ミサのまとめ①
「それでは、わたくしと殿下の行動をまず整理しておきましょう」
パンパンっと手を叩くとクリスティアの近くで待機していたルーシーが何処からともなくコロの付いた黒板のような物を押しながら現れ、クリスティア達の座るソファーの横へと持って来る。
魔法道具らしいそれの下部に付いている粉受のような板の、真ん中にある丸いボタンをルーシーが押せば黒板の緑色が白へと変わり、ホワイトボードのように変化する。
「まずわたくしたちの行動から」
「ミサ。各人物の行動を時系列に記入、時間は赤、内容は黒字で表示しなさい」
『かしこまりました!』
ルーシーがホワイトボードに向かって声を上げればその言葉を理解したような幼く高い可愛らしい声の返事が部屋へと響く。
「新しい魔法道具か?」
「えぇ殿下。学園の先生と開発しましたの、ミサと申しますのよ。ミサ、皆様にご挨拶をして」
『はい、クリスティー様。皆様、初めまして私ミサと申します!』
突然ホワイトボートの画面横からひょっこりと平面に一人の少女が映し出されたかと思ったら粉受へと向かって立体に飛び出してくる。
黒いストレートの長い髪と黒い瞳。
見た目10歳くらいだろうか、白地に椿の花が咲く小袖の着物に緋色の袴とブーツ、肩に黄色いがま口のポシェットを下げたミサと呼ばれる手のひらサイズのまるでホログラムのような少女が照れくさそうに前で手を組み頭を下げるので、その珍しさにユーリもニールも驚き、ラックはわぁーーっと感嘆の声を漏らし瞳をキラキラ輝かせる。
「凄いですね!こんな魔法道具、僕初めて見ました!」
「可愛らしいでしょう?特注で作っていただきましたの。今は水の魔法でわたくしがデザインした少女の姿をボードから浮くように投影し風の魔法で原型を留めて雷の魔法で動かしていますの。わたくしの魔力が元になっておりますのでゴーレムのように地の魔法を使えば持ち運びも可能ですのよ。元のデータはあなた達がお持ちのような捜査データを共有する魔法道具のような物と繋がっておりまして、そちらにはわたくしが興味を持ったラビュリントス内外で起きた事件などのデータを保管しておりますわ。ミサはわたくし専用の小さな図書館のようなものですの」
『お褒めに与り光栄ですクリスティー様!』
ぴょこぴょこ飛び跳ねて喜びを表現する小さいミサにクリスティアは満足げに微笑む。
本当に良く出来ている。
ゴーレムといえば資材の運搬などの力仕事で使用されることが多いのでもっとごつごつしたデザイン製などないただの手足の付いた岩で感情などないというのが通常だというのに……このミサはまるで髪の質感も動きの滑らかさも感情の表現すら全てが人と遜色ない。