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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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リネット・ロレンス殺人事件③

「これはリネットさんの殺害時刻に皆さんが証言したアリバイを纏めたものです。リネットさんが殺害されたのは20時から20時50分の間、殺害して暫くは犯行現場であるゲストルームに居たと考えられております。50分という時間の区切りは殿下がわたくしを探すためにゲストルームに向かう際に手を血で汚した人物とすれ違っておりますので恐らくその時間がゲストルームから犯人が逃走した時間で間違いはないでしょう。その間の皆様のアリバイはご覧の通りです。マーク様は婚約者であるパーシーさんが20時から21時までご一緒でした、ブレイク様はパーシーさんに20時20分に目撃されております、ヒューゴ様の姿は20時以降度々ボーイが見ておりました」

「だったら、ここに居る全員にはアリバイがあるということではないですか。リネットが殺害された時刻は皆ホールに居たってことですよね?あなたが言ったんですよ、20時から50分までゲストルームに殺人犯人は居たって」


 ホワイトボードが喋ったことに些かの騒めきがあったものの、それを気に留めず話を先に進めるクリスティアにすぐにその騒めきは静まり落ち着く。


 夜会に居た誰かの目撃証言によってここに居た全員がリネット殺害からユーリに目撃されるまでの間にホールに居たことが証明されている状況に、これでは誰もリネットを殺すことは出来ないではないかわざわざ自分達の無罪放免を言い渡すために呼んだのかと呆れたように肩を上げて薄ら笑ったマークにクリスティアは否定するように頭を左右に振る。


「いいえ違いますわマーク様、それが間違いだったのです」

「そんな、そんなこと。だって……な、なにが間違いだったんですか?」

「馬鹿げている。リネットが殺されている間、私達はホールに居たと今あなたが言ったのではないですか」


 ブレイクがガタガタ震えながらその先のクリスティアの言葉を恐れるように吃っている。

 そのブレイクの怯えを遮るように皆、時間は違えど犯行時刻には目撃者のある完璧なアリバイがあるではないかとマークがその矛盾を執拗に訴える。


「えぇ、そうです。ですがそれは20時から21時の間に度々見られた姿であるというだけの話ですわ」

「どういうことだ?」

「殿下、わたくしもすっかりそのことに囚われておりました。殺人犯人は殺人を犯したあとそのまま部屋に留まり証拠隠滅を計ったと。50分に殿下とすれ違った者があるということが余計にその考えを助長させましたのですから少し責任を感じてくださいませ」

「わ、私のせいなのか?」


 とんだ言いがかりである。

 よく分からない責任転嫁をクリスティアからされたユーリは重要なことだと思ったので義務感からすれ違った者があると伝えただけだというのに……その理不尽さに戸惑う。


「全ての間違いはそこにあったのです」

「間違いですか?」

「えぇ、ラック。いいですか殺人犯人はリネットさんを殺したあとそのまま部屋に留まり証拠隠滅をはかったのではない、殺したあと一度部屋を出て夜会に戻ったというだけの話ですわ」


 クリスティアの言葉に呼応するようにホワイトボードが薄く光る。

 20時リネット殺害の文字の隣。

 時間不明で殺人犯人は夜会に戻るという文字が浮かび上がる。

 そして続くユーリの20時50分の目撃証言にそんな馬鹿なっという俄には信じられない愕然とした空気が流れる。


「そんな……クリスティー様。でもそれはおかしな話ではありませんか?だってリネット・ロレンスを殺害した証拠を隠滅していたからこそ50分に王太子殿下にその姿を目撃されたんですよね?だったら王太子殿下とすれ違ったのは誰だったというんです?見間違いだったとか関係ない人だったというんですか?まさか、殺人を犯したあとに夜会に戻りそのあとでまた殺害現場に戻ったというんですか?折角逃げたのに?そんなの危険じゃないですか……」


 一度しめしめと夜会の会場まで逃げおおせたというのに殺害現場に戻るなんて……犯人がそんな危険を冒す理由が一体どこにあるのかとラックが納得できない様子で声を上げるので、その疑問は尤もだというようにクリスティアは頷く。

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