


ムルは泣きながらスコーンを頬張り

紅茶を流し込んでいる。

本当に犬なのか、アイツは。


「そんなに焦らなくていい

 ジャムや生クリームを塗って食べても美味いぞ?」


「んぅ~~~~!!!

 至福の一時とはコレの事をいうんすね~!!」


尻尾が生えていたら

ブンブンと大振りしている音が聞こえてきそうだ。


「それにしてもこのスコーン

 フローゼさんがいつも焼いてる奴とは

 形が違うみたいっすけど」


「私が焼いたからな」


「えっ」


「そんなに意外か?」


「意外っす!」


生クリームの方を気に入ったのか

しまいには生クリームの皿を舐め出すムル。


「太るぞー?ムル」


「ぅげぇ!!?

 それを言われるとモグモグッ…

 でもモグモグッ…」


「リスかお前は。

 こんなに頬張って口も汚れているぞ」


ハンカチでムルの口を拭いてやると

ムルはまた意外そうな顔をして固まる。


よくもこんなにコロコロと表情が変わるものだな。


「お嬢様、本当に別人みたいっす

 というか年上…じゃないっすよね??」


「14だろ、確か」


「ですよねー?

 3つ下のはずなのに

 お母さんみたいだな~というか」


「中学生に母性を求めるな」


「は、はい!

 (チュウガクセー…?)」


自分で食べる用に作っておいたスコーンだが

このままだと全てムルの腹に収まってしまいそうだ。

後でまた焼くか。


「ぷはー、紅茶おいしい」


「お嬢様がストレートティーなんて珍しいっすね

 というか飲んでるところ初めて見たっす」


「好き嫌いは良くないって気付いただけさ

 にしても、やってくれたなサレス…」


やたら美形の双子メイドが言っていた通り

俺を囲む立派な作りの大きな書斎は

その棚のほとんどが空っぽであり

残っている書物はムルが(くつろ)いでいる

テーブルの隅に積まれた5、6冊だけだった。


「私立学校の体育館並みに広いのに

 蔵書がたったのこれだけとは…

 しかも悲恋でドロドロした小説だけ。

 全く嘆かわしい」


「お嬢様のお気に入りじゃないっすか」


「流石に飽きるわ」


「えぇええええ!!?

 一生大事にするって

 常々言ってたじゃないっすか??」


「人は誰だって時間と共に変わるものだぞ」


「は、はぁ…

 なんか難しい話始まった感じっすか!?」


「ムル…

 お前がそんな話に付き合ってくれるなんて

 微塵も思ってない」


「っすよね~!!」


この世界について知る糸口があると思ったが

どうやらそう上手くはいかないらしい。


「歴史書や魔法に関する書物を中心に集めていくか…

 そういえばシニスとデクスは

 どういった本を求めているのか

 聞くのを忘れてしまったな」


「あー、あの2人なら選り好みしないで

 なんでも読んでるっすよ~

 ただ…」


「ただ?」


「確かー…あっ!!

 下級貴族の幼い少年が

 性欲の強い上級貴族のお姉さんに

 メチャクチャにされるシリーズを

 読んでいる時は凄く楽しそうだったっしゅ!!」


「だったっしゅか…」


「嚙んじゃったところ

 真似しないで下さいっす~!!」


官能小説の一種だろうか?

恋愛結婚とか身分さのある恋なんかの方が

民衆の食いつきが良さそうだと感じるが。


「ありがとう、ムル。

 取り敢えず蔵書の件は

 そのシリーズと歴史書や魔法に関する文献を

 中心に収集しておくように

 フローゼへ伝えておいてくれ」


「分かりました、お嬢様!」


「メモ取らなくて大丈夫か?」


「安心して下さい!

 自分、記憶力だけは

 人に誇れるっすので!!」


「ふーん」


あとでフローゼに直接言っておこう。


「それから私の今後の予定は?」


「大まかなに言うと今年から魔法学校に入って

 社交界デビューするとかっすね~」


「魔法学校?」


「方々の貴族の子息や令嬢たちが集う

 大きな学校っすよ!!

 3年間魔法について学ぶ他に

 色々なお家や上格な貴族と繋がる

 チャンスでもあって

 成績優秀なものは将来を

 約束されるんだとか!」


なるほど。

学校とはいいながら

様々な思惑が蠢く

魔窟というわけか。


「それで、

 学校と社交界はどう関係しているんだ?」


「それは一体どういうボケなんすか、お嬢様??

 魔法学校の理事長であるユスティ大公が

 主催なされるデビュタントは

 社交界の登竜門って有名じゃないっすか~!!」


となると

魔法学校そのものも

社交界と捉えて

問題なさそうだな。


「くれぐれも学校では

 土下座とかしちゃダメっすからね?」


「そうだな、その場では抑えて

 帰って来てからムルに八つ当たりしよう」


「ひっぃぃぃ!!?

 せめて傷跡が目立たないところで

 お願いするっす…」


「冗談だ

 そもそもそんな事態を回避出来ないようでは

 3年と持たずに孤立するさ」


実際、サレスは社交界でも孤立していたらしい。

イデナという令嬢を

集団でイジメていた事が原因だろう。


「あと、魔法学校にはここから通うのか?

 それとも下宿先が??」


「下宿って…

 一応今現在はサレス様の婚約者である

 ラモラ様のお屋敷でお世話になる予定です」


あぁ、サレスを殺した()婚約者か。


「一応というのは?

 没落でもしそうなのか??」


「まさかっすよ~!

 お相手はあのノデュス公爵家のご子息ですよー?

 没落なんて後50年は無理っすよ~!!」


家柄としては申し分ない。


「もしかして私か?」


「うぅ、そうっす…

 ラモラ様がお嬢様との結婚には大反対というか

 奴隷と結婚した方がマシって騒いでるらしくて」


当然だな。

サレスなんて招けばどんな厄災が降りかかるか

分かったものではない。


「良識的で勇ましい性格のようだな」


「結構なイケメンらしいっすよ~?」


それは割とどうでもいい。


「明日話しに伺ってみよう」


「ま、マジっすか!?」


結婚するにしろしないにしろ

実際に会って話をつけるのが最善策だろう。


「朝方に1人で行ってくる」


「1人でってどうやって行くつもりっすか!?」


「馬くらいいるだろう?」


「ええぇ!?

 いるにはいるっすけど…」


「なら問題なかろう」


「いやー

 その馬が問題というか…」


「怪我でもしているのか?」


「そういうわけでもないっす!!

 あー、見た方が早いっすよね??

 お嬢様、ついてきて下さいっす」


まるで分からんので

駆け足で先行するムルを追いかけるとしよう。




『あぁ…クソ。

 こんな下らねぇ事で死ぬたぁ

 思っても見なかったぜ…


 こんな事ならあの時読んだ…なんだったか?

 名前も出てこねぇが内容はよく覚えてる話、

 アレ、ブックマークしとくんだったな…』


なんて事、よくありますよね?

貴方のブクマや高評価、いいね!を

お待ちしております。


              パワー


              卑下 流



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