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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
呪われた龍の息吹
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幻の男

「なんだ、お前も一緒に帰ったんじゃなかったのか?」

「服と仮面を返しに来たんです。持って帰るわけにはいきませんから、丹黄さんありがとうございます」


 クリスティア達との別れを終え、後宮へ帰ろうと馬車へと乗り込もうとした夕顔の元へと一人の男が近寄ってくる。


 この国では違和感のない黒い髪に黒い瞳。


 狐の仮面と畳まれた夕顔の花が咲いた黒い長袍を持ったその男は丹黄へとそれを差し出すと礼を述べる。

 ニッコリ口角を上げた丹黄は問題ないというように頭を左右に振ると服を受け取る。


 クリスティアが後宮にいる間、丹黄のフリをしていたこの男。

 なにが目的なのかは分からないが、事件を解決するためにクリスティアを誘拐してはどうかと夕顔に提案し、手筈を整えたのはこの男だった。


「お前のおかげで事実は明らかになったから感謝はしているよ。でも危うく私は友人を二人亡くすところだった、だから二度と同じことはするんじゃないよ。私は意外とクリスティーを気に入っているからね」

「えぇ、勿論です。彼女が傷つくのは私にとっても不本意なことですから」


 この男の口車に乗せられてクリスティアを連れ去り、危険に晒したことを後悔した夕顔はギロリと男を睨むと、その視線を受けた男は胸に手を当てて心得たというように頭を垂れる。


 この男とクリスティアには一体、どういった繋がりがあるのか分からない。

 分かるのはクリスティアはこの男の存在を知らないということだけ。


「お前は一体、なにがしたいんだ?」


 その身を隠したいのか隠したくないのか。


 クリスティアを助けたいのか助けたくないのか。


 この男からクリスティアへと伸びる糸はいつだって真っ直ぐだ。

 真っ直ぐだからこそ彼女の体を貫くように奥底まで深くに入り込み繋がっている。

 夕顔はそれが良いことだとはどうしても思えない。


 だが悪いことだとも思えない。


 ニッコリと微笑んで今度は別れを告げるため頭を深く垂れた男。

 彼女の元へと帰って行くその男の楽しげな後ろ姿を、夕顔はただ見つめることだけしかできなかった。

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