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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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ユーリとクリスティア①

 すっかり外灯の明かりが灯る時間となったラビュリントス王国。


 リネット・ロレンス事件で無事クリスティアの無実が証明され、お祝の晩餐に招待というか巻き込まれていたユーリは今の時間までランポール邸に引き留められていた。

 とはいえクリスティアの無罪放免を喜んでいたのはアーサーだけで、それも無実だから喜んでいたわけではなく警察署長に嫌味を言われなくて済むという安堵であり、ドリーとエルにいたっては全く心配はしておらず、犯人逮捕の瞬間に立ち会えなかったことへの不満を漏らしていた。


 アーサーの絡み酒ですっかり長居してしまった。


 何度、暇を告げても自分が如何に安心しているかと言うことをくどくど語って帰してくれないアーサーにドリーがいい加減にしなさいっと窘めてくれたことによって漸く帰宅の途に就くこととなったユーリはその前にクリスティアに挨拶をしてから帰ろうと、アーサーが泥酔する前に早々に逃げ出した祝賀の主役を尋ねてランポール邸を進み一つの部屋の前まで来ると勝手知ったるからといってこんな遅い時間に案内の一人も連れていないことに若干の躊躇いを持ちながらもコンコンっと扉をノックする。


「はい?」

「私だが、少しいいか?」

「あら、殿下。わたくし寝間着も脱いでもうガウン一枚なんですけれども……それでも宜しければ入られます?」

「いっ!?す、すまない!私はただ帰宅するから挨拶をと……!」


 弱りましたわっというクリスティアの全然弱っている様子のない軽やかな声音にユーリのほうが大いに弱る。

 もう肌寒い季節だというのにまさかガウン一枚で居るとは思わなかったのだ。

 風邪を引くのではないかと色々とその姿を想像しそうになる思考を大慌てで振り払いながらユーリがあわあわと混乱していると、クスクスと笑う声と共に扉がゆっくりと開く。


「冗談ですわ。お入り下さい」


 ルーシーが酷く醒めた眼差しで開いた扉の横に立っている。

 その下劣な想像を扉の外へと置いてから入れと言わんばかりの鋭い眼差しに気まずい思いをしながら一つ咳払いをしてユーリが中へと入れば、部屋の中央に置かれたソファーに座りお茶を飲んでいるクリスティアは降ろした髪を肩に垂らし白のネグリジェの上から薄緑のガウンを羽織った寝間着姿であれど、ガウン一枚ではない。

 そのことに心底安心する。


 昼間は夏の暑さが残っているものの夜はすっかり秋模様で空気はすっかり冷えている。

 まだ休むつもりはなかったらしく暖炉の火が付いているので部屋の中は暖かく。

 からかわれたことを理解したユーリはふて腐れたようなしかめっ面を浮かべる。


「どうかなさいましたか?」

「いや……帰る前に挨拶をと思って。それと明日の登校は私と共に行こう、迎えに来るから待っていてくれ」

「かしこまりました」


 暫くぶりの学園だ。


 エルも言っていたが事件のことはもうすっかり巷でも学園でも噂が広まっているらしい。

 事件が解決したと知らない者達、特に普段からクリスティアのことを快く思っていない者達が彼女が登校した姿を見てここぞとばかりに特権だなんだと根も葉もない噂を更に書き立てるだろうから、ユーリが共に行けばそういった者達の牽制にもなるだろう。

 とはいえ学園のことはエルがなにかしらの先手を打っているだろうからあまり心配はしていないが。

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