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公爵令嬢はミステリーがお好き  作者: 古城家康
リネット・ロレンス殺人事件
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第一発見者⑦

「随分と綺麗な格好をした犯罪者だな」

「あら、ニールったらもう冤罪の真実に辿り着きましたの?」


 もっと勿体ぶって欲しかったのにとドレスを示すように胸に手を当てたクリスティアは非常に残念がる。

 あれだけ血に塗れた事件現場だったというのに、その煌びやかなドレスに血の一滴も付けずにどうやって殺人を犯せようか……警察を侮らないで欲しい。


 手帳に書いた、睡眠薬、口論、血の跡、短剣、証拠隠滅、時間……とクリスティアの話に基づき頭に入ってきた単語を書き留めていたニールは明瞭としない己の字を見つめる。

 今の時代、捜査道具は全て魔法道具で出来ているので録画録音は道具一本で簡単に出来るのだがニールは旧式を好むというより手で書いた方が覚えるという理由から手帳を愛用し自分で書いている。

 その手帳に書くには書いたものの不可解に並ぶ文字達に眉の皺を深くする。


「馬車の一件は来る前に聞いていたが……お前はロレンス一家に呪われているのか」

「ふふっ、それはそれで楽しい謎ですわね。わたくしに呪いを掛けているのならばまずなにかしらの呪いの道具という物を見付けなければなりませんわ。藁人形、ブードゥー人形、黒魔術の魔法陣」

「藁……なんだそれは?」

「ですがわたくし色々な呪術的な効力のあるという物を地方から集めたり作ったりして使用したりしてみましたけれども、掛けた相手は皆ピンピンしておりますわ」

「ちょっと待て、それを誰に使ったんだクリスティア?」

「あら、それをお話ししてしまったら万一に呪いが発動し呪い返しにあったときにわたくしに返ってきてしまうかもしれませんので申せませんわ殿下。それに掛けたのは幼少の頃ですし……殿下もハリーも七歳頃に不可解な不幸に見舞われた記憶はございませんでしょう?」

「まさか君は私達に!?」

「クリスティー本気で言ってる!?」

「うふ……うふふふふっ」

「どっちなんだクリスティア!?」

「ちょっ!その呪い今も発動してんじゃないの!?宰相の息子にしては学園での待遇悪いし俺の婚約者も冷たいし!」

「それはあなたの力量不足の問題ですわハリー。そんなに焦らないで下さいなお二人共、ちょっとした冗談ですわ。わたくし誰にも呪いをかけたことはございませんから本気になさらないで」

「本当だろうな!?」

「本当に本当!?全然信じられないんだけど!?俺達呪われてんじゃないの!?」

「悪かった悪かった、呪いなんてものは存在しないから二人とも落ち着け」

「うふふっ、こうやってお二人は疑心暗鬼という呪術に掛かっていくのですわね」


 ラビュリントスでの魔法は五大元素による地・水・火・風・雷の魔法しか存在しない。

 誰かを呪ったり病や傷を癒したりといった五大元素外の魔法は奇跡とされ遥か昔、聖女の証を持つといわれた少女が唯一使えたと聖書に記載があるだけで、この世界では宗教を盛り立てる上での偶像でしかない。


 魔法は科学の代わりであり、呪いや癒しというのは神が与えし超自然的なものなのだ。


 それに攻撃的な魔法を誰かに発動し術を掛けることは法律で厳しく制限されており、もしそれを破って発動すると魔法を発動した術者に甚大なるペナルティーとしてその魔法が返ってくるとされている。

 七歳から今までクリスティアに返ってきた魔法がないところを見るに、魔法ではなく人智の及ばない超自然的な呪いを知らないうちに掛けられていたのかもしれないとユーリもハリーも戦々とする。


 クリスティアならば本気でやっていそうなので冗談でも笑えない。


 冗談だというクリスティアの言葉すら信じられずに七歳の頃の些細な取るに足らない不幸な出来事をあれは呪いだったのかもしれないこれは呪いだったではないかと疑心暗鬼に陥る二人にニールが安易に呪いなんて口にしたことを後悔し、クリスティアは取り乱す二人を見て悪戯に成功した子供のように面白そうにクスクスと肩を震わせる。

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