第一発見者⑥
「だったらクリスティア。なにが起きたのかを正確にニールに話し、相談すべきだと私は想うのだが……ハリーもそう思うだろう?」
「そうだね、そのほうが賢明だ」
「わたくしは最初から正直に話すべきだと申しておりましたわ殿下」
下手に隠し立てして真実が明るみにでたときに状況を悪くするよりかは、全て包み隠さず正直に話すほうがニールが相手ならば的確であろう。
真実を話すことに賛成して頷くハリーに、クリスティアはクリスティアで元々地下牢に入りたいのだから全て話すべきだと頷く。
「なにかあったのか?」
「なにかというか……ニールまずお誓い下さい、何が起きたのか正確にお話ししましたら貴族特権など無視をしてわたくしを地下牢へ入れてくださると」
「クリスティア!」
「あーあー分かった分かった、地下牢はないが留置所になら入れてやるよ。入りたがってただろ?」
「ニ、ニール警部!」
「そうですわね、譲歩してさしあげますわ」
頑として地下牢に入ることを譲らないクリスティアにこんな状況だというのにいい加減にしないかっとユーリが窘める。
自分がどんな立場にあるのか分からないのかとユーリの心配からくる憤りに、頬を膨らますばかりでその心配を聞き入れる様子のないクリスティア。
言い争いに発展しそうな二人の雰囲気に一向に何が起きたのか話される様子がないので溜息を吐いたニールは存在しない地下牢への拘留を提案するより存在する留置場へ入れることをクリスティアに提案する。
こんなところでくだらない言い争いに時間を費やすことほど無駄なことはない。
さっさと話せと先を促すニールにそんな約束をしていいのかとラックは焦るが他にクリスティアを納得させる打開策も無い。
地下でないことに些か不満げだが背に腹は替えられないと頷いたクリスティアは立ったままではなんだからとソファーに座るよう促し、そして馬車で到着してからこの応接間で待機するまでに起きた事の子細を詳細に語る。
「というわけですの、自分で言うのもおこがましいのですけれどもわたくし自身現状ではこの殺人事件の第一容疑者として尤も濃厚な殺人犯人だと思いますのよ」
「分かってくれるなニール」
貴族特権など愚かしいものは使わずに即刻地下牢へと入るべき存在だと嬉々として語るクリスティアにユーリが強くつよーーく念を押す。
胸ポケットから手帳を取り出し、話の内容を手書きでメモをしていたニールは凶器である短剣を握っていたからといってクリスティアが犯人だとは随分と安易な考えだと呆れる。
こんな安易な犯罪クリスティアには似つかわしくないことは本人にすら分かっていることだろう。