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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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ルーシーの告白③

「わたくしでございます!」

「はぁ?」

「クリスティー様にはなんの罪もございません!全てわたくし一人の罪でございます!」

「お、おいおい!なんだ!?」


 突如として始まるルーシーの罪の告白。


 嘆きながらニールに縋り付く侍女の必死の形相にニールも隣のラックもただただ戸惑う。


「まぁまぁ、ルーシーったら違うわ。ニール達はわたくしを捕まえに来たのではないのよ」


 自分を捕まえるまで離れてなるものかとニールの足に絡みつくルーシーの意図を汲み取り、早とちりよっと窘めるクリスティア。

 今にも倒れそうな顔色でクリスティアを庇おうとする忠義に溢れた侍女はギャゼの内容を見てクリスティアが殺人犯人にさせられそうになっていると察して自らその罪を被らんとしているのだろう。


 だがそれは大いなる勘違いだとクリスティアが否定する。


「では……この方達はなにをしにいらしたのですか?」


 ニールに縋り付いたまま本当にクリスティアを逮捕しに来たのではないのだろうかと訝しんだ顔をするルーシー。

 ここに来て漸く、はて彼らはなにしに来たのかとクリスティアも分からないというように頭を横に傾ける。


「はぁ……お前が関わっている事件でもあるし面倒なことにならないよう箝口令を敷いていたがこうして外部に漏れたんだ。牢屋に入りたいお前がてっきり新聞社にでもリークしたのかと思って聞きに来たんだよ」

「ニール、わたくしにだって良心はありますのよ。家族に迷惑の掛かるような方法で罪の告白はいたしませんわ」


 ハリーもだけれど人を愉快犯みたいに言わないでくださいと拗ねたように頬を膨らませるクリスティアに本当に悪かったと思っているのか怪しい態度でニールは悪かったと頭を掻く。


「失礼いたしました……取り乱しまして」


 ニール達がクリスティアを逮捕しに来たのではないことはどうやら本当のことのようなので納得したルーシーはニールの足から腕を放すとスクッと立ち上がりお騒がせいたしましたと丁寧に頭を下げると置いた銀盆を持ち直し通常通りサーブへと戻る。

 先程までの痴態はすっかりなかったことにしているルーシーの澄ました態度に、最大限に用いる優しさから誰もなにも触れないでおく。


「ふふっ、それではニール。この話をギャゼに持ち込んだ方は誰だか分かっていないのですね?」

「あぁ」


 面白いというようにギャゼを隅から隅まで読み進めていくクリスティア。


 遺体がソファーの近くに倒れていたこと。


 短剣を持った令嬢がソファーに居たこと。


 まるでバスタブに生き血を溜めたエルジェーベトの解体部屋のようだったとおどろおどろしく書かれている室内の様子は所々偽りのない真実と誇張された真実とが交じり合っている。


「わたくしが犯罪現場に居たときの状況が随分と詳しく書いてありますのね」

「あぁ、だからこそお前を疑った。ここに来る前にギャゼに寄ってどうやってこの情報を手に入れたのか聞いてみたんだが、情報者とは全て通信機を使ってのやり取りだったから誰かは分からないと言っている。本当のところは分からないがな。ギャゼの記者が夜会に来てた者達に話を聞いたりしたみたいだから記事にするときにある程度の裏は取ったんだろう」


 こんなに詳しく現場の状況が書かれていなかったらニールとてクリスティアがリークしたのではないかと疑うことはなかった。

 しかし明確に自分がしたことではないと否定するクリスティアに、でないとすると誰が一体リークしたのかという疑問の答えは自ずと導き出される。

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