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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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ブレイク・ゴールデン③

「いつ頃、夜会には来られたんですか?」

「17時には居ました。クレイソン夫人に夜会に着用する宝石を何点か見繕ってくれと頼まれていたのでお伺いしたらそのまま是非夜会に出席してくれと言われて……」

「20時から21時まではなにをしていましたか?」


 クリスティアに気を取られて落ち着いたのか、すっかり気を取り直したもののブレイクはやはり慣れない警察の尋問に気を紛らわすように指を回すように忙しなく動かしている。


「ホールでずっと一人でお酒を飲んでました……知り合いも居なかったので」

「リネットさんとはなにか話さなかったんですか?」

「来てたのは知ってましたけど、避けてました……妊娠の話をされるのが怖かったんです」

「あなたがホールに居たことを誰か証明出来る人はいますか?」

「一人で居たのにいるわけないでしょう……でもつまらなかったから21時には帰りました。事件のことは今朝の新聞を見て知ったんです」


 矢継ぎ早のラックの質問に切れ切れに思い出すようにブレイクは答える。

 その返答はしかしながら曖昧な点も多い。


「見られた新聞はギャゼですか?」

「えっ?」

「ギャゼにはそれはそれは詳しく事件のことが載っておりましたわ。違いますの?」

「いえ、僕が見たのはラビュント紙です。新聞はどの紙もこの事件で持ちきりでしょう」

「ロレンス卿の事件はいつ知りましたの?」

「け、今朝。新聞で」


 再び横やりを入れるクリスティアに見た新聞は大衆紙ではなく貴族が好んでみる有名紙だと頭を左右に振ったブレイクに、クリスティアは嘘では無いだろうなと納得する。

 ブレイクのような性格ならば号外のギャゼを見ていたのならばそこには犯人は疑惑の令嬢だと載っているのだから警察が来たときにあんなに怯えず、もっと強気に出ていただろう。


「リネットさんとお別れのお話をなさったことはございませんの?」

「何度もあります。リネットは癇癪持ちでしたし……でも時間を置けばしおらしく甘えてくるんです。なんていうかそこが魅力的で。あっ、そういえば変なことを言ってました」

「変なこと?」

「夜会の前日にリネットに誘われて買い物に出掛けたんです。まぁいつものおねだりです。そのとき、僕に私もあと少しで幸せになれるってそうなったら僕との関係も変わるんだって……」

「幸せ?」

「リネットは口癖みたいに幸せになりたいって言ってたから……今考えると妊娠の事実を知って僕との結婚を強要する気だったのかもしれません」


 恐ろしい女だと身震いするブレイクだが、リネットが都合良くブレイクを利用していたようにブレイクもリネットを利用していたのだからどっちもどっちだ。

 それにきっと貴族の令嬢との子供は父親にとっては喜ばしいこととなり褒めて貰えただろう。


 ブレイクがどう思おうとも。


「マーク・ガイルズとヒューゴ・クインリイの名に聞き覚えはありますか?」

「えっ?」


 一瞬なんとも言えない表情を浮かべたブレイクだったがすぐに怯えた表情を戻し頭を左右に振る。


「知りませんそんな名前の人!兎に角、僕はもう全部話したんだから!殺人犯人にしたいのなら証拠を持ってきてください!」

「分かりました。ありがとうございますゴールデンさん、またなにか思い出したことがありましたらご連絡ください」


 追い立てられるようにしてゴールデン邸を追い出された一同は、馬車の中で怯え震えていた憐れなブレイクの姿を疑う。


「怪しいな」

「ですね、妊娠のことも知っていましたし。商家なら事件に使われた短剣も扱っているでしょう。子供のことも心当たりがあるから自分が父親だと思ってるんでしょうし」

「ですが、あの小心そうなお方が殺人を犯せるでしょうか?」


 ニールとラックの疑いを怪しむようなクリスティアの言葉に二人も確かにそこが問題だというように呻る。


 警察が来ただけであれだけ慌てふためいていたのだ。


 少し問い詰めれば犯行を自供しそうなブレイクのような人間は用意周到に殺人を計画して犯行を行うというよりかはカッとなった弾みで人を殺してしまうというのがその傾向だろう。

 リネットを刺した短剣はクレイソン邸の物ではないことは調べて分かっている。

 その短剣がリネットを殺すために予め用意されたものだと考えると殺害は衝動的ではなく計画的だったということになるので、はたしてブレイクにそれが出来るのだろうかと考えるとまず否が浮かぶ。

 ニールがブレイクという人間を侮っていないのならば犯行は難しいかと馬車の震動に体を揺らしながら思考を巡らせるように手を組んで悩むように瞼を閉じた。

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