第20話 正直
春になった。
桜が咲き誇る季節。そこで僕たちは
花見をしている。
シートを地面に敷いての花見ではなく、散歩しながらの花見である。
桜の枝が風に揺られ、花びら一枚一枚が枝から離れて舞い踊っている。
この時期にしか見れないピンク色の吹雪だ。
道中で買った薄べったい饅頭を口に頬張りながら、彼女が話しかけてきた。
「私と桜、どっちが綺麗?」
“君だよ”以外の答えを許さない一方通行の問いかけ。
他に洒落た答えも思いつかなかったので“君だよ”と答えると
「君は見た目で人を判断するタイプ?」
何ともまぁ人を怒らせるのが実にお上手なご回答である。
尤も、彼女の場合、あからさまに冗談とわかる言い方もするし、その後すぐに謝るので大事には至らない。
しかし、今回は少々違った様相を見せた。
「私は中身で君を判断したよ」
なるほど・・・そう持ってきたかと思った。
彼女が答えた以上、僕も答えないわけにはいかない。
“初めは容姿で次いで中身だった”
と僕が正直に答えると、カラカラと笑って、
「君は私と違って馬鹿正直だね」
「でも」
「やっぱり君のそういうところが良いところだよね」
あの日の放課後の教室では話さなかったことを今頃話すとは思いもしなかった。
互いの長所を褒め合っただけで、第一印象は聞かなかった。
それを今聞くということは・・・《《近い》》からだろうか・・・
「悔いのないようにしたいんだ」
未来を見て言ったセリフではないようだ。
後僅かな時間でどれだけ互いに正直になれるのか試される。そんな期間。
彼女は残りの饅頭を口に頬張ると、カバンからお茶が入ったペットボトルを取り出して、お茶を饅頭と一緒に飲み込んだ。
「だから正直になりたいと思う」
彼女は僕を見つめていった。
「今日、私死ぬんだ」
瞬間、彼女が僕の体に倒れ掛かってきた。




