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その悪役令嬢、天下無双の武神になりて。  作者: 卑下流
第一章:サレス・レディールは死んだ。
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魔女のきまぐれ




「ギャーッハッハッハッハ!!

 この街は元Aランク冒険者である俺様、

 『超人力のバラスク』様が頂いたぁ!!

 抵抗する奴は全員引きちぎってやるぜぇ

 この生意気なガキのようになぁ!!」


「貴様、その子を離せ!!」


婚約者のいる公爵家を目指して早々

見えて来た街の噴水広場では

武装した盗賊達が人々を襲い

街を破壊していた。


恋愛ゲームとは

普通こんなに治安が悪いものだろうか?


「おいおい!

 俺様に銃弾如きが通じると思ってんのかぁ!?」


「撃てぇッッ!!」


3mを超える悪漢に向けて

騎士の様な装いの集団が

一斉に銃火を放った。


「はっはァ!!

 雑魚雑魚ぉぉ!!」


銃弾はその悉くが

見えない壁に弾かれて

火花と共に散った。


「何!?

 あんなゴリラが魔法を使えるなんて…

 ならば、総員抜剣!!」


怯まずに剣を抜いて突撃する

10数名の騎士達は

次の瞬間には全員が

薙ぎ飛ばされ宙を舞っていた。


「はッはぁああ!

 俺様の超怪力だけが振る事を許す

 この『ドラゴンキラー』の前に

 散れぇい、雑魚どもがぁ!!」


バラスクが左手一本で振るっている

大剣は名に違わずドラゴンすら

殺せそうなほどに大きく重かった。


「クソッ!!

 クラヴィス団長さえいれば

 こんなゴリラ一瞬で倒せるのに!」


「はぁ!

 雑魚はいつだって他力本願だなぁ!!

 だから何も守れねぇってのに(笑)

 そこでこのガキが引きちぎられるところを

 無力さを噛みしめながら見てるんだなぁ!!」


「…っ!」


「ぐぁぁ…痛いよぉ…」


邪悪な笑みを浮かべるバラスクは

汚らしい少年の首と足を左右にそれぞれ握って

徐々に徐々に引っ張り出す。


だが今この広場に悪漢を倒し

少年を救う事が出来る者はいない。


「では俺が健気に頑張るとしよう」


ヴァルとともにバラスクへと突っ込み

少年を左手に抱えて奪取した。


「…!?

 いつの間にガキがぁ~!!?」


ヴァルが全力疾走したからか

誰にも一連の動きは見えていなかったらしい。


「一体、何が…??」


騎士団、民衆、盗賊の誰もが

状況を理解出来ず困惑していた。


「ヴァル、少年を連れて離れていろ」


「!?

 な、何だ貴様はぁー?

 いつの間に俺様の背後にいやがった~!?」


悪漢の巨体に阻まれて

周りには私とヴァルの姿は隠されていたようだ。


「私はサレス・レディール

 フルーゴル領領主が娘だ」


「はぁ~??

 女ッぽい顔してると思ったらぁ

 貴様が噂の魔女か!!


 思った程醜悪な顔を

 しているわけじゃねぇらしぃな~」


顔中傷だらけの男にまで

そんな風に思われていたのか。


「で~??

 年端もいかねぇお嬢様が

 何の用だ??」


相手が女だと知るや否や

大剣に伸びていた手が引っ込んだ。

相手が何者だろうと侮るのは未熟者の所作だ。


「何、大した用ではない。

 少しばかり領民を助けに来ただけだ」


「…ぷっはっはっはっはぁは~ぁ!!

 助けに来たぁ!!?

 なら領民ではなく

 この俺様の助けの間違いじゃないのかぁ??


 貴様を使って辺境伯の野郎に身代金を貰い

 俺様達全員で犯した後で

 貴様の首だけは

 家に送り返してやらんでもないぞ?」


「三下の割には随分と弁が立つようだな」


「はぁ~??

 状況が分かってねぇらしいなぁ~

 魔女様はぁ!!」


やれやれと首を傾げるバラスクに

部下の盗賊達も同調して馬鹿笑いを始める。

こんな小娘に何が出来るっていうんだ?

と言った様子だ。


「その剣、『ドラゴンキラー』といったか。

 借りても良いか?」


バラスクの目の前に刺さっている剣を

指差すと笑いを抑えられないと

口元を抑えた巨漢はどうぞと

俺の提案に快諾した。


「ッッハハ!

 か、構わねぇよ~!!

 魔鋼鉄で練り上げられた

 500kgを超える剣だからなぁ

 き、きき気を付けて持てよなぁ~(笑)」


俺の発言を聞いてか

捕らわれた民衆や騎士達も怪訝な顔をする。

あれが『魔女』か、と。


剣に近づき触れると

見た目より更に重量がある事に気付く。


が、魔法を使えば問題なく振るえる重さだ。


「どうだ、お嬢様~??

 持てそうかなぁ~~??」


「うん、取り敢えず」


頑張って堪えていたのか

堰を切ったように爆笑するバラスク。


「ぶわぁっっはっはっはっはぁ~はぁ↑!!

 そうかそうか!!

 頑張れ頑張れ(笑)

 おい!お前らも応援してやれ~!!」


「せいぜい頑張れやぁ~魔女様」


「君なら出来るさ!!…プハハハ!!」


盗賊達が力ない声援を送ってくる。

バラスクもニヤニヤしながら俺の動向に注視する。


あまりガヤガヤした空気も好きではないし

民衆や騎士の手当てもしなければならない。

溜めるのはこの辺にしてスッと大剣を片手で抜く。


「えっ」


広場は一気に無音になり

全員の視線が俺に刺さった。


「ではいくぞ、バラスク」


「・・・は?」


上段に構えた大剣をただ振り下ろす。

それだけで元Aランク冒険者の悪漢は真っ二つになった。


「…バケモノぉおおお!!!」


「魔女…!?本物の魔女だぁ!?」


「馬鹿な、お頭が一撃でやられるなんて

 何かのトリックに決まってやがる・・・!」


やっと本当の状況を理解したのか

首魁を失った盗賊達が一気に混乱とする。

がすでに対処しているので問題ない。


「な、何だ!!?

 俺たちの足だけ凍って…?」


「こ、こんなもん…

 ぐっあぁ!?」


盗賊達の足元はすでに魔法で

凍らせておいた。


「動かない方がいい。

 無理に引き抜こうとすると

 足の皮が剝がれてしまうぞ?」


俺が大剣についた僅かな血を

振り払ったのを見て

身動きの取れない盗賊達は武器を捨てた。


「そこな騎士達よ

 早く彼らを拘束してくれ。

 動ける者がいないなら

 代わりに私がやるが…」


ただ呆然としている騎士達に声を掛けると

気を取り直したのか一斉に盗賊達を捕らえる。


それを横目で見ていると

少年を乗せたヴァルが傍に帰って来た。


「よしよし、お前は本当に良い子だ」


ヴァルを撫でてから

少年を担いで鞍から降ろして

救護出来そうな者を探す。


「医者か治癒の魔法を使える者はいないか?」


しばらくして民衆の中から

2、3人の老婆が出て来た。


「この少年や負傷者の手当てをして頂きたい

 頼めるだろうか??」


老婆達はそれは構わないが、と怪訝な顔で続ける。


「あんた、本当にあのサレスなのかい??

 随分と雰囲気が変わってしまってるが」


「勿論、私がサレスだとも。

 先に報酬の額を決めておいた方が良かったか?」


「いやいや!

 命を助けて頂いた身でそこまでは。

 …本当に変わったねぇ」


老婆達に少年を預け

負傷者は老婆達の下に集まるように

呼び掛けていると

騎士の1人が話しかけて来た。


「…失礼。

 貴女は一体何者なのですか?

 先程の行為を貴族令嬢様が…


 まして、あの『魔女』がそのような事を

 するとは微塵も思えないのですが…

 何か事情がおありなので??」


「事情も何も

 私が辺境伯令嬢のサレスだよ。

 納得出来ないなら

 魔女のきまぐれとでも思いたまえ」


「はぁ…

 分かりました。

 とにかく、助けて頂き

 なんとお礼を申せば良いものか」


絶対に分かってないな、コイツ。


「礼など不要。

 領民を守るのは領主の務めだ。

 貴公らと同じだよ。

 

 今は私より、賊の連行や

 負傷者の手当てを手伝いたまえ」


「…!

 それでは、失礼致します」


騎士は敬礼をして持ち場へと戻っていった。


「これでどこも人は足りているな。

 あとは…」


このバカでかい剣の始末だけ。

今これを持てるのは俺だけなので

放置しておくのも良くはないだろう。


「魔鉄鋼…といったか

 他の金物として再利用できるかもしれないな」


大剣を片手に考え事をしていると

後ろから蹄の音が聞こえてくる。

誰かが馬で駆けて来たのだ。


「君が『超人力のバラスク』か!!

 悪いが、君の好きにさせるわけにはいかな…

 意外とカワイイ顔をしているんだな!!

 故郷のご両親もきっと泣いているぞ!!」


「…は?」


白馬に跨った銀鎧で青いマントを纏う青年が

突如として俺の前に立ちふさがった。















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