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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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リネット・ロレンス殺人事件①

 パーシーとの会合から五日後。


 クリスティアの御守りも良いがいい加減、学園に来てくれと懇願するハリーを宥めていたため少しばかり遅くなってしまったが今日も今日とてランポール邸へと訪れたユーリが執事であるマースに連れられて通された応接室。


 貴族の令嬢が自分で部屋の模様替えでもするつもりなのか。


 広い応接室をメイド達と共に椅子を動かしたり机を壁際に寄せたりと金の髪を邪魔にならないよう後ろでゆるく纏め、黒と灰色のグラデーションドレスを翻しながら動き回るクリスティアはなにかの準備をしているらしく忙しく立ち回っている。


「なにをしているんだ?」

「まぁ、殿下。いらしていたのですね気付きませんでしたわ。よろしければご一緒に参加いたしません?」

「参加?」


 いつもは重厚な応接室が様変わりし、今はマントルピースを隠すようにミサのホワイトボードを設置し、その前に一人がけの椅子を前後三個ずつ間隔を空けて並べている。

 まるでなにかの講義を始めるかのようなその配置にユーリが興味深げに眺めていればクリスティアに促される参加に、またなにやら余計なことをしでかすのではないかと顔を顰めて警戒する。


「えぇ、今からリネットさんを殺した殺人犯人を暴きますの」

「なっ!?」


 ニコニコとご機嫌そうなクリスティアに驚いたユーリが声を上げる。


 まさかそんな!殺人犯人が分かったのか!?


 リネット・ロレンスの痛ましい事件が起きてからというものユーリは毎日クリスティアと共に居て、事件関係者の話を一緒に聞いていたというのに……。

 殺人犯人のさの字をどの容疑者にも指し示せなかったユーリとは違い、そのさを間違いなく殺人犯人に向かって貫くであろうクリスティアは一体どうやって突き止めたのか……それを問いただそうとユーリが高揚する気持ちを落ち着かせるように深呼吸を一つして口を開いたところで、続く言葉を遮るようにして不意にノックの音が響き……ルーシーが恭しく頭を下げて入ってくる。


「クリスティー様。皆様が客室でのお食事を終えられましたのでお連れしてもよろしいでしょうか?」

「えぇ、お願いしますわ」


 開いた口から言葉を出せず唖然とするユーリを置いてきぼりにしてクリスティアが最後の仕上げにホワイトボードの後ろにクロッシュの置かれたサービスワゴンを隠すと数秒後、ルーシーに案内されてぞろぞろと執務室に入ってきたのはニール、ラック、ヒューゴ、ブレイク、マークの姿。

 それぞれがそれぞれ軽装で、大体がシャツとジャケットに身を包んでいる。


 六つの椅子の数と集められた人数に間違いはないらしく、ユーリのことも元々頭数に入れていたのだろう。


 室内に一同が入った瞬間、クリスティアが素早くニールに近寄りなにかを囁けば、それに瞼を見開いてクリスティアを見たニールだったがすぐに平常を取り戻し、クリスティアの囁きに頷くと煙たがるように手を払うように振る。


「皆様、早いお時間にお呼び出しをしてしまって申し訳ございませんわ。どうぞお好きな席にお座りになってくださいな」


 部屋の中に鎮座する椅子を示すように左手を挙げたクリスティアに促されて一同は不審がりながらも目に付いた席へと各々足を向ける。


 前の三列に左からユーリ、ラック、マーク、後ろの三列に左からヒューゴ、ニール、ブレイクが順に椅子に着席する。


「お食事はご満足いただけましたでしょうか?朝早くからご無理をいってお呼びだていたしましたのでお詫びというほどのものではございませんけれども心を尽くして準備をさせていただきました」

「とても美味しかったです!」


 寝ていてもおかしくない時間に突然の呼び出しをしてしまい申し訳なさげに頭を下げて謝罪をしたクリスティアにラックがとても元気の良い返事をして喜んでくれたので笑みを浮かべてクリスティアは頭を上げる。


 皆一様にどういう理由があってクリスティアに呼び出されたのか分かってはいない。


 朝からランポール公爵家の紋章入りの馬車と共にその使用人が来訪し、至急お伝えしたいことがあるので公爵家に赴いて欲しい旨のクリスティアの言付けを預かって押しかけてきたのだ。

 紋章入りの馬車まで用意されているのに断るわけにも行かず……数名は渋々、数名は嬉々として馬車に乗りランポール邸へと赴けばそのまま食堂のような内装に変えられた客室へと案内され、こうしてルーシーが呼びに来るまで優雅に朝食を取らされていた。

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