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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
乙女ゲームと遺言書の謎
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図書室の喧騒④

「好意を素直に口に出すことも出来ない、花の一つも贈れない、無骨者なロバート様に繊細で淑女の鏡のようなわたくしのフランさんはお渡しできませんわ。フランさん、わたくし警察には大変ご懇意にしていただいておりますのでロバート様を牢に閉じ込めたくなったらいつでもご相談してくださいませね。どんな手を使ってでも一生塀の中から出られなくすることも可能です」

「人を犯罪者のように言うな!大体フランは貴様のではないだろう!?」

「ふふっ、ロバート様はそう思われるのかしら?」


 どんな手を使ってロバートを牢に閉じ込めるつもりなのか分からないがクリスティアならばやりかねない。

 警戒するように睨みつけるロバートを気にせずにおもむろに立ち上がったクリスティアはフランへと近寄るとその肩に触れる。


「あっ、あの……クリスティー様?」

「そうなのかしらフラン?」

「ひえっ!?」


 肩から首筋、頬を中指の爪で撫でるように滑らせてそのまま顎を掴むと俯いていたフランの顔を上げさせたクリスティアは滅多に呼び捨てにしないその名を呼んで顔を寄せると耳元で囁くようフランに問う。


 図書室中に漂い始める淫靡な空気と背徳感のある光景に成り行きを見守っていた者達は息を飲むと同時に唾を飲み込み腹に緊張となんともいえない欲求を滞留させる。


 この二人に一体どんな関係が……想像を掻き立てる近い距離に、フランもあわあわと混乱する。


「フフフ、フランにそのように不埒に触るな!この外道!!」

「あああの、わたわた、私はクリスティー様のものです!ごめんなさいアスノット様!」


 白い肌を真っ赤に染め上げたフランは今にも卒倒しそうな様子でロバートに向かって頭を下げる。

 それにそらご覧といわんばかりにフランの肩に手を置きその隣に立って勝ち誇ったような微笑みを見せてくるクリスティアに、違う意味で顔を真っ赤に染めたロバートは怒りで手を振るわせる。


 何故自分が振られるような形で拒否されなければならないのか!


 こんなにもフランのことを心配しているというのに何故伝わらないのか!


 フランのような大人しい女性が何故クリスティアという悪の根源のような人物に懐いているのかロバートには甚だ理解が出来ない。

 どんなに美しい女神のような面構えをしていたとしてもクリスティアが今までしてきたことはまさに悪魔の所業、売られた喧嘩を買う気概はロバートも認めているが正々堂々とは程遠い、裏から手を回し逃げられないように相手を絡め取り絶望という奈落の底へと突き落とす卑怯千万なやり方で相手を叩き潰してきたのだ。

 多方面で恨みしか買っていないクリスティアと一緒に居るだけでフランが危険な目に遭うかもしれないと悩み、今日だってフランがクリスティアと共に居ると聞きつけて心配で駆けつけてきたというのに……フランにごめんなさいと頭を下げられたロバートは怒りとやるせなさとフラれた事実に片膝をついて身を震わせる。


 その姿をクリスティアは楽しそう嘲笑う。

(と勝手にロバートは思い込んでいるが実際はこんなに色々とフランのことを想い心配しているというのにその心を一ミリも理解されずに可哀想だと憐れんでいる)


「……ロバートを挑発するんじゃないクリスティア。フラン嬢も……ロバートは君を怖がらせようとしているわけじゃないんだ理解してあげてくれ、不器用なんだ」

「ロバート、フラン嬢にフラれるのは今に始まったことじゃないんだから気落ちしないで。それに何度も言うようだけどクリスティーの挑発に乗れば乗るだけ彼女が喜ぶだけだよ」


 完膚なきまでのフラれっぷりに図書室中の同情を集めているロバート。


 誰か声を掛けて慰めてやれよっと漂う気まずい空気に、それを見計らったかのように現れたユーリ・クイン王太子殿下と宰相閣下の令息であるハリー・ウエストが片膝から両膝をついて地面にめり込みそうなほど気落ちするロバートを空気を読んで慰める。

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