表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その悪役令嬢、天下無双の武神になりて。  作者: 卑下流
第一章:サレス・レディールは死んだ。
1/36

悪役令嬢の目覚め

お昼にサクッと読める奴

そんな奴を貴方に。



———


『…でさー

 物語中盤で悪役令嬢の

 過去が明かされるんだけどさ〜??

 主人公のイデナに陰湿な嫌がらせしてたのはね?


「清らかな身」であるお前ばかりが

 幸福になるのが許せない!!って叫んでねー??


 わたし、その子の事が不憫だなって

 感じちゃってさ〜?

 最後には元婚約者の御曹司に

 魔法で凍らされちゃうし』



『でも確か

 その悪役令嬢がレイプされたのって

 7才の時に自分の弟の目玉を抉り取ったから

 その復讐で弟にやられたんでしょ?


 元婚約者だってその令嬢の悪評に

 耐えかねて鞍替えしたわけだし』



『そーゆう運命とか扱いとかも

 ひっくるめて不憫じゃないー?


 どうしたらあの悪役令嬢は

 幸せになれたのかなって考えちゃうわ』



『辺境伯の娘だったんでしょ?

 両親は何もしなかったわけ?』



『あー、お母さんはその令嬢を

 産んだ時に死んじゃって、


 お父さんは結構偉い貴族だから

 方々を転々としてて中々

 その子に構ってあげられなかったのよね』



『うわぁ、酷い設定』



『でしょー?

 しかもさ!その子、容姿もひどいのよー!!』



『何回目よ、それ?


 烏の羽根みたいに艶やかな長い黒髪に

 深い柴水晶(アメジスト)の輝きを宿した瞳の

 美しい娘なんでしょ??


 どこがひどいのよ??』



『このゲームの中だと

 黒髪に紫の瞳は「魔女」の様だって

 恐れられてるのよ?


 それが理由で父親には距離取られてるし

 社交会でも永年孤立してたのよー!!』



『乙女ゲーって恋愛する奴でしょ?

 なんでその令嬢だけ設定がエグいのよ』



『まあ悪役令嬢だからってだけじゃない?

 神である原作者に愛されなかった…

 ってだけなんだろうねー、きっと』



『そんなもんか

 で、なんて言ったっけ?

 その悪役令嬢?』



『そろそろ覚えてよー!!!

 その悪役令嬢の名前は———』


———


「サレス姉様ぁぁ!!

 いいや、サレスううッッッ!!」


…?

誰かが叫んでいる、若い男だ。


サレス…その名前は聞いた事がある。

ゲームのキャラクターの1人。

悪役令嬢…だったか。


「ちょ、ちょっとプレヌス坊っちゃま!?

 まだ殺さないで下さいよ!!?

 身体と顔だけは上モノなんですから…」


「分かってるよッ!!

 僕に指図するんじゃないよ

 下賤な盗賊崩れのクズがさー??」


「…へ、へぇ」


意識が段々と明瞭になってきた。

俺は今、若い男に髪を掴まれている。

全身は打撲しているのか節々が痛い。


「僕がどれほど

 この時を待ったか知ってるかぁ???

 7年だ、7年も待ったんだ!!」


「へぇ、有名ですから知っていますとも

 しかし、本当にこんな華奢な小娘が

 坊っちゃまの左眼を抉り取ったので?

 俄かには信じられませんが…」


「だろうな

 僕自身信じられないよ未だに。

 だが、この女は…魔女は!

 笑いながら僕の左眼を

 スプーンでくり抜いたんだッッ」


坊っちゃまと呼ばれる男…少年か。

彼が激昂する度に髪がグイッと引かれる。


もしかして

その言葉は俺に向けられているのか??


…そんな筈はない。


そもそも俺は1人っ子だったし

人の目玉をくり抜いた事は無い。

記憶が曖昧だが

そのような衝撃的な光景を

忘れはしないだろう。

 

「腹違いとはいえ

 弟の目玉を抜いてお咎め無し…

 全く、お父様が辺境伯で無ければ

 今頃は屋敷の地下にでも幽閉されて

 いただろうに」


「坊っちゃま

 そろそろここを離れなければ!


 火薬の量が多すぎて

 黒煙が上がっちまいやがりました」


「流石にフルーゴル領に近すぎたか…まぁいい。


 獲物はこうして生捕に出来たんだ?

 さっさと引き上げるよ」


「へぇ!

 お前ら、この魔女をさっさと積んでしまえ」


「ふふふ、サレス姉様?

 女としてのお前は僕が殺してやる!


 汚し、犯し、陵辱して

 2度と人前に出れない顔に変えてやる

 魔女にはその方がお似合いだろぉー??


 ククク、楽しみだよ」


少年が俺の頬を撫ぜる。

やはり、俺がそのサレスとやらで間違いない。


肩と胸がやたらに重いし

身体にも普段通りに力が入らない。

筋肉量がかなり落ちているのだ。


…だからといって

むざむざ傷モノにされてやる道理はない。


「んん?

 目覚めちゃったか、姉様。

 …何さ、この両手は?


 命乞いのつもりかい?

 ダメダメ!


 もう決めたんだよ!!

 君は犯して顔を焼くってさ」

 

きっと少年の復讐は正当なモノなのだ。

だからこそ、俺は少年の目を見て謝罪した。


「すまないな、少年」


「…え」


刹那、ゴキュッッと鈍い音と水音が鳴り

少年の右腕はあらぬ方向へ捻じ曲がった。


「あ、あああああ、うああああああああああああ」


「な、なんだ!!?

 坊っちゃま!

 その女から離れて下せえ」


「腕がぁぁ、あっ、フッフッ骨がぁぁ血がぁッッ」


「何かの魔法か!?」


「コイツは異常だ!!

 全員距離を取れー!!」


俺が少年の右腕を捻ってやると

場は緊迫した。


魔法と叫んでいる輩もいる様だが

今俺がやったのは紛れもない()()だ。


少年の手から解放され、

立ち上がって辺りを見回すと

俺は右腕を開放骨折した金髪の少年と

盗賊のような小汚い装いの男達5人に囲まれていた。


背後には砕け散った馬車の破片と

御者と馬の死体。


それから絢爛な刀が一本落ちている。


「やはり、刀があると落ち着くな」


俺は刀を拾い上げると

左手で掴んで腰に据える。

俗にいう「居合斬りの構え」を取る。


「こ、コイツ目が…光ってやがる」


「なんて殺気なんだ…14のガキがなんでこんな」


「慌てるなお前ら!

 たかが貴族のメスガキ1匹にビビってんじゃねえ」 


「もういい!!

 お前ら、あの魔女を殺せぇ!!!」


いつもの道着ではないが、問題無い。


「…参る」




旦那!

いいねとブックマークと

評価ボタンを押し忘れてますぜ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ