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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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警察署での出来事②

「それで、なにが大変だったのかしらラック?」

「ほれが、んん。それがあの後、ヒューゴ・クインリイを取り調べたんですが。まぁほとんどはクリスティー様と一緒にお聞きした内容と同じで調書の為に再度聞き返してるって感じだったんですけど、それが終わった途端奴が急にリネット・ロレンスを殺したのは自分一人でやったことじゃないって言い出したんです!」


 感涙しながらただのスクランブルエッグを空きっ腹に詰め込み、平らげた頃合いを見計らってクリスティアが声を掛ければ口に含んだマッシュポテトを飲み込んだラックは憤慨した様子で皿の上のソーセージにフォークを突き刺す。


 行儀も作法もあったものではないが、公式的な食事会なわけでもないので誰一人としてそれを気に止める者はいない。


「一体それはどういうことだ、もう一人犯人がいるというのか?」

「それが驚かないでくださいよ殿下、なんとマーク・ガイルズと共謀して犯行を行ったってクインリイはそう言いだしたんです!」

「なんだって!?」

「まぁ」


 ソーセージを突き刺したフォークを握り締めて立ち上がったラックは語気を強めると疲れた表情を引き締めてユーリとクリスティアを前に独演会を始める。


「もう捜査本部はてんやわんやの大慌て!大混乱ですよ!ガイルズはアリバイがあったから嫌疑から外されていたようなもんでしたし!それで遅い時間だったんですけどガイルズにもう一度話を聞こうって事になって昨日の夜に今度は警察署に来てもらったんですけど、ガイルズは否認しているどころかクインリイと会ったのは脅された一回きりだって言うんです!リネットと付き合ってたことをやっかんでデタラメを言ってるんだろうって!」


 もう訳が分からないですっとソーセージを噛み締めて不平不満を表すラックは独演会に疲れたのか椅子にドカリと深く腰掛け肩を落とす。

 この様子から見るにラック達対人警察は食事の時間を返上してヒューゴ・クインリイとマーク・ガイルズの接点を探していたのだろう。


「なにか……お二人が関わったような証拠は出ませんでしたの?」

「それが全く、鑑識も色々と調べたんですけどさっぱりです。短剣に付いていた布の切れ端も中等ほどの布の切れ端ってことは分かったんですが広く出回っている品ですし……一応クインリイにもガイルズにも、ついでにゴールデンにも夜会時に着ていた衣服を提出してもらったんですけど三人とも破れなどはありませんでした」

「そうですか」


 あの布の切れ端はなにかしらの証拠になると思ったのにとクリスティアが残念そうにしているので同じようにラックも残念がって眉を下げる。


「二人はまだ警察署なのか?」

「クインリイは自白があるので拘留中ですが、ガイルズは犯行に関わった証拠もないですし……子爵家から抗議もあったので帰ってもらうしかなくって」


 その抗議の対応でまたいっそ疲れたのだと一気に老け込むラックは深く深く溜息を吐く。


「もしガイルズ様が犯人でしたら今頃証拠を隠滅しているでしょうね」

「そうなんですよぉ!そうなるだろうから呼び出すのは慎重にするべきだってニール警部が言ったんですけど上は全然聞いてくれなくて……貴族絡みの事件だから本庁が出張ってきてて、署長も反対したんですけどこっちの判断は丸無視です。ロレンス卿の件もあって新聞がどこもセンセーショナルに記事を書き立ててる一番の事件だから早く解決して対人警察の威信を示そうって躍起になってるんです。警部も呆れてました」


 クリスティアの批判を込めた尤もな危惧に机にひっつぶれしたラックはもっと現場の者の話をきちんと聞いて捜査を……とブツブツ文句を連ねる。


 ラックはニールのことを尊敬しているのだろう。


 やる気のないように見えて事件の検挙率が対人警察内では一、二を争うほど高いので憧れがあるらしく、そんなニールの話を聞かないなんてお偉い方々の気が知れないと縦割り社会の不満を漏らす。

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