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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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リネット・ロレンス殺人事件②

「なにか面白い出し物でも始まるんですか?」


 椅子に深く腰掛けて足を組んでいるマークが愉快そうにクリスティアを見て問う。

 対照的に後ろのブレイクは怯え忙しなくニールやラックを見ており、端のヒューゴは眉に深い皺を寄せてマークを見つめている。


 何故呼び出されたのか分からないせいか場の空気は疑心を伴っているものの、平静を保っている。


「そうですわね、面白いかどうかはきっと人それぞれだと思いますけれども……僭越ながらわたくしがリネット・ロレンス殺人事件の解決をさせていただきますわ」


 その瞬間、空気はまさに緊張と警戒が入り交じった張り詰めたものへと変容した。


 この集められた面々を見ればリネット・ロレンスの名が出てくるであろうことは一様に察していたものの、いざその名を聞けば、しかもそれが事件解決の話となれば……誰もが予想外のことに息を飲み、静寂へと陥って、立ち尽くすクリスティアの顔へと針を刺すような鋭い視線を向ける。


 まずニールがその雰囲気を打ち破るようにして声を上げる。


「どういうことだクリスティー、犯人が分かったのか?」

「えぇ」

「ちょ、ちょっと待ってください。犯人はそこにいるヒューゴ・クインリイではないのですか?自分が殺したと自白したんですよね?」


 信じられないと驚きの声を上げたマークをギロリとヒューゴが睨みつける。

 ヒューゴは昨日証拠不十分で留置所から出て自宅待機となっており、この外出はニールとラックという監視者がいるので容認されたものだった。


「自白は致しましたけれどもそれは嘘の自白ですわ、そうですわよねヒューゴ様?あぁ、そうですわ。今から皆様のことはお名前で呼ばせていただきますわね、名字だとその家名に関わることではないですし家名を重んじる方々からすれば不愉快なことでしょうから……その代わり皆様もわたくしのことは気安くクリスティーとお呼び下さい」

「………………」

「あら、あらあらあら。黙り込んでも駄目ですわよヒューゴ様。リネットさんが殺された犯行時刻である20時から21時まではあなたは大体においてボーイにその姿を目撃されているのですから。そうですわよねニール?」

「あぁ、そうだ。だがそれは確実でないからな警察としては時間が正確に分かるような目撃証言も探しているところだ」


 肩を竦ませるように同意したニールだったが、それでヒューゴが犯人ではないという断定はできないと釘を刺す。

 ヒューゴを目撃したそのボーイ以外の目撃証言はまだ出ていないのだ。

 彼とそのボーイが結託して警察を謀っていないという証拠はないと告げるニールにクリスティアは了承しているというように頷く。


「では犯人は……犯人は一体誰なんですか!」


 辺りに静かに染み入るように、忍び寄るように、広がっていく緊張感に耐えられないといった風にブレイクが悲鳴のような声を上げる。

 膝に乗せられ握りしめられた両手とその視線はずっと自分の両足に向けられおり、クリスティアを見ようともしない。


「そんなに慌てないでくださいなブレイク様。折角の舞台はまだ開幕もしておりませんわ」


 苛立たしげに貧乏ゆすりを始めたブレイクを制してワルツを踊るような軽い足取りでホワイトボードの横に立つクリスティア。


「ミサ、犯行時刻の皆さんの行動を纏めたものを出して下さいな」

『はい、クリスティー様』


 ホワイトボードから声だけ響き、文字がずらりと浮かび上がる。

 どうやらクリスティアの邪魔にならないようミサは姿を現さないらしい。

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