第2話 悲しい気持ち
小学生の時、母の姉、つまり僕の叔母が亡くなった。
母と叔母は疎遠ということもあり、数回しか会ったことがなかった僕であったが、血の繋がりがなせる本能か、子供心に少し悲しい気持ちになったのを今でも覚えている。
そして葬式の日。
ここで大事なことは、先で述べた『少し悲しい気持ちになった』ではなく、そこで僕が初めて知ったことだ。
人間の死体も見ることも出来ない。
棺の中が、空なのである。僕の目線から見たとき。
触れることは出来なかったが、恐らく触れても何も変わらないだろうと僕は悟った。
その日を境に、僕は死体について意識するようになった。
小学生の頃、僕は初めて人が死ぬ漫画を読んだ。
激しい死闘を繰り広げるバトル漫画。
互いの正義のために殴り合い、決着がつく間際の悲しき過去だの主張だの意見のぶつかり合いだのを経て、いよいよ主人公が敵に止めを刺した次のページ。
空白である。
死体の所だけが綺麗に白く塗られているか、もしくは切り取られたかのように空白でなにもなかった。
フィクションであろうとも、死体を見ることはできない。
その死体があるであろう箇所を止めを刺した主人公が悲しげな表情で見つめている。
(・・・わからない)
主人公の気持ちはわかる。それは理解できる。しかし、
(・・・わからない)
それが僕が初めて人が死ぬ漫画を読んだ感想であった。