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魔学クラブの事故①

「数ヶ月前にラビュリントス学園で起きた中毒事件を覚えておいでですかクリスティー様?」


 雨がすっかり上がり、晴れやかな日差しが窓から差し込むランポール邸の客間。


 その日、対人警察のラック・ヘイルズとニール・グラドがこの邸へとドロシア・ディゴリアの件で訪れたのは署長命令であった。

 良くも悪くも、事件を引っかき回していらぬ不興を多方面から買うクリスティアが、興味を持っているノーホス・ディゴリア男爵の毒殺事件。

 あれやこれやと突かなくてもいい所を突っついて、対人警察へとクレームが入っては困るのだから、こちらが掴んだ情報は予め共有していたほうが警察への被害も少なかろう、という判断があったからなのだが……それは半分、建て前であり。

 クリスティアが危険なことに首を突っ込まないように、姪っ子大好きな署長の実に私的な判断でもある。


 とはいえクリスティアが事件を引っかき回しているのは事実ではあるので今回、任意同行をしたドロシア・ディゴリアがどうやって毒物の入手に至ったのかを二人は話しに来たのだ。

 それにこれはクリスティアが無遠慮に周りを引っかき回すには至極デリケートな問題、ラビュリントス学園から端を発して、王国全土へと影響を及ぼしたある事故に関わることでもあった。


「えぇ、魔力の向上を図り魔法鉱石の粉を飲んだ者達が中毒を起こした事件ですわね。思いも寄らない事故の収拾に、殿下も陛下も随分と頭を悩ませておりましたわ……ドロシア嬢はそれに関係なさっておいでだったのですか?」

「あぁ」


 頷いたニールはタブレットを取り出すと机の上へと置く。

 その光り輝くタブレットには今回、学園で起きた事故の概要が表示されている。


「学園で事故を起こしたのは魔学クラブの一部の生徒達で、魔力の追及というテーマを組んで色々と悪さをしていてな。特に上級生が下級生を使って人体実験のようなこともしていたようだ」

「殿下から色々と聞いております。今回の事故は魔法を高める鉱石を飲めば自らが持つ魔力も高められるのではないか……という実験であったと。悪びれもせずに病院で語っていたとおっしゃっておりましたわ。死者が出なかったことは幸いでしたが、学園ではクラブを無期限の停止処分とし、同じようなことが起こらないようにと関わった者達を謹慎処分とし、そのご両親にも罰金などの罰を下したと。ラビュリントス学園の創設当初からある歴史あるクラブでしたが……残念な結末ですわ」

「ドロシア・ディゴリアはそのクラブに所属していて、本来ならば事故の日に実験に参加する予定だったそうだが。幸いだったのか事故当日に体調を崩し、欠席したそうだ。魔法鉱石の粉は小瓶に入れられて参加する者にだけ予め配られていたらしく、自宅へと持ち帰っていたそうだ」

「魔法鉱石に関する事故だったので、事故は対魔警察が担当していて……把握が遅くなってしまったんです」


 しょんぼりと肩を落として語るラック。

 対人警察と対魔警察の仲の悪さによっていつだって事件は停滞を迎える。

 頭を抱えるべき問題にクリスティアは肩を竦ませてみせる。


 この二極の対立は誰が間に入ろうとも最早どうすることも出来ないのだ。


「それで、対魔の人達が分析した学園の生徒が摂取した毒物の検出結果がこちらで、ワインボトルに入っていた毒物の成分分析結果がこちらです」

「同じなのですね」


 タブレットを操作してラックが示したのは学園で使用された魔法鉱石とノーホスの毒殺に使用された魔法鉱石の成分分析の結果。


 二つのグラフは同じ線を描いている。


 つまり二つの魔法鉱石の成分に相違がないことを示しているそれに対人警察は、毒殺に使用されたのは魔学クラブに所属していたドロシアがなんらかの意図を持って持ち帰った魔法鉱石の粉だと判断し、彼女を極めて重要な参考人として連れて行ったのだとクリスティアは納得する。

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