00話 〜プロローグ〜
いつも通り、暗く少しジメジメしている洞窟。
周りには自分で作り出した骸骨兵達が待機している。
いつからだろうか。この洞窟で過ごし始めてから何年、何十年、何百年経っただろうか。
ここに来た理由さえ忘れてしまった。
今日もただただそこに佇むか稀に来る冒険者を返り討ちにする……。
そんな日常になっていた物がある1人の男。いや、2人組の冒険者が壊して行った。
黒いフードを被り、黒い仮面を付けている男となんの武器も持っていない女の2人組の冒険者。
女の方は配下の骸骨兵を。男は俺の相手をした。
その男と剣を交え、魔法を撃ち合い戦った。
今までの冒険者とは格が違う、違いすぎる程の強さだった。
「地獄門」
そんな声が聞こえたと同時に意識が飛んだ。
□■□■□
「懐かしい夢を見たな」
あれは今から何ヶ月か前の出来事。その後、色々あって今に至るわけだが。
「少し外を歩くか」
時計を見るとまだ午前1時、起きるにはさすがに早すぎる。
「ここに来てしばらく経ったけどまだ少し慣れないな」
今は広い豪邸で寝泊まりというか衣食住をしている。
「スケラさんも眠れないんですか?」
後ろから話しかけてきたのはこの家の主人のスフィーだ。
「ああ、スフィーもか?」
いつもより薄めのドレス、パジャマいやネグリジェだろうか?
いつも思うが白いドレスはスフィーの金髪、桃色の瞳にとても合っている。
「はい、なぜか寝付けなくて……」
「そういう時はだな」
白く細い腕を掴み、手首から親指三本分の場所。
そこを軽くつく。
「スケラさん?」
「ここを押すと眠くなるらしくて……な?」
スフィーの顔は耳まで赤くなっている。
なぜだ?
「ありがとう、ございます」
自分の腕を掴み、どこか嬉しそうな表情を浮かべている。
「礼を言うのは俺の方だ」
「なんでですか?」
「こんな生活が出来ているのはスフィーのおかげだからな」
「そんなことはないですよ。いつも助けて頂いてますし」
生活させてもらっているのでできるだけ助けようと努力している。
まだまだ全然た足りる気がしないが……。
「それでもだ。俺がこうして過ごしていられるのはスフィーのおかげだ」
癖でスフィーの頭を撫でてしまう。
癖? そんな癖、出来ていたのか?
「ん……」
「顔が赤いな……。熱でもあるのか?」
スフィーの額に自分の額を当てる。
これ、かなり熱いぞ?
「大丈夫です」
「だが……」
「大丈夫です!」
耳まで赤くなっている。本当に大丈夫だろうか。
「部屋まで送るぞ」
「そこまでは……」
「ほら、いいから。熱あるんだから少しくらい甘えろ」
そのままスフィーをエスコートし、部屋へと向かった。
「では、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
道中はこれまであったことを話した。この時間が1番の楽しみだ。
「やはり、このような感情には慣れないな」
そんなことを1人思いながら寝室へと戻った。
転生したあの日からあの約束、そして今だ。
本当に人生は何があるか分からないものだな。