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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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事件の考察

「ミサ、事件の概要を出して下さる?」

『はい、クリスティー様!』


 騒がしい朝食が終わり移動した図書室。


 部屋の内部は天井近くまで本棚が伸びておりドーム型の屋根にまで届きそうなほど多種多様な本で埋め尽くされている。

 入り口から左手奥側にはベランダへと続く窓と本棚の置いていない少しばかり広いスペースがあり一番奥の壁には暖炉と大きめの机と二人がけのソファーが対面で二脚備えてある。

 その他の壁際の窓下にはそれぞれ色々な椅子と机が設置されておりその中の一つ、二人がけのソファーにクリスティアとユーリは横並びで座り、その前に前回クリスティアとユーリの行動を書いたミサのホワイトボードが置かれている。


 クリスティアの呼びかけにホワイトボードからミサが飛び出して奏でる音を操るように指揮棒を振るう。

 するとそこに現れたのは昨日話を聞いたマーク・ガイルズ、ブレイク・ゴールデン、ヒューゴ・クインリイの証言がクリスティアとユーリの証言の横に新たに記載されていくのでユーリは驚く。


「いつの間に」

「わたくしの装飾品は大体において魔法道具ですのでミサと繋がっております。わたくしの見聞きしたことはミサも同じように見聞きし、ボードに纏めることが出来ますのよ」

「へぇ……ミサ、君は他になにが出来るんだ?」


 隠されるように腕に嵌められた黒い腕輪を見せるクリスティアに感心した声を上げるユーリは本当に良く出来た魔法道具だと小さい胸を張るミサを見つめ他にどんな機能があるのかを問い始める。

 その会話をなんとなく耳に入れながらクリスティアはボードを眺める。


 マーク・ガイルズ。

 20時から21時までホールに居たと証言。

 証人として婚約者であるパーシー・スロットル。


 ブレイク・ゴールデン。

 20時からの21時までホールに居たと証言、21時には帰宅。

 目撃者はなし、客ではなくボーイとして参加。

 19時半ばと20時20分にマークの婚約者であるパーシー・スロットルにその姿を目撃される。


 ヒューゴ・クインリイ。

 リネット・ロレンス殺害を自供、共犯者にマーク・ガイルズを名指し。

 しかし20時から21時までホールに居る姿を度々ボーイに目撃されている、目撃時間は不明。


 20時50分頃にユーリが手を赤く染めコートを纏い帽子を目深に被っていたという人物とぶつかっていることを考えると、それぞれがそれぞれリネットが殺害され証拠を隠滅したであろう時間帯にアリバイがある。

 目についたであろう手に付いた血をユーリが見間違うこともないだろうし、いっそのこと容疑者を新たに選出したほうがいいのではないかとじっと考えホワイトボードを見つめていたクリスティアは諦めたように瞼を一度閉じるとすくっと立ち上がる。


「殿下、お出掛けいたしません?」

「えっ?」

「邸にいても事件のことばかり考えてしまって解けない謎に気が滅入るだけですわ。外の空気でも吸いに行きましょう」


 録画録音再生、クリスティアの位置情報の解析追跡等々クリスティアがミサと繋がる装飾魔法道具を身に付けていれば色々と出来るんだと自慢するミサの話を興味深げに聞いていたユーリへとクリスティアが声を掛ける。


 それにユーリとミサが同時にクリスティアを見上げて驚いた顔をする。


 事件に携わっている最中にクリスティアがお出掛けに誘うなんて……事件に夢中になると他のことが全く見えなくなってしまうというのに珍しい。

 それほどまでにこの事件に煮詰まっているのかと驚くものの、邸に閉じ込められてユーリも飽き飽きしていたのですぐにソファーから立ち上がる。


「勿論だ」


 気分転換にちょっとしたデートだと暗に伝えるクリスティアにユーリは軽やかな気分を抑えるように澄ました顔で頷く。

 今日も一日図書室で時間を潰すことになると思っていたのだが……このまま事件なんて忘れてくれたらいいといそいそと準備を始めたユーリはしかし外出して数分後、その高揚した気分は一気に消沈することになるのだった。

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