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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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マーク・ガイルズ①

「大人数で押しかけてしまって申し訳ありませんガイルズさん」

「いいえ、王太子殿下やその婚約者様に間近でお会いできる機会なんてそうないことですから大歓迎ですよ。まぁ対人警察の方とご一緒にいる理由が気になるところですが、そこのところはお尋ねしてもいいのですかね?」


 ランポール邸から一番近いガイルズ子爵邸。

 ビロードを基調とした家具に合わせた壁紙、中央に机と二人がけのソファーが対面合わせに二脚、間に一人がけの椅子がそれぞれ二脚、入り口から左手にはマントルピース、あとは窓の下や暖炉前にそれぞれに一人がけの椅子がちらほらと置いている重厚で嫌味のない高貴さのある客室に通されたニール達をマーク・ガイルズが机横の椅子に座ってもてなしている。


 金茶色のショートの髪は窓から入る風によってさらさらと揺れ柔和な水色の瞳を優しげに細めた色白の中性的な顔立ちのマーク。

 白いシャツに金の刺繍の入った焦げ茶色のチョッキ、黒のズボン。

 客室の高貴な様子とよく合った出で立ちは写真で見るより随分と男ぶりが上がって見える。


 二人がけのソファーにはそれぞれユーリとクリスティア、ニールとラックが座っているのでマークの姿は真っ直ぐ座ると横目に見るような形になり自然一同は体を左へと向けて座る形になっている。


「皆様はわたくしを連こ……!」

「今回の事件に私の婚約者が巻き込まれてしまってね、王宮で共に話を聞くために向かっている途中なんだ」


 ユーリが余計なことを言いそうなクリスティアの言葉を遮り大きな声を出す。

 事情聴取というのは普通警察署もしくは貴族ならば自邸でするものなのでなんとも納得出来ない言い訳だがマークは気にした様子もなくニッコリと笑みを深くする。


「そうですか。それで、なにをお話ししたらいいんでしょうか?」

「リネット・ロレンス殺害事件で。ガイルズさんが彼女と親しくされていたというお話をお聞きしましたので、なにかお聞きできたらと思いお伺いさせていただきました」

「とても胸が痛む事件です。私も昨日あの夜会でなにか事件があったことは知っていたのですがまさかリネットが殺されているなんて……おそらくお聞き及びでしょうが、私達は付き合っていました」


 椅子に深く腰掛けてリネットを思い出すように天井を見上げて瞼を閉じるマーク。

 その姿は悲しみに包まれて線の細い顔に暗い影を落としている。


「いや、付き合っていたというのは些か語弊があるかもしれません。私には婚約者という者がありますので……リネットと私はその……なんといいますか」

「お遊びの関係だったのですか?」


 クリスティアのあけすけな言い方に慌てたユーリがこらっと窘める。


「はは、これはこれは手痛い。ご令嬢にはあまり気分の良いものではないでしょうね。ですが当初は私もリネットと真剣な付き合いを望んでいたのですが……リネットは目移りの激しい子で私が望んでも他との付き合いを止めようとはしませんでした。それでも私はリネットを好いていましたのでズルズルと……今の婚約者はそんな私を見かねて父があてがった令嬢です、家督を継ぐつもりならば然るべき令嬢との結婚をしろと五月蠅くて」


 心の底から本当に愛していたのはリネットだけだとマークのそう彼女を儚む姿をクリスティアは、じっとなにかを思うように見つめる。

 震える声には押さえきれていない感情が溢れ出ている、そんなマークを気遣うようにゆっくりとニールが話を事件当日へと向ける。

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