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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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警察署での出来事④

「ラック。お前はいつからこの邸の出入りが自由になったんだ?」

「ニール警部!?」


 どうしてここがっ!と驚いた顔でしどろもどろとしだしたラックはどうやら黙って警察署を抜け出して来たらしく。

 ニールの口角を片方上げた憤怒の顔に恐怖で頬を引き攣らせる。


「仮眠室で少し休めと俺は言ったよな?お前の仮眠室は署外にあるのか?」

「お腹が空いたんでちょっと食事をしに?警部のご配慮のおかげで十分休憩出来ました、あはははは……なんでここに来たことがバレたんですか?」

「ほう、そうかそうか。お前が持っている警察手帳は位置追跡機能が付いてるから申請すれば何処に居るかなんてすぐ分かるんだよ。仮眠室にいねぇから探してみれば……十分休憩できたなら事件解決まで休息はいらないな?」

「ニール警部ぅぅ!あんまりですぅぅ!」

「あらあらまぁまぁニール。そんなに目くじらを立てないで、お疲れでしょう朝食を食べてから戻られてはどう?」

「んな暇はない」


 悲嘆に暮れるラックの襟首を掴んでそのまま引き摺るようにして連れ出して行こうとするニールに、このまま連れて行かれたら馬車馬の如く働かされるんだハラスメントだと悲惨な声をラックが上げる。

 そのあんまりな叫びを不憫に思ったクリスティアがニールの気を落ち着かせようと引き留めようとするがこの往復で休憩時間なんて吹っ飛んだと苦々しげに聞く耳持たずなニールに、致し方なしとラックの処遇は可哀想だが諦めることにして帰る前に聞きたいことだけを聞く。


「ニール。ボーイをしていたゴールデン様の目撃証言は他から出ましたの?」


 クリスティアの口から出てきたクリスティアが知るはずのない捜査状況に、漏らしたのかとニールはラックをギロリと睨む。

 ラックはしぃーーしぃーーっとクリスティアに向かって人差し指を口に当てて黙っているよう訴えるが時既に遅し。


 それが悪いことではないかのようにあっけらかんとしているクリスティアの様子に注意とか忠告とか色々と諦めたニールは溜息を吐く。


「マークの婚約者以外からは出ていない。見たのが19時半ばと20時20分で今日、ゴールデン本人に確認したり他の目撃者を探す予定だ」

「時間は正確ですの?」

「20時20分は丁度時計を見た頃だったから正確だと言えるらしい」

「ありがとうございます。あなたに聞くことを彼から聞いただけなのですからあまり怒らないであげてくださいませね」


 聞けることを聞いて満足したクリスティアはついでとばかりに憐れなラックを庇う。

 だがそれに一瞥を向けただけでなにも言わないニールはそのままラックを引き摺って食堂を出て行く。


 クリスティアの名前を叫び消えていくラックの姿を戦いに行く勇士を称えるような気持ちで手を振りクリスティアは見送る。

 あのような態度をとっていてもニールはきっとラックのことを悪いようにはしないと信じて。


「はぁ……嵐だな」


 二人がいなくなり打って変わって静まり返った食堂に、まさにっと頷いたクリスティアは不毛な言い争いで疲れたのだろう天井を見上げたユーリを見つめて気遣うように優しい声音を掛ける。


「殿下、香水が必要でしたらわたくし差し上げましょうか?」

「べっ!別にいら……!いらな……!い、るっっ!!」


 悔しそうに呻き机の上で握り締めていた両手の間に顔を埋めたユーリの葛藤が可愛らしくておかしくて。


 クスクス笑うクリスティアは、さてでは特別にユーリに渡す香水は自分が調合してから差し上げようと思うのだった。

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