01話 〜転生〜
この話はとあるFランク冒険者に倒されたSSSランクモンスターの転生物語である。
「ここは何処だ……?」
起き上がり周りを見渡してみると、何処も彼処も真っ白だ。
「なんだこれ?」
近くには鏡が置いてあった。
「は?」
鏡を覗き込むと兜と鎧を着用した骸骨ではなく、青髪に薄い緑色の瞳の青年の姿があった。
「俺は確か……」
この時、全てを思い出した。
「そうだ、俺は黒い仮面を付けたやつに殺されたんだ」
一瞬、復讐心が生まれそうになったが魔物だから仕方ないと思った。
「さて、ここは何処なのか把握するために探検でもするか」
そう思い、歩き出した瞬間、目の前に神々しい白い翼を持った少女が現れた。
エメラルド色の髪に金色に近い黄色い瞳の少女は青年に近づく。
「やあ、スケルトン君。はじめましてかな」
少女はそう言いながらこちらの方へ歩き寄る。
「スケルトン君って呼びにくいから、今日から君の名前はスケ……スケラでいいよね?」
少女は少し面白そうに名前を付けた。
「俺はそれで構わないが……」
「スケラ君はどうしてこんなところにいるのか気になるのかい?」
その言葉に頷く。
「君も面白そうだったから、だよ」
少女はクスクスと笑いながらそう話す。
「君にはこれからとある世界で自由に暮らして貰うつもりだ」
とても驚いてしまった。
「俺が……? 元魔物だぞ?」
すると少女は面白そうにしていた。
「もちろん、ただし勇者の力を持って転生することになってるから」
その言葉の意味を理解出来なかった。
「まあ、始まりの場所はFランクの魔物しか生息しているところだから命の危険はないと思うよ」
少女の目は急に真剣になり、足元に魔法陣が浮かぶ。
「おっと、僕の名前を言って無かったね。僕の名前はテ――だよ!」
別の世界へ転移する時に発生した風の音で名前を聞くことが出来なかった。
結局、誰だったのだろうか。
◆◇◇◆
目を開けると辺り一面、木ばかりだった。
「ほんとに森の中だ」
気づくと手元には手紙を持っていた。
どこかも分からないので手紙を読んでみる。
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【これから異世界生活をしていくスケラ君へ】
君には勇者の力を持った状態で暮らして貰うよ。
君が勇者としてこの世界の最凶の魔物、魔王を倒すもよし、なにもしなくてもよしだよ!
君には餞別としてアイテムボックス代わりの袋と君の使っていた剣を聖剣にした『聖剣 混沌の剣』をあげるよ!
袋の中には食料と水、お金として中金貨5枚、中銅貨30枚が入ってるよ!
聖剣は来いって念じれば来るはずだからね!
ステータスはレベル1に初期設定になってるけどレベル99になればエンペラースケルトンの時よりも強くなれるよ!
魔法は変わらずに使えるけどね。
それでは君の健闘を祈るよ!
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手紙を読み終えると聖剣を呼び出してみる。
「これが聖剣……どうやら本当に自分が使っていた剣のようだな」
聖剣を腰に携え、袋の中を見た。
中には1ヶ月分の飲食料とお金が入っていた。
「とりあえず、森を抜けてみるか」
直感に従って歩き始めた。
少し歩くとすぐさま魔物が現れた。
「これはスライムか?」
目の前には水色の液体の様な魔物が飛び出してきた。
「とりあえず、闇雷」
唱えると頭上から落ちてきた黒い雷によってスライムは消滅した。
「……威力が変わってない」
魔法を放つとエンペラースケルトンの時と同じ力だった。
「ステータス鑑定」
そう呟くと目の前に自分のステータスの数値が出てくる。
「HP、攻撃力、守備力、素早さ、器用さは初期能力で、魔力と魔法攻撃力が変わらないと…」
何故か魔法に関するステータスだけ変わっていなかった。
「まさか、魔法は変わらずに使えるってこういうことか!?」
「今、考えても仕方ない。町を目指すか」
森の中を道中に出てくる魔物を倒しながら進んだ。
◆◇◇◆
直感に従い進んでいると人が整備された道を見つけた。
「これを辿れば、人の町に行くことができるはず」
そう思い、道を進んでいると魔物が馬車を襲っていた。
「ゴブリンの軍団か?」
馬車に向けて走り出した。
この時のレベルは10になっていた。
◆◇◇◆
「なんとしてでも姫様を守れ!」
そう言いながら全身鎧を纏った兵士がゴブリンを倒していく。
「隊長! ゴブリンキングが……」
「ゴブリンキングだと!?」
ゴブリンキングは危険度Aの魔物だ。(俺の世界の基準だが)
「ゴブリンの襲撃で馬が死んでしまっている。すぐに全員、馬車を押すんだ! 私がゴブリンキングの足止めをしよう!」
隊長と呼ばれている男性がゴブリンをなぎ払いながらゴブリンキングに突撃しようとした時だった。
「荘厳な闇雷!」
ゴブリンキングとゴブリン達の頭上から黒い雷が落ちていく。
その雷が当たるとゴブリンキングは絶命した。
「大丈夫か?」
隊長と呼ばれている男性はポカンと口を開けていた。
「君がやってくれたのか……? 感謝する、助けてくれてありがとう」
その男性は深々と頭を下げた。
「これくらい礼にも及ばない、頭を上げてくれ」
そう言うと男性は頭を上げた。
すると後ろの馬車から白いドレスを纏った女性が出てきた。
「旅の御方、見ず知らずの私たちを助けて頂きありがとうございます」
その女性はスカートを軽く上げ、頭を深く下げた。
「いや、このくらい簡単だ」
微笑みながらそう言った。表情を手に入れるのは久しぶりすぎて感覚が分からないが。
「申し遅れましたが私の名前はスフィー・ラルファです」
スカートを軽く上げ、頭を少し下げる。
「俺はスケラだ」
笑顔で自分の名前を言うとスフィーは微笑んだ。
「お礼をしたいので私の家にお招きしてもよろしいでしょうか?」
スフィーは恐る恐る聞いてきた。
これ、断ったら失礼だよな?
そう思い、「ああ、是非」と返事をした。
◆◇◇◆
その後、強い魔物は出ることはなく、スフィーと話をしていた。
「スケラさんは冒険者なのですか?」
スフィーがそう訪ねてくると軽く首を横に振る。
「俺は……山で修行をしてたんだ」
自分のことについて話そうとしたが、正直に話せば厄介なことになると思い、転生者と言うことを隠した。
「だから、あまりこの国についてわからないんだ」
そう言うとスフィーは少し驚いていた顔をしていた。
「通りであんなに強かったんですね」
そう言うと微笑んだ。
「あの時、どのような魔法を使ったんですか? 伝説の魔法ですか? それとも自分で創り出した魔法ですか?」
スフィーは興味津々に聞いてくる。
「あれは闇雷だが?」
そう言うとスフィーは失言してしまう。
「初級魔法の中の闇雷ですか?」
「ああ、それだが?」
スフィーは驚きのあまり椅子から飛び上がり馬車の天井に頭をぶつけた。
「大丈夫か?」
そうスフィーに聞くと「大丈夫です」と返した。
「姫様、スケラ様、到着いたしました。」
扉を軽くノックし、兵士の1人がそう言った。
「では、行きましょうか」
スフィーは馬車を降りると手を差し出した。
「ああ、ありがとう」
ここから俺とスフィーの異世界生活が始まる。