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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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ユーリとクリスティア②

「ふふっ、まだお聞きしたいことがございますのでしょう?」


 向かいに座ったユーリの心を見透かすように真っ直ぐその姿を見つめるクリスティア、人の心の内を暴き立てるのが得意なその緋色の瞳にユーリは気まずそうに問う。


「マークが犯人だと怪しんだのはいつだったんだ?」

「お話をお聞きしましたときにマーク様はホールで柱時計の鐘の音を聞いたとおっしゃっておりました、ですがホールでは楽団が音楽を奏でておりましたし柱時計もございませんでした。使用人一人一人に腕時計をさせていたのは時間を気にさせないためなのもありますが自分たちの財力をひけらかす趣向でもありますのでその趣向を阻害する鐘の音が聞こえるはずはございません。事件になにか関わりがあると確信を持ったのは猫を探しにテラスへと出た時です。マーク様はギャゼを見ていないとおっしゃっておりましたけれどもテラスのテーブルにはギャゼの号外が置いてありました。使用人が主人の家に新聞を持ち込むなんてことはありませんし、ましてやテラスの椅子に座って読むなんてことはあり得ませんわ。それにあのギャゼは昼頃に出た号外なのでマーク様のご両親が読んだものでもございません。マーク様が見ていたことは確かなのに何故隠したのか……マーク様はリネットさんと夜会でお話ししたときに最初は誰かと大切はお話があるとおっしゃっていたのに、付いていけば良かったと後悔を口にしたときには相手のことを明確に男性だとおっしゃっておりましたわ。ギャゼを見たのならば令嬢だと思うはずなのに、それがとてもとても深い疑惑になりましたの」


 確かに、ホールに居た20時にユーリは柱時計の音を聞いていない。

 そんな些細なことで疑いを持たれるとはマークも思ってもみなかっただろう。


「……君が殺人犯人に仕立て上げられなくて良かったよ、それと殺されなくて」

「そこはわたくしも運が良かったのだと思います。マーク様が殺害現場に戻って来られていたらわたくしは確実に殺されていたでしょうから。ブレイク様に人を殺す度胸がなかったことと、動転していて寝ていたのがわたくしだと気付かなかったことが本当に幸いでした。マーク様はブレイク様から聞いたドレスなどの特徴から寝ていたのがわたくしだと気付きロレンス卿の件を思い出したのでついでに罪を着せてしまおうとギャゼに情報を流したのでしょう。それなのに警察と共にわたくしが邸に来たものですから貴族特権で警察と結託し無罪放免となるのではないかと焦り、当初罪を擦り付けようとしていたヒューゴ様へと疑いを向けるために男性だとおっしゃったのだと思います。マーク様に操られているとも知らずに可哀想なブレイク様は部屋に短剣や、着替えを仕込むために自らクレイソン夫人に買って出てボーイをなさったのでしょう。マーク様はもしヒューゴ様に罪を着せることが出来なければブレイク様に罪を擦り付けるつもりでしたのよ。彼に中途半端なアリバイしかお作りにならなかったのもそのためです。証拠品である衣服の処分を頼まなかったのも万が一それを処分してなかったときに困りますもの。きっとわたくしが睡眠薬を飲んで眠りに付いたのはブレイク様のお婆様の導きあってのものだと思いますわ。自分のアリバイは完璧にし、巧妙に目撃者を作り、本当に卑怯な方ですこと」


 紅茶に映る自分の顔を見つめながらクリスティアがマークに対して嫌悪感を滲ませた声を上げる。

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