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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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第一発見者⑧

「たく……事件時の状況は分かった。一応上司に報告はさせてもらうが十中八九クリスティーは嫌疑にも上がらないだろう。ドレスはもしかしたら嫌疑なしの証拠品として預かることになるかもしれないな」

「そうですのね……すぐにお返しいただけるのでしょう?」

「あぁ、血の一滴も付いてなければな。なんだドレスなんて沢山持ってるだろ?大切なドレスなのか?」

「えぇ、殿下が初めて贈ってくださったドレスですのよ。素敵でしょう?」

「あぁ、そうだな……思い出深いドレスになって良かったな」

「ク、クリスティア。今、私がドレスを贈ったことは関係ないだろう」


 殺人現場で身につけていたという付加価値のついたドレスはまさに一生の思い出となっただろう。


 グラデーションの掛かった青色のドレスとユーリの瞳を見て色々と考えてクリスティアに贈られたドレスだったのだろうとニールも察する。

 その察せられた視線に羞恥を感じたのか、ユーリがクリスティアを嗜める。


 そんなドレスがそのままカビ臭い証拠保管室に持って行かれるのは流石にユーリが憐れなので、そのドレスが返り血の付かないよう特殊加工でもされた魔法道具で作られていないことの検査(そんな魔法道具は見たことはないのであり得ないとは思うが最近は色々と開発されているので疑うのが警察の役目だ)とリネットの少しの血の付着もないようならばすぐに返却すると誓う。


「では、話は終わりだな。帰宅してもらって構わない」


 事の次第は十分に聞いたのでもうクリスティアに聞くことはない。

 あとは主催者に今日夜会に参加した出席者のリストを渡してもらいその中からリネット・ロレンスの知人友人を割り出し話を聞くべきだろう。

 とはいえリストを上げるのも渋られそうだと品行方正とは思えないこの邸の主を思い憂鬱に立ち上がったニールに釣られてクリスティアも立ち上がる。


「なんだ?」

「ご一緒いたしますわ」


 何処に?と言いかけてニールは開いた口を閉じる。


 本気で中央警察署の留置所に行く気つもりなのだろう。

 わくわくと押さえきれない期待を胸に抱いているクリスティアから視線を外したニールはユーリとハリーを代わりに見る。


「クリスティーを自邸に送ってやれ」

「感謝するニール」

「まぁニール!わたくしを謀ったのですか?」

「今日、入れてやると言ってないからな。いつかお前が罪を犯したら入れてやるさ」


 わっはっはっと高笑いするニールに狡賢い大人ですことっと憤慨しながらも隣から差し出されたユーリの手を渋々ながらクリスティアは掴む。

 警察の仕事を邪魔をするほどクリスティアは礼儀を欠いていない。

 何事においても憐れなリネットのため、事件を解決することが最優先なのだ。


「では容疑者をみすみす見逃しますのね、これは対人警察組織の落ち度ですわよ」

「冤罪を産み出すよりマシだ、さっさと帰れ」

「ニールったら不実ですこと。なにかありましたらわたくしの邸へお越し下さいね」

「クリスティアに話を聞く際は私も同席するから連絡をお願いする」

「畏まりました殿下」


 自邸へと自ら誘う殺人犯人が何処にいるのか。


 恭しく頭を下げたニールを見やり、クリスティアを連れて部屋を出て行くユーリとその後を付いて出ていくハリーの背中をニールは疲れた様子で、ラックは名残惜しそうな表情で見送る。


「警部!犯人はなんとも大胆不敵な奴でしょう!あんな麗しいご令嬢を殺人犯人に仕立てるとは!」

「……第一発見者が第一容疑者説はどうしたラック」

「なに言ってるんですか警部、それは時と場合によるんでしょう?」


 小瓶片手に隣のラックが調子良く自分の推理を裏返す様子にニールは呆れる。


 あの香水の入った小さな瓶にはクリスティアが人を操るために調合した違法な薬でも入っているのかもしれない……。

 そんなことを思いながらニールは目の眩みそうなシャンデリアの飾られた天井を見上げる。


「たく……面倒な事件になりそうだ」


 持っていた手帳で頭を掻きながら、きっと今回も自分の目で真実を確かめるまでは事件からは手を引かず進んで巻き込まれていくのだろうクリスティアの好奇心に、尻ぬぐいと始末書を書かされるであろうニールは深くて重い溜息を吐いのだった。

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