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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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解剖所見①

「では、解剖結果をお教え下さい」

「はい!死因は刺し傷による腹部大動脈からの出血死、死亡時間は20時から21時の間。ニール警部が言った通り妊娠三ヶ月。凶器は机の上に置いていた短剣で間違いなく、胸から腹に掛けて深いもの浅いもの併せて13カ所の刺し傷。その内8カ所がお腹に集中していました。防御創もあり何度も刺してることから最初の一撃では死ななかったようですが外に逃げられなかったところをみるに致命傷だったのは確かです。あとは……顎の下に小さな刺し傷があったみたいですけど事件と関係があるかは不明です」

「刺し傷?」

「顎の下辺りになにか小さい針の様な物で刺した痕が四カ所、四角形のような形でありました」

「四角形……」


 ラックから丁寧な報告を受けながらクリスティアは自分が見たリネットの遺体のことを思い出す。


 血だらけの床に沈んだ体。


 その白く細い腕には防御創そして子供を抱えていた腹部と他には併せて十三カ所の刺し傷に、顎の下には小さな四カ所の刺し傷。

 自分が見たリネットの遺体を思い出しながら傷の状況をクリスティアは想像してみるが……ドレスを着ていた姿の想像だけでは心許ない。


「検死報告書と写真もあるだろう、見せてやれ」

「えっ!?で、でも……」


 若い、しかも少女と言っていい年齢の子供が見るのは些か刺激的で卒倒しそうな遺体の写真なのだが……本当に良いのだろうかと戸惑うラックにニールは心配は無用だというように鼻で笑う。


「クリスティーはな、死体の写真なんかで卒倒するほど繊細な心は持ち合わせていないから安心しろ」

「あら、失礼ですわよニール。わたくしだって遺体が損壊されていたりしたら目を背けますわ」


 でも気絶はしないじゃないかとなんの失礼も感じない反論に更に反論しようと口を開こうとしたニールだが、クリスティアの隣でニールの言葉に同意するように力強く頷いたユーリの腿を細やかながらに抓り上げたクリスティアを見て開いた口を閉じる。

 イッ!?と上がりそうになる悲鳴を堪え飲み込むユーリの他者の前で弱みを見せない王族としての高潔さに心で賛美を贈りながらニールはタブレットを渡すようラックを顎で示して促す。


「ではどうぞ」


 躊躇いながらも机の上のタブレットを滑らすようにクリスティアへと向けるラック。

 操作方法をっという前に机に乗せたままタブレットへ触れたクリスティアは慣れたように操作をする。

 何度も警察の手助けをしてきているので警察が使う魔法道具の取り扱いはお手の物らしく、リネットの検死項目に触れて死体検案の写真を選ぶ。


 青白い肌を晒した女性が銀色の検死台に横たわっている。

 洗い流されたのであろう血の色がすっかり消えた体にはラックが説明した通り十三カ所、一センチにも満たない筋の刺し傷がリネットの肌に暗くぽっかりと穴を開けている。

 所見には右利きの者が下から突き上げるようにして短剣を刺した傷が主であること、傷はどれも柄まで達するほどの深さで相当の殺意を持って刺したことが予想出来ると記されている。


 そして顎の下にある四カ所の小さな穴。


 その傷に大変興味を持っているらしいクリスティアは、その写真をタブレット画面に大きく広げてまじまじと見つめる。

 針の穴で刺したような傷というコンスチン博士の所見。

 生活反応のある傷と書いてあるので死後に出来た傷ではないらしい。

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